失踪宣告とは?行方不明の相続人がいる時の相続手続き

失踪宣告とは

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

相続の手続きを進めようとしたところ、「相続人の一人と何年も連絡が取れない」「家を出たきり行方が分からない兄弟がいる」といった状況に直面し、手続きが前に進まずお困りではないでしょうか。

遺産分割は、相続人全員が参加しなければ成立しません。そのため、一人でも行方不明の方がいると、預貯金の解約も不動産の名義変更もできず、手続きが完全に止まってしまいます。かといって、生死も分からない相手を勝手に「亡くなったもの」として進めることもできず、途方に暮れてしまう方が少なくありません。

こうした場面で鍵となるのが、「失踪宣告」という制度です。ただし、行方不明の相続人がいるからといって、いつでも失踪宣告が使えるわけではありません。状況によっては「不在者財産管理人」という別の制度を選ぶべきケースもあります。

本日は、失踪と失踪宣告の意味の違いから、失踪宣告の手続きと相続への影響、そして相続人が行方不明の場合に失踪宣告と不在者財産管理人をどう使い分けるのかまで、司法書士の実務の視点で解説いたします。

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目次

「失踪」と「失踪宣告」の違いとは

まず、言葉の整理から始めましょう。日常会話で使う「失踪」と、法律上の「失踪宣告」は意味が異なります。

失踪とは、一般的には「人が行方をくらまし、どこにいるか分からなくなること」を指す言葉です。これはあくまで事実上の状態を表しているにすぎず、それ自体に法律上の効果はありません。行方不明のままでは、その方の財産を動かすことも、相続を開始させることもできないのが原則です。

一方、失踪宣告とは、生死が不明な状態が一定期間続いた方について、家庭裁判所が「法律上、死亡したものとみなす」という審判を下す制度です。民法第30条以下に定められており、宣告が確定すると、その方は法律上亡くなったものとして扱われます。

つまり、ただ行方不明である「失踪」の状態から、家庭裁判所の手続きを経て法的な効果を発生させるのが「失踪宣告」だとお考えいただくと分かりやすいかと思います。失踪宣告によって法律上死亡したものとみなされることで、はじめてその方の相続が開始し、残された家族が相続手続きを進められるようになります。

制度の詳細は、裁判所の「失踪宣告」のページや、e-Gov法令検索の民法(第30条〜第32条)で確認することができます。

失踪宣告の2つの種類|普通失踪と特別失踪

失踪宣告には、失踪の原因によって「普通失踪」と「特別失踪(危難失踪)」の2種類があります。それぞれ、必要となる失踪期間が異なります。

普通失踪|生死不明が7年間継続

普通失踪は、家を出たまま行方が分からなくなった場合など、一般的な行方不明のケースです。不在者の生死が7年間明らかでないときに、失踪宣告を申し立てることができます。

この場合、7年間の期間が満了した時点で死亡したものとみなされます。たとえば10年前に行方不明になった方であれば、行方不明から7年が経過した時点、つまり3年前の日に亡くなったものとして扱われることになります。

特別失踪(危難失踪)|危難が去った後1年間

特別失踪は、戦争、船舶の沈没、震災、その他の生命の危険を伴う出来事(危難)に遭遇し、その後生死が不明になった場合です。この場合は、危難が去った後1年間生死が明らかでないときに、失踪宣告を申し立てることができます。

特別失踪では、普通失踪と異なり、危難が去った時点で死亡したものとみなされる点に注意が必要です。1年間の期間満了時ではありません。

失踪宣告の申立手続きの流れ

失踪宣告は、家庭裁判所に申立てをして進めます。おおまかな流れは以下のとおりです。

  1. 利害関係人による申立て:不在者の配偶者や相続人など、失踪宣告について法律上の利害関係を持つ方が申立人となります
  2. 家庭裁判所による調査:家庭裁判所調査官が、不在者の生死や行方について調査を行います
  3. 公示催告:不在者本人や、その生死を知る人に対し、一定期間内に届け出るよう官報などで公に呼びかけます
  4. 審判(失踪の宣告):期間内に届出がなければ、家庭裁判所が失踪の宣告をします
  5. 市区町村役場への届出:審判が確定したら、10日以内に役場へ失踪の届出をします

申立先は、不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所です。公示催告の期間が設けられるため、申立てから審判の確定までには、一般的に半年から1年程度の時間がかかります。相続手続きに期限が迫っている場合は、早めに動き出すことが大切です。

申立てに必要な書類や費用の詳細は個別の事情により異なりますので、裁判所の案内をご確認いただくか、専門家にご相談ください。

失踪宣告の効果|死亡とみなされ相続が開始する

失踪宣告が確定すると、その方は法律上死亡したものとみなされます。これにより、主に次のような効果が生じます。

  • 相続の開始:みなし死亡の時点で、その方を被相続人とする相続が開始します
  • 婚姻関係の解消:配偶者との婚姻関係が終了し、残された配偶者は再婚が可能になります
  • 生命保険金の支払い:死亡を条件とする生命保険金の請求が可能になる場合があります

ここで注意していただきたいのが、失踪宣告は「生存が確認できない不在者本人」を死亡とみなす制度だということです。相続の場面では、大きく2つのパターンが考えられます。

一つは、行方不明だった方自身の財産を相続するために失踪宣告を使うパターン。もう一つは、すでに始まっている相続の中に、行方不明の相続人がいるパターンです。実務で悩ましいのは後者で、次の章で詳しく解説します。

なお、失踪宣告によって相続税や生命保険金に関わる税務が生じる場合の取り扱いは複雑です。具体的な税額や申告の要否については、税理士や所轄の税務署へご確認ください。

相続人が行方不明の場合の遺産分割|失踪宣告と不在者財産管理人の使い分け

親が亡くなり、いざ遺産分割協議をしようとしたときに、相続人である兄弟の一人が長年行方不明だった——。このようなケースでは、行方不明の相続人を含めた全員で遺産分割協議をしなければならないため、そのままでは手続きが進みません。

この場合の解決策として、主に2つの方法があります。失踪宣告不在者財産管理人の選任です。どちらを選ぶべきかは、行方不明になってからの期間や、ご家族の状況によって変わります。

失踪宣告を選ぶケース

行方不明の相続人について失踪宣告が認められると、その方は法律上死亡したものとみなされます。その結果、行方不明だった方は相続人から外れ、その方に子がいればその子が代わりに相続人となります(代襲相続)。

この方法が向いているのは、行方不明になってからすでに7年以上が経過しており、今後も生存が期待しにくいようなケースです。失踪宣告が確定すれば、行方不明者を除いた相続人(またはその代襲相続人)で遺産分割協議ができるようになります。

不在者財産管理人を選ぶケース

一方、行方不明になってからの期間がまだ7年に満たない場合や、生死が不明とまでは言えない場合には、失踪宣告は使えません。そこで用いるのが不在者財産管理人の制度です。

不在者財産管理人とは、行方不明者に代わってその財産を管理する人のことで、家庭裁判所に選任を申し立てます。選任された管理人が、家庭裁判所の許可(権限外行為許可)を得たうえで、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加します。これにより、行方不明者を死亡とみなすことなく、遺産分割を進めることができます。

制度の概要は裁判所の「不在者財産管理人」のページでも確認できます。

どちらを選ぶべきか

2つの制度の違いを整理すると、次のようになります。

  • 失踪宣告:行方不明者を法律上死亡とみなす。7年以上の生死不明が要件。行方不明者は相続人から外れる
  • 不在者財産管理人:行方不明者は生存しているものとして扱う。期間の要件はない。管理人が本人に代わり協議に参加し、行方不明者の相続分は確保される

どちらの制度が適切かは、行方不明の期間、生存の可能性、他の相続人の意向、そして相続財産の内容などを総合的に踏まえて判断する必要があります。この判断は個別事情により大きく異なりますので、自己判断で進める前に、司法書士などの専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

行方不明の相続人がいない場合の一般的な遺産分割協議の進め方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

失踪宣告の取消し|行方不明者が生きていた場合

失踪宣告を受けた方が、実は生きていたことが判明することもあります。その場合は、本人または利害関係人の請求により、家庭裁判所が失踪宣告の取消しをします。取消しによって、失踪宣告の効果ははじめからなかったことになります。

ただし、取消しの効果には一定の制限があります。失踪宣告が取り消されても、宣告後に「善意で」(=生存の事実を知らずに)行われた行為の効力は、原則としてそのまま有効とされます。たとえば、失踪宣告を信じて行われた財産の処分などが、これにあたる場合があります。

また、失踪宣告によって財産を得た相続人などは、取消しによってその財産を返還する義務を負いますが、返還の範囲は現に利益を受けている限度にとどまるのが原則です。取消しをめぐる法律関係は非常に複雑になりますので、実際にこうした事態が生じた場合は、速やかに専門家へご相談ください。

沖縄の相続で失踪宣告が問題になりやすい場面

沖縄の相続では、失踪宣告や行方不明の相続人が、他の地域とはやや異なる形で問題になることがあります。

一つは、軍用地料の存在です。沖縄では、米軍基地などに提供している土地(軍用地)を相続財産として持つご家庭が少なくありません。軍用地は毎年安定した地料収入を生むため、相続人全員での遺産分割が整わないと、地料の受け取りや名義の整理が長期間宙に浮いてしまいます。相続人の一人が県外や海外に出たまま連絡が取れないケースでは、失踪宣告や不在者財産管理人の検討が必要になることがあります。

もう一つは、トートーメー(位牌)の継承にまつわる問題です。沖縄では、祭祀承継者を誰にするかという慣習的な事情が、遺産分割の話し合いに影響することがあります。こうした事情が絡んで相続人の一部と疎遠になり、長年連絡が取れなくなっているケースも見受けられます。

沖縄で失踪宣告や不在者財産管理人の申立てを行う場合、申立先は不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所(沖縄県内であれば那覇家庭裁判所やその支部など)となります。地域の実情を踏まえた対応が必要になりますので、沖縄の相続に詳しい専門家にご相談いただくと安心です。

よくある質問

相続人と連絡が取れないだけでも失踪宣告はできますか?

単に「連絡が取れない」というだけでは、失踪宣告は認められません。失踪宣告は、あくまで生死が不明な状態が一定期間(普通失踪であれば7年間)続いていることが要件です。

住所は分かっているものの連絡を無視されている、といった場合は「生死不明」にはあたらないため、失踪宣告ではなく、別の方法で遺産分割を進めることを検討します。まずは状況を整理し、どの制度が使えるかを確認することが大切です。

失踪宣告と不在者財産管理人はどちらが早く手続きできますか?

一概には言えませんが、失踪宣告は公示催告の期間が設けられるため、申立てから確定まで半年から1年程度かかるのが一般的です。不在者財産管理人の選任も相応の時間を要しますが、7年という失踪期間の要件がない分、期間の要件を満たさないケースでは不在者財産管理人しか選べません。

どちらが適しているかは、期間だけでなく、行方不明者の相続分をどう扱いたいかによっても変わります。個別のご事情をうかがったうえで判断いたしますので、ご相談ください。

失踪宣告をすると、行方不明者の子は相続できなくなりますか?

いいえ、そのようなことはありません。失踪宣告によって行方不明の相続人が死亡したものとみなされた場合、その方に子がいれば、その子が代わりに相続人となります(代襲相続)。行方不明者の相続する権利が、その子へ引き継がれるとお考えください。

失踪宣告の手続きは自分でできますか?

申立て自体をご自身で行うことも制度上は可能です。ただし、必要書類の収集や、公示催告への対応、審判確定後の相続手続きまでを一貫して進めるには、専門的な知識が必要になる場面が多くあります。特に、失踪宣告と不在者財産管理人のどちらを選ぶかという入り口の判断は、その後の相続全体に影響します。ご不安な場合は、早い段階で専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

まとめ

失踪宣告と、行方不明の相続人がいる場合の相続手続きについて解説してまいりました。要点を整理いたします。

  • 「失踪」は行方不明という事実の状態、「失踪宣告」は家庭裁判所が法律上死亡とみなす制度で、意味が異なる
  • 失踪宣告には普通失踪(生死不明が7年間)と特別失踪(危難が去った後1年間)の2種類がある
  • 失踪宣告が確定すると死亡したものとみなされ、相続が開始する
  • 相続人が行方不明の場合は、失踪宣告と不在者財産管理人の使い分けが重要。7年以上の生死不明なら失踪宣告、そうでなければ不在者財産管理人が基本
  • 行方不明者が生きていた場合は失踪宣告の取消しができるが、法律関係は複雑になる

行方不明の相続人がいる相続は、どの制度を使うべきかの判断が難しく、手続きも長期間に及びがちです。ご自身だけで抱え込むと、かえって時間と手間がかかってしまうこともあります。

レスター司法書士法人では、窓口を一つにしてワンストップで対応しております。失踪宣告や不在者財産管理人の選任、その後の遺産分割まで、沖縄の相続の実情を踏まえてお手伝いいたします。初回のご相談は無料で承っておりますので、ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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