# 相続トラブルは”普通の家族”ほど揉めます|相続争いの原因5選
皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高健一です。
「うちは財産も少ないし、家族仲もいいから相続で揉めることはないだろう」と思っていませんか?実は、これは大きな誤解です。相続トラブルは、お金持ちの家庭だけに起きるものではありません。むしろ、普通の仲の良い家族ほど、相続で深刻な対立が生まれやすいという現実があります。
なぜそうなるのか。それは、相続がお金の損得だけの問題ではないからです。家族だからこそ、「裏切られた」「自分だけ損をした」「親に愛されていなかったのか」という特別な感情が入り込んできます。この感情が、普段は仲の良かった兄弟を、取り返しのつかない関係に引き裂いてしまうのです。
実際にこんなケースを扱ったことがあります。30歳を超えても兄妹で映画に出かけるほど仲の良い兄妹がいました。遺産は預金300万円。ところがお母さんが残した遺言書には「全財産を長女へ」と書かれていた。それを見た長男は激怒しました。年収1,000万円超の彼が怒ったのは、お金のためではありません。「自分のお母さんから裏切られた」という感情からでした。その怒りの矛先は妹へ向かい、長年仲の良かった兄妹は絶縁状態になってしまったのです。
このような事例は、決して珍しいことではありません。本日は、相続トラブルが起きる原因として特に多い5つのケースを解説いたします。それぞれの原因と、揉めないための対策をご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
相続トラブルが起きる5つの原因
相続でよく揉める原因は、以下の5つです。
- 財産評価のズレ
- 財産の使い込み(生前流用)
- 遺言と遺留分の問題
- 貢献・援助をめぐる不公平感
- 相続人の周囲にいる「背後の黒幕」と知識不足
それぞれ詳しく解説していきます。
1. 財産評価のズレ
現金や預金、株式などは金額がはっきりしています。しかし不動産はそうではありません。同じ不動産でも、誰がどの方法で評価するかによって、出てくる金額がまったく異なります。
- 固定資産税評価額:毎年届く固定資産税の明細に記載された価格
- 路線価・相続税評価額:税理士が相続税計算のために使う価格
- 不動産鑑定士による鑑定額:不動産の専門家が算出する市場価格に近い額
- 実際の売却価格:買い手がついた時の実勢価格
例えば、5,000万円相当の財産をAさんは現金で、Bさんは株式で、Cさんは不動産でそれぞれ相続したとします。一見「平等」に見えますが、後でCさんがその不動産を6,000万円で売却したとなると、AさんBさんは「得をしたじゃないか」と不満を持ちます。逆に4,000万円でしか売れなかった場合は、Cさんが「損をした分を返してほしい」と言い出すかもしれません。
どちらの気持ちも、感情的には理解できます。しかしこうしたトラブルを防ぐためには、不動産の評価を専門家に依頼して客観的な数字を出すことが重要です。さらに、不動産を受け取る方が「高く売れるかもしれないし、安くなるかもしれない、そのリスクを承知の上で受け取ります」という同意を、相続の時点でしっかり取っておくことが大切です。
2. 財産の使い込み(生前流用)
親が高齢になると、子供が親の通帳やキャッシュカードを預かって生活費の支払いなどを管理するケースは珍しくありません。しかし親が亡くなった後、「なぜこんなに引き出されているのか」と他の兄弟が気づいて揉め事になることがあります。
病院代や薬代は領収書が残りますが、食料品や生活用品、タクシー代などは何に使ったのかが証明しにくいのです。
実際に扱ったケースでは、息子が親のキャッシング機能付きカードを使い込み、500万円もの借金をお母さん名義で作ってしまっていたこともありました。お母さんは「信頼して任せていたのに裏切られた」と深く傷つき、他の兄弟は激怒。裁判沙汰にまで発展しました。
このようなトラブルを防ぐためには、以下のことが有効です。
- 支払いはクレジットカードや振込で記録を残す
- 領収書・レシートを必ず保管する
- 定期的に家族全員で支出を共有する(ZoomなどのオンラインミーティングでもOK)
- 介護した分の負担を、後の相続でどう扱うかを事前にルール化しておく
「めんどくさい」に負けて記録を怠ると、後で取り返しのつかないトラブルになります。家族間でのお金の管理は、第三者を交えてルールを作っておくことをお勧めいたします。
3. 遺言と遺留分の問題
「遺言書を書いておけば揉めない」と思っている方も多いのですが、実はそれだけでは不十分な場合があります。
例えば「長男に全財産を」という遺言書があったとして、他の兄弟は素直に納得するでしょうか。家族は基本的に「公平であるべき」という感覚を持っています。そのため、自分だけが除外されると「捨てられた」「親に愛されていなかった」という感情が生まれやすいのです。
そこで法律が認めているのが「遺留分(いりゅうぶん)」という制度です。
遺留分(いりゅうぶん)とは、どんな遺言内容であっても、一定の相続人が最低限受け取れると法律で保障された取り分のことです。「長男に全財産を」という遺言があっても、他の兄弟は遺留分を請求できる権利を持っています。ただし、この権利には1年という時効がありますので、知らないまま時間が経過してしまうと請求できなくなってしまいます。
- 遺言書に「なぜこの配分にしたか」の理由を記載する
- 事前に家族全員に遺言の内容を説明しておく
- 遺留分に相当する金額を生命保険などで別途準備しておく
- 遺留分相当の賃料収入などを得られる形で不動産を活用する
- 遺留分の放棄を家庭裁判所で手続きしてもらう(事前の話し合いと調整が前提)
結論だけ伝えて理由を説明しないことが、「裏切られた」という感情を生みます。遺言書は「なぜそうしたか」という理由とセットで残すことが重要です。
4. 貢献・援助をめぐる不公平感
相続人の間には、親との関係においてさまざまな背景の違いがあります。
- 介護のために仕事を辞めて献身的に世話をした
- 親の借金を自分の貯金から立て替えた
- 親の農業や事業を無償で長年手伝った
- 親のアパートの管理・家賃回収を無報酬でやってきた
- 生活費が足りない親に何年も仕送りをしてきた
- 独立・開業のために事業資金を出してもらった
- 結婚の際にまとまったお金をもらった
- 住宅購入の際に援助してもらった
- 大学・留学の費用を出してもらった
「特別受益(とくべつじゅえき)」とは、相続人が生前に親から受け取った特別な利益のことで、法律上は遺産の前渡しとして扱われます。つまり、生前にもらったお金は「別の話」ではなく、相続の際に考慮されるべきものなのです。
ところが、「生前にもらったお金と相続は別物」と思っている方が非常に多い。ここの認識のズレが揉め事の原因になります。
また、介護への貢献を証明するのは非常に難しいという問題もあります。「何回行った」「何をした」という記録がなければ、「大したことをしていない」と言われてしまうこともあります。
対策としては、以下のことをお勧めいたします。
- 介護の記録(日時・内容・費用)を日頃からつけておく
- お金の貸し借りや援助は、書面と記録を残す
- 家族全員が「寄与分」「特別受益」という考え方を事前に理解しておく
- 当事者同士だけで話し合わず、専門家を交えて客観的に整理する
5. 「背後の黒幕」と知識不足
相続トラブルをこじらせる要因として、意外と見落とされがちなのがこの2つです。
「背後の黒幕」とは、相続人本人ではなく、その配偶者(長男の奥さん、長女の旦那さんなど)が後ろから口を出してくるケースのことです。例えば、長男が介護を頑張っていたのに兄弟で均等割りになりそうだと、長男の奥さんが「おかしい」と感じて強く主張してくることがあります。気持ちとしては理解できる部分もありますが、当事者でない方が前面に出てくると、他の相続人は「あなたの意見じゃなくて奥さんの意見でしょ」と反発しやすくなります。
このようなケースでは、相続人本人が自分の言葉で主張することが大切です。「自分が介護を頑張ったから、その分を考慮してほしい」と当事者として伝えることで、話し合いが建設的になります。
また、知識不足も大きな問題です。相続は人生で何度も経験するものではありません。初めて経験する方がほとんどで、しかも親が亡くなったという感情的にも辛い状況の中で対応しなければなりません。
- 相続税・不動産評価の基礎知識
- 遺留分・寄与分・特別受益などの法律知識
- 家族とのコミュニケーション能力
- 寄り添ってくれる専門家(司法書士・弁護士・税理士・不動産鑑定士)を知っていること
- セカンドオピニオンを活用できること
特に「セカンドオピニオン」については、ぜひ知っておいていただきたいことです。1人の専門家の意見だけで判断するのではなく、複数の専門家に相談して客観的に比較することで、自分たちに最も適した解決策が見つかります。専門家を変えることや複数に意見を聞くことは、決して失礼なことではありません。積極的に活用することをお勧めいたします。
まとめ
今回は、相続トラブルが起きる5つの原因についてご説明いたしました。要点を整理します。
- 財産評価のズレ:不動産は評価方法によって金額が変わるため、専門家による客観的な評価と、リスクを全員で共有する合意が重要
- 財産の使い込み:親のお金を管理する際は記録・報告を徹底し、家族全員で支出を共有するルールを作ること
- 遺言と遺留分:遺言書には配分の理由を明記し、遺留分への配慮を事前に行うことでトラブルを防げる
- 貢献・援助の不公平感:寄与分・特別受益の考え方を家族全員が理解し、記録を残した上で専門家を交えて整理すること
- 背後の黒幕と知識不足:当事者が自分の言葉で主張すること、そして複数の専門家にセカンドオピニオンを求めることが大切
相続は必ず誰もが経験する出来事です。「うちは大丈夫」と思わずに、今から家族でできる対策を考えてみてください。何から始めればよいか分からない場合は、まず専門家に「何が問題になりそうか」を相談してみることが第一歩です。
ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にレスター司法書士法人にご相談ください。
本記事の内容は、YouTube動画『相続トラブルは”普通の家族”ほど揉めます 相続争い原因5選』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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