皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。
今年2月、富山・愛知・大分の3県で空き家が原因の火災が相次ぎました。なかには亡くなられた方もいらっしゃいます。「実家が空き家になっているけど、どうしたらいいかわからない」「お金もないし、とりあえず放置している」という方、多いのではないでしょうか。
実は、空き家を放置したままにしておくと、火災が起きた際に数億円規模の損害賠償を負う可能性があります。今回は、空き家の法的リスクと具体的な対処法をわかりやすく解説します。
▶ あわせて確認:実家じまいとは?進め方と費用・沖縄の実家を県外から片付ける方法/相続登記の費用はいくら?内訳と司法書士報酬の相場
空き家が原因で火災が起きたら、誰が責任を負うの?
空き家が原因で火災が発生し、隣家や通行人に被害が出た場合、「工作物責任」(民法717条)によって、その建物の所有者が損害賠償責任を負います。
「親の名義だから関係ない」は通用しない
よくあるのが「実家はまだ亡くなった父の名義だから、自分には関係ない」というケースです。しかし、親が亡くなった時点で、相続人は自動的に所有者になっています。相続登記をしていなくても、法律上の所有者として責任を問われます。
もし空き家が原因で人が亡くなるような火災が起きてしまったら、億単位の損害賠償請求を受けることになります。「そんな金額、払えない」となると自己破産という事態にもなりかねません。しかも、誰かが亡くなってからでは、取り返しがつきません。
まず何をすればいい?状況整理の4ステップ
いきなり「売る」「壊す」と決める前に、まずは状況を整理しましょう。
ステップ1:名義人を確認する
登記簿を確認して、建物の名義が誰になっているかを確認します。親名義のままであれば、まず相続登記(名義変更)が必要です。2024年4月から相続登記は義務化されていますので、早めに対応しましょう。
ステップ2:建物の状態を現地確認する
実際に現場を見て、どれくらい老朽化しているか確認します。倒壊・火災のリスクが高い状態かどうかを把握することが重要です。
ステップ3:解体費用の見積もりを取る
空き家の解体費用は、建物の規模や状態によって300万〜600万円と幅があります。複数の業者から見積もりを取って比較することをおすすめします。
ステップ4:行政の補助制度を調べる
「解体費用が払えない」という方は、市区町村に相談してみてください。自治体によっては50万〜200万円程度の補助金を用意しているところがあります。まず市役所・町村役場に「空き家で困っている」と電話してみるだけでOKです。
売れない・壊せない場合の意外な選択肢
「解体費用も出せないし、売れそうにもない」と諦めている方も、実は思わぬ解決策があります。
隣地の方に声をかけてみる
隣家の方に「この土地、買いませんか」と相談してみると、駐車場として活用したいと買い取ってくれるケースがあります。私が担当した案件でも、古い家屋を隣の方が購入してくれ、今は駐車場として有効活用されています。
「無償譲渡」という選択肢もある
売値がつかなくても、「ただでもらってくれませんか」という話が成立するケースもあります。もらった側が解体・活用コストを負担するかわりに、所有権ごと引き取ってもらうという方法です。
建設業者が買い取るケースも
建設業者が土地を買い取り、解体費用も負担した上で建売住宅を建てる——そんなケースもあります。相続人の方がまとまったお金を分け合えた事例も実際にありました。
どこに相談すればいい?
空き家の問題は「どこに相談すればいいかわからない」という方が多いです。以下を参考にしてください。
- 市区町村の相談窓口——空き家対策の担当部署があります。補助金情報もここで聞けます
- 地元の司法書士会——相続登記や権利関係の整理を相談できます
- 不動産業者(宅建業者)——空き家の売却・買取を積極的に取り扱う業者も増えています
レスター司法書士法人でも、名義変更(相続登記)から売却先のご紹介まで、ワンストップで対応しています。最初のご相談で「できそうか、難しいか」の見通しをお伝えできますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
空き家を放置し続けるとどうなる?法律上の4つのリスク
火災による損害賠償のほかにも、空き家の放置には法律上のリスクが段階的に積み上がっていきます。ここでは「空家等対策特別措置法」(いわゆる空き家法)を中心に、放置がもたらす4つのリスクを整理します。
①「特定空家」に指定されると固定資産税が最大6倍に
管理されないまま放置された空き家は、市町村から「特定空家」に指定されることがあります。特定空家とは、空家等対策特別措置法に基づき、次のような状態にある空き家を指します。
- 倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われず、著しく景観を損なっている状態
- その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態
特定空家に指定され、市町村から「勧告」を受けると、住宅用地に対する固定資産税の特例(課税標準を最大6分の1に軽減)の対象から外れます。その結果、固定資産税が最大6倍程度に跳ね上がる可能性があります。
さらに令和5年(2023年)12月の法改正では、特定空家の一歩手前の「管理不全空家」という区分が新設されました。窓が割れたまま、草木が伸び放題といった状態でも、勧告を受ければ同じように特例の対象から外れます。「まだ特定空家ではないから大丈夫」とは言えなくなっているのです。
②命令違反の過料、そして行政代執行
勧告に従わず「命令」の段階まで進むと、命令違反に対して50万円以下の過料が科されます。それでも改善されない場合、最終的には行政代執行として市町村が所有者に代わって建物を解体し、その解体費用は全額所有者に請求されます。支払えない場合には財産の差押えに進むこともあり、「放置しておけば行政が何とかしてくれる」という話ではまったくありません。
③倒壊・外壁の飛散による損害賠償
冒頭で火災のケースをご紹介しましたが、賠償責任は火災に限りません。老朽化した空き家の外壁や屋根が落下・飛散して通行人や隣家に被害を与えた場合も、工作物責任(民法717条)により所有者が損害賠償責任を負います。台風や強風のたびにリスクにさらされ続けることになります。
④犯罪の温床・景観悪化・害虫害獣の発生
放置された空き家は、不法侵入・放火・不法投棄といった犯罪の温床になりやすく、害虫や害獣の発生源にもなります。ご近所トラブルの火種になるだけでなく、地域全体の景観や資産価値を下げてしまう点も見逃せません。
空き家の出口は4つ|売却・賃貸・解体・国庫帰属を比較
これらのリスクを断ち切るには、「なんとなく管理し続ける」以外の出口を決めることが重要です。代表的な4つの選択肢を比較してみましょう。
| 選択肢 | 向いているケース | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 売却 | 立地に需要がある・現金化したい | 親名義のままでは売れない。先に相続登記が必要 |
| 賃貸・活用 | 建物の状態が比較的良い | 修繕費や管理の手間が継続的にかかる |
| 解体して更地に | 老朽化が激しく危険が高い | 住宅用地特例が外れ固定資産税が上がる |
| 相続土地国庫帰属制度 | 売れない・引き取り手がない | 建物は対象外(先に解体が必要)。手数料・負担金あり |
売却する——タイミングで税金が大きく変わる
建物の状態や立地によっては、そのまま、あるいは更地にしてから売却するのが最も確実な出口です。ただし、相続した実家の売却は「相続前に売るか、相続後に売るか」「相続後いつまでに売るか」で使える特例や税負担が大きく変わります。売却タイミングの判断ポイントは、下記の記事で詳しく解説しています。
▶ あわせて確認:相続前と相続後の実家売却|最適な判断ポイント
賃貸・活用する
建物がまだ使える状態であれば、戸建て賃貸や駐車場などとして活用し、その収益で管理費用をまかなう方法もあります。ただし、修繕費をかけても借り手がつかなければ負担だけが残ります。活用できる物件かどうかは、不動産業者の査定とあわせて冷静に判断しましょう。
解体して更地にする
倒壊の危険が高い建物は、解体が有力な選択肢です。前述のとおり、自治体の補助金を使える場合があります。一方で、更地にすると住宅用地特例の対象外となり、固定資産税の負担が増えます。「解体してから売却するまで」の期間をできるだけ短くする計画が大切です。
相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう
令和5年(2023年)に始まった制度で、相続した土地を国に引き取ってもらうことができます。ただし、建物が残ったままでは申請できないため、空き家の場合は解体して更地にすることが前提です。申請時に審査手数料(土地一筆あたり14,000円)がかかり、承認された場合は原則20万円からの負担金を納付します。境界が明らかでない土地や担保権の付いた土地は対象外となるなど要件が細かいため、ご利用をお考えの方は事前にご相談ください。
「実家じまい」として計画的に進めるなら
親御様が亡くなられた後の実家を、遺品整理から名義変更・売却まで一連の流れで片付けることを「実家じまい」と呼びます。進め方の5つのステップや費用の目安、県外から沖縄の実家を片付ける方法は、下記の記事で詳しく解説しています。
▶ あわせて確認:実家じまいとは?進め方と費用・沖縄の実家を県外から片付ける方法
空き家の放置に関するよくあるご質問
Q. 相続登記をしないまま空き家を放置するとどうなりますか?
相続登記は令和6年(2024年)4月1日から義務化されており、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと10万円以下の過料の対象になります。義務化前に相続した不動産も対象で、経過措置の期限は令和9年(2027年)3月31日です。詳しくは下記の記事をご覧ください。
▶ あわせて確認:相続登記の義務化はいつから?過料10万円の実際と2027年3月期限
Q. 特定空家に指定されたら、必ず解体しなければいけませんか?
すぐに解体が必要になるわけではありません。指定後も「助言・指導」の段階で修繕や草木の伐採など状態を改善すれば、勧告・命令には進みません。ただし放置の期間が長引くほど選択肢は狭まりますので、市町村から通知が届いたら早めに動くことをおすすめします。
Q. 相続放棄をすれば、空き家の管理責任から解放されますか?
相続放棄をしても、その空き家を「現に占有している」場合(実際に住んでいる・管理しているなど)は、次の相続人や相続財産清算人に引き継ぐまで保存義務が残ります(令和5年4月施行の改正民法940条)。「放棄すればすべて終わり」ではない点にご注意ください。相続放棄そのものの注意点は、下記の記事で解説しています。
▶ あわせて確認:司法書士が警告!相続放棄の罠と後悔しない手続き方法
Q. 県外に住んでいて、沖縄の実家まで手が回りません
当事務所へのご相談でも、県外にお住まいの相続人の方が沖縄の実家を空き家のままにされているケースは少なくありません。沖縄は台風の常襲地域のため、屋根材や外壁の飛散による近隣被害のリスクはより切実です。当事務所では、県外の相続人の皆様に代わって相続登記から売却先のご紹介までワンストップで対応していますので、帰省のタイミングを待たずにお気軽にご相談ください。
まとめ
- 空き家の火災で人的被害が出ると、所有者が工作物責任を負い、億単位の損害賠償になりうる
- 「親の名義だから大丈夫」はNG。相続が発生した時点で相続人が所有者になっている
- まずは①名義確認 → ②現地確認 → ③解体費用見積もり → ④行政補助の確認
- 「売れない・壊せない」でも、隣地譲渡・無償譲渡・建設業者買取など意外な解決策がある
- 放置が続くと特定空家指定→勧告で固定資産税最大6倍→命令違反の過料→行政代執行と段階的に重くなる
- 出口は売却・賃貸・解体・相続土地国庫帰属制度の4つ。名義変更(相続登記)がすべての入口
- 素人判断せず、まず専門家に相談することが最重要
空き家の問題でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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