皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。
令和6年4月1日から相続登記は「やった方がいい」ではなく、必ずしなければならない義務になりました。
これまでは任意だった手続きが、突然義務化され、しかも3年以内にしないと10万円以下の罰金という制度まで設けられています。
「まだ両親は元気だから関係ない」と思われている20代・30代の方も、実は無関係ではありません。
ご両親が不動産を所有している場合、将来その名義変更が必要になる可能性があります。
また、すでにご両親が亡くなられている方で、まだ名義変更をされていない場合は、早急に対応が必要です。
本日は、この相続登記義務化について、「なぜこのような制度ができたのか」「具体的にどうすればいいのか」「どう対策すればいいのか」を分かりやすく解説いたします。
本記事の内容は、YouTube動画『【法改正】「相続登記の義務化」司法書士が最低限の知識を解説!』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
そもそも「相続」と「相続登記」とは何か
まず基本的な用語を確認しておきましょう。
相続とは、親が亡くなった際に、親が持っている財産(お金、車、不動産など)が子供たちに引き継がれるというルールのことです。これは法律で定められた権利であり、誰もが関わる可能性のある制度です。
登記とは、平たく言えば「登録」のことです。車には車検証があり、誰の名義かが記録されていますよね。それと同じように、土地や建物といった不動産にも名義が登録されているのです。マンション、一軒家、アパート、土地、駐車場——すべての不動産には名義人が記録されています。
相続登記とは、この不動産の名義人が亡くなった際に、家族(相続人)の名義に変更する手続きのことを指します。これまでは「やってもやらなくてもいい」という扱いでしたが、令和6年4月1日からは必ずしなさいという義務になったのです。
なぜ相続登記が義務化されたのか
法律が変わるには必ず理由があります。相続登記の義務化も、実は日本が抱える深刻な社会問題が背景にあるのです。
所有者不明土地の増加という大問題
日本全国で、誰の名義か分からない土地がどれくらいあるか、ご存じでしょうか?
答えは、九州全体に匹敵する面積なのです。想像してみてください。九州という広大な土地が、誰のものか分からない状態で放置されているのです。これは国としても、地域としても、大きな問題となっています。
公共事業への支障
この「所有者不明土地」が増えると、何が困るのでしょうか。
たとえば、国が高速道路や空港を建設する際、その土地の所有者から承諾を得る必要があります。しかし、名義人が誰か分からなければ、誰に承諾をもらえばいいのかが分かりません。結果として、公共事業が大幅に遅れてしまうのです。
逆に、土地の名義がはっきりしていれば、国はスムーズに所有者と交渉でき、必要なインフラ整備を進められます。道路、鉄道、空港といった公共施設は、私たちの生活に欠かせないものですよね。
こうした背景のもと、所有者不明土地の発生を防ぎ、公共の利益を守るために、相続登記が義務化されました。
相続登記義務化の具体的な内容
では、具体的にどのような義務が課されるのでしょうか。
東京法務局は、次のようにまとめています。
- 相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
- 遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。
原文は難しいので、ここからはポイントを整理してお伝えします。
義務化のルール
相続登記義務化の基本ルールは以下の2つです。
- 令和6年4月1日以降に亡くなった方: 亡くなった時から3年以内に相続登記をしなければならない
- 令和6年4月1日より前に亡くなった方: 令和9年3月31日までに相続登記をしなければならない
つまり、過去に亡くなった方の不動産についても、期限内に名義変更が必要になるということです。「まだ大丈夫」と放置していると、気づいた時には期限が迫っている可能性もあります。
罰金制度について
この義務を怠ると、10万円以下の罰金が科される可能性があります。国が本気で取り組んでいることが分かりますね。
ただし、「10万円払えばいいや」と考えるのは危険です。後ほど詳しく解説しますが、放置することで次の世代に大きな負担を引き継ぐことになるからです。
相続登記の手続き
相続登記は、法務局という役所で申請します。たとえば、長男・次男・三男の3人兄弟がいて、長男が不動産を引き継ぐ場合、「長男の名義にします」という登録を法務局で行うのです。
この手続きの専門家が司法書士です。相続登記でお困りのことがあれば、司法書士にご相談されることをお勧めいたします。
相続登記にかかる期間と費用
相続登記を検討される際、多くの方が気にされるのが「どれくらい時間がかかるのか」「費用はいくらか」という点だと思います。
期間について
期間は、ケースによって大きく異なります。
- シンプルなケース(おじいちゃんから息子へ、など1世代の相続): 早ければ1ヶ月程度
- 複雑なケース(明治時代のおじいちゃんの名義から変更していない場合): 3年〜4年以上かかることも
なぜこれほど差が出るのかというと、相続人の数が関係しています。何世代も名義変更をしていないと、相続人が50人、100人と膨れ上がることがあるのです。こうなると、全員の同意を得るだけでも膨大な時間がかかってしまいます。
費用について
費用も同様に、手間暇と財産の規模によって変動します。
たとえば、相続人が10人で終わるケースと、100人いるケースでは、必要な手続きの量が全く違います。また、財産が1億円の場合と10億円の場合でも、費用は異なってきます。
一概に「いくらです」とは言えませんので、個別のケースについては司法書士にご相談いただければと思います。
相続登記ができない場合の対処法
相続登記を進めようとしても、実際にはスムーズにいかないケースが少なくありません。
よくある問題
相続登記が進まない理由として、以下のようなケースがあります。
- 身内での話し合いがまとまらない: 誰が不動産を引き継ぐかで意見が対立する
- 相続人が行方不明: 海外に出稼ぎに行ったまま連絡が取れない、など
- 相続人が多すぎる: 何世代も放置した結果、相続人が数十人に及ぶ
こうした事情で、どうしても3年以内に登記ができないこともあるでしょう。
申告登記制度の活用
そんな時に活用できるのが、申告登記制度です。
これは、法務局に「頑張っているのですが、事情があって3年以内に完了できません」と申告する制度です。この申告をしておけば、罰金を免れることができます。
ただし、これはあくまで暫定的な措置です。申告すれば問題が解決するわけではなく、最終的には相続登記を完了させる必要があることを忘れないでください。
「罰金10万円を払えばいい」という考えが危険な理由
ここまでお読みいただいて、「手続きが面倒だし、10万円払った方が楽じゃないか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これは非常に危険な考え方です。
ネズミ算式に広がる相続人
相続登記を放置すると、次の世代、そのまた次の世代へと問題が引き継がれていきます。そして、世代を経るごとに相続人の数はネズミ算式に増えていくのです。
想像してみてください。親の代で整理しておけば、相続人は数人で済んだはずです。しかし、それを放置して子供の代になると、兄弟姉妹とその配偶者、さらに孫の世代まで巻き込まれる可能性があります。
実際にあった紛争事例
実際にあった事例をご紹介します。
ある不動産を、何世代にもわたって名義変更せずに放置していたケースです。資産価値がそこそこあったため、いざ整理しようとした時に、従兄弟同士で大きな争いが始まってしまいました。
お互い、自分の親から聞いた情報だけを頼りにしているため、「自分の親が言っていることが正しい」と信じ込んでしまうのです。それまで仲が良かった親族が、相続をきっかけに疎遠になってしまう——こうした悲しい事例は、決して珍しくありません。
次世代への負担
親の代で片付けておくべき権利や義務を整理しておくことは、後継者への思いやりでもあります。自分の子供たちに、複雑な相続問題を押し付けるのは避けたいですよね。
若い世代にも関係がある理由
「自分はまだ20代・30代だから関係ない」と思われている方へ。実は、若い世代の方にも関係のある話なのです。
ご両親の不動産について確認を
たとえば、ご両親が50歳前後でまだお元気という場合でも、ご両親が不動産を所有していれば、将来的には相続登記が必要になります。
今のうちから、以下のことを確認しておくことをお勧めします。
- ご両親が不動産を所有しているか
- すでに祖父母から名義変更済みか
- まだ名義変更していない場合、いつ対応するのか
こうした会話を家族でしておくだけでも、将来のトラブルを避けることにつながります。
すでに相続が発生している場合
すでにご両親が亡くなられていて、まだ名義変更をされていない方は、早急に対応が必要です。令和6年4月1日より前に亡くなられた方の場合、令和9年3月31日までに登記をしなければなりません。
期限まであまり時間がありませんので、お早めに司法書士にご相談ください。
まとめ
本日は、相続登記の義務化について解説してまいりました。重要なポイントを以下にまとめます。
- 令和6年4月1日から相続登記が義務化され、3年以内に手続きをしないと10万円以下の罰金が科される
- 所有者不明土地の増加が社会問題となっており、公共事業への支障を防ぐために義務化された
- 相続登記を放置すると、次の世代へネズミ算式に問題が拡大し、親族間のトラブルにつながる
- 申告登記制度を活用すれば、事情がある場合は罰金を免れることができる
- 若い世代でも無関係ではなく、ご両親の不動産について今から確認しておくことが大切
相続登記は、単なる手続きではなく、ご家族の将来を守るための大切な行動です。ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にレスター司法書士法人にご相談ください。専門家である司法書士が、皆様の状況に合わせた最適な方法をご提案いたします。
本記事の内容は、YouTube動画『POINT』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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