親から子へ不動産の名義変更|生前贈与の費用・税金と800万円課税された実例

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「元気なうちに、実家を子どもの名義に変えておきたい」——親御さんからこうしたご相談をいただくことは少なくありません。

親から子への不動産の名義変更は、一見すると単純な手続きに思えるかもしれません。しかし、実際には「どの方法で名義を移すか」で、かかる費用も税金も大きく変わります

実際に、親が施設に入るため空き家になった実家を、善意で子どもの名義に変更したところ、800万円もの贈与税が課されたケースがありました。弁護士に契約書を作ってもらい、司法書士に名義変更を依頼し、法律的には何も問題がなかったにもかかわらず、です。

法律上は問題がなくても、税務上はまったく別の判断になる——これが不動産の名義変更の落とし穴です。

本日は、親から子へ不動産の名義変更をする際の3つの方法とその費用、そして生前贈与を選ぶ場合の贈与税の抑え方について、具体例を交えて解説いたします。

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目次

親から子へ不動産を名義変更する3つの方法

まず結論からお伝えします。親から子へ不動産の名義を移す方法は、大きく分けて次の3つです。

  1. 生前贈与:親が生きているうちに贈与で名義を移す
  2. 相続:親が亡くなったあとに相続で名義を移す
  3. 売買:親から子へ適正価格で買い取る

どれを選ぶかで、かかる税金の種類も金額も変わります。おおまかな違いを整理すると、次のとおりです(税額は制度の一般的な枠組みを示したもので、実際の金額は評価額や個別の事情により異なります)。

3つの方法と主な税金の違い(一例)
  • 生前贈与:贈与税(控除は年110万円のみ)+登録免許税は評価額の2%+不動産取得税もかかる。今すぐ名義を確保できるが税負担は最も重くなりやすい
  • 相続:相続税(基礎控除3,600万円+600万円×相続人数)+登録免許税は評価額の0.4%+不動産取得税は非課税。税負担は軽いが、親が亡くなるまで待つ必要があり、遺産分割で揉める余地がある
  • 売買:贈与税はかからないが、子に購入資金が必要。親側に譲渡所得税が生じる場合がある。極端に安い価格だと差額が贈与とみなされることがある

税金だけを見れば、相続まで待つのが最も有利です。それでも生前贈与を選ぶ理由については、後ほど詳しくご説明します。まずは、生前贈与を選んだ場合に実際いくらかかるのか——費用の中身から見ていきましょう。

生前贈与で名義変更するときにかかる費用の内訳

生前贈与による名義変更(贈与登記)でかかる費用は、大きく「税金」と「手続きの実費・報酬」に分かれます。順に見ていきます。

1. 登録免許税(固定資産税評価額の2%)

名義変更の登記を法務局へ申請する際に納める税金が登録免許税です。贈与による名義変更の場合、税率は固定資産税評価額の2%(1000分の20)です。

例えば評価額1,000万円の不動産であれば、登録免許税は20万円ということになります。ここで注意したいのは、同じ名義変更でも相続の場合は0.4%(1000分の4)と5分の1で済む点です。生前贈与は登記段階の税金だけを見ても割高になります。税率の詳細は法務局「登録免許税の計算」で確認できます。

2. 不動産取得税(贈与ではかかる/相続では非課税)

意外と見落とされがちなのが不動産取得税です。これは都道府県が課す税金で、贈与で不動産を取得した場合はかかりますが、相続で取得した場合はかかりません

税率は原則として評価額の4%ですが、土地と住宅については軽減措置により3%とされている期間があります(軽減の適用期間や要件は変わることがあるため、最新の内容はお住まいの都道府県税事務所でご確認ください)。生前贈与では、登録免許税に加えてこの不動産取得税も負担になる点を見込んでおく必要があります。

3. 司法書士報酬と必要書類

登記手続きを司法書士に依頼する場合の報酬がかかります。金額は事務所や案件の内容により幅がありますが、贈与登記1件あたり数万円から十数万円程度が一つの目安です。

手続きには主に次の書類が必要になります。

  • 贈与契約書
  • 不動産の登記識別情報(権利証)
  • 贈与する側(親)の印鑑証明書
  • 受け取る側(子)の住民票
  • 固定資産評価証明書

なお、名義変更を自分で行えば司法書士報酬は抑えられますが、平日に何度も法務局へ通う必要があり、書類の不備があればやり直しになります。費用と手間のバランスは、相続登記を自分でやる場合と同じ構図です。詳しくは以下の記事もあわせてご覧ください。

最大の注意点は贈与税|800万円課税された実例

ここまでの費用(登録免許税・不動産取得税・報酬)に加えて、生前贈与で最も大きな負担になり得るのが贈与税です。冒頭でご紹介した「800万円課税された実例」も、この贈与税によるものでした。

贈与税は基礎控除が年110万円しかない

贈与税は、税率が10%から55%までの累進課税で、金額が大きくなるほど税率も高くなります。そして最大の特徴が、基礎控除が年間110万円しかないという点です。

年間110万円を超えた分に高い税率がかかるため、不動産のようにまとまった金額を一度に贈与すると、税額は一気に膨らみます(税率や計算方法は国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」を参照)。

具体的な金額感は次のとおりです(いずれも制度上の目安の一例で、実際の税額は評価額や適用条件により異なります)。

  • 2,500万円相当の不動産を贈与した場合、贈与税はおよそ800万円
  • 1,000万円の贈与でも、贈与税は約3割が目安

2,500万円の価値がある大切な実家をもらったのに、800万円の贈与税が払えず、その家を手放さざるを得なくなる——そんな本末転倒な事態も起こり得るのです。

それでも相続を待たず生前贈与を選ぶ理由

「そんなに税金が重いなら、相続まで待てばいい」と思われるかもしれません。相続税は基礎控除が大きく(3,600万円+600万円×相続人数)、多くのご家庭では税負担がずっと軽くなります。

それでも生前贈与を選ぶのは、次のような事情があるからです。

  • 親が亡くなってから、兄弟姉妹で意見が合わず遺産分割が進まない恐れがある
  • 親の土地に自分の家を建てたい(今すぐ名義を確保したい)
  • 親が施設に入り、実家が空き家になる

実際に扱った事例では、兄が親の土地に家を建てたものの、相続で土地を弟が取得し、のちに兄弟仲が悪化して「建物を壊して出ていけ」と言われたケースもありました。今すぐ名義を自分に確保しておきたいという切実な事情があるのです。なお、親が亡くなったあとの相続登記は2024年4月から義務化されており、この点も名義変更を考えるうえで押さえておきたいポイントです。

高い税金を払ってでも生前贈与にする必要がある場合、いかに贈与税を抑えるかが重要になります。次の章で、そのための制度を見ていきましょう。

贈与税を大幅に抑える2つの制度と使い分け

贈与税を抑える柱になるのが、「暦年課税」と「相続時精算課税制度」の2つです。それぞれの特徴と、どう使い分けるかを解説します。

1. 暦年課税(年110万円まで非課税)

暦年課税は、年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからない制度です。これをコツコツ積み重ねていく方法です。

  • 110万円×10年=1,100万円を無税で移せる(一例)
  • 子や孫など複数の人へ分けて贈与すれば、1年あたりの非課税枠はさらに広がる

時間をかけられる場合に有効な方法です。ただし、不動産は110万円ずつ小分けにして持分を移すことになり、そのたびに登記費用がかかる点には注意が必要です。

2. 相続時精算課税制度(2,500万円まで贈与税ゼロ)

相続時精算課税制度は、原則60歳以上の親などから18歳以上の子や孫への贈与について、累計2,500万円までは贈与税がかからない特例制度です(超えた分は一律20%)。冒頭の800万円課税の事例も、この特例を申告していれば贈与税はゼロでした。

大切なのは、この制度は申告して初めて適用されるという点です。知らずに申告しないまま名義を移すと、高額な贈与税を請求されることになります。制度の要件は国税庁「相続時精算課税の選択」で確認できます。

ただし名前のとおり、贈与した財産は最終的に相続のときに相続財産へ加算して精算されます。「その場は非課税でも、相続時にまとめて計算される」制度である点は理解しておく必要があります。

どちらを選ぶ?使い分けの考え方

2つの制度は、ざっくり次のように考えると整理しやすくなります(あくまで判断の目安であり、最終的にはシミュレーションが必要です)。

  • 時間をかけて少しずつ移せる→暦年課税で毎年コツコツ
  • 実家などまとまった不動産を今すぐ移したい→相続時精算課税で2,500万円枠を活用

2023年の改正で両制度の使い勝手も見直されており、どちらが有利かはご家庭の財産状況・家族構成・移したい時期によって変わります。判断を誤ると数百万円単位で結果が変わるため、資産税に詳しい税理士のシミュレーションを受けたうえで選ぶことを強くお勧めします。制度の適用可否や具体的な税額は、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。

土地の生前贈与で気をつけたい固有の論点

建物付きの実家だけでなく、土地単独を生前贈与するご相談も多くあります。土地には、建物にはない固有の注意点があります。

農地は勝手に名義を移せない

贈与する土地が農地(田・畑)の場合、農地法にもとづき原則として農業委員会の許可(または届出)が必要です。許可がないと登記そのものができないため、通常の宅地よりも手続きが一段複雑になります。沖縄でも、相続や贈与のご相談で「実は畑が含まれていた」というケースは珍しくありません。

共有持分の贈与は権利関係が複雑になりやすい

土地を兄弟などで共有している場合、その持分だけを子へ贈与することもできます。ただし共有者が増えるほど、将来その土地を売却・活用しようとしたときに全員の合意が必要になり、権利関係が動かしにくくなります。目先の名義だけでなく、その先の使い道まで見据えて判断することが大切です。

借地・底地は地主や借地人との関係に注意

借地の上に建物が建っているケースや、逆に人に貸している土地(底地)を贈与するケースでは、地主や借地人との関係、契約の承継が絡みます。名義変更の前に、こうした権利関係の確認が欠かせません。沖縄には軍用地をはじめ独特の土地事情もあり、贈与の前提として権利関係の棚卸しが必要になることがあります。

当事務所の解決事例|「時効取得」での名義変更が高額課税につながりかけたケース

ご自身が所有していると認識している土地の登記名義がお姉様になっており、「もともと自分の土地なので、売買ではなく時効取得で名義を変えたい」というご相談がありました。時効取得という登記原因は確かに存在しますが、税務上は「一時所得」として扱われ、提携税理士に確認したところ、想定よりかなり高額な税金が発生することが判明しました。

そのため今回は時効取得での登記は控え、実体に即して「錯誤」を理由に登記を是正する方法をご案内しました。お客様からは「何も知らずに進めていたら高額の税金を払うことになっていた。相談してよかった」とのお言葉をいただいています。名義変更は登記手続きだけでなく税金面の検討が不可欠です。贈与税・所得税が絡むケースでは必ず税理士と連携して進めましょう。

当事務所へのご相談から

先日も「施設に入る前に実家を子どもに」というご相談があり、贈与か相続時精算課税制度かで迷われていたため、提携の税理士も交えて一緒に整理しました。

よくある質問

親から子への名義変更は、生前贈与と相続のどちらが得ですか?

税金だけで比べると、基礎控除が大きい相続の方が有利になるのが一般的です。生前贈与は登録免許税が相続の5倍(2%対0.4%)で、不動産取得税もかかります。それでも、今すぐ名義を確保したい・将来の遺産分割トラブルを避けたいといった事情があれば、生前贈与に相応の意味があります。どちらが適するかは、ご家庭の状況次第です。

家の名義変更に、親から子で費用はいくらかかりますか?

生前贈与の場合、主に登録免許税(評価額の2%)+不動産取得税+司法書士報酬がかかり、これに贈与税が加わります。例えば評価額1,000万円なら登録免許税だけで20万円です。贈与税は制度の活用で大きく変わるため、総額は個別の試算が必要です。具体的な費用感は上のセクションと関連記事をご覧ください。

生前贈与にした方がよいのはどんなケースですか?

「親の土地に今すぐ家を建てたい」「相続で兄弟と揉めそうなので今のうちに名義を固めたい」「親が施設に入り実家が空き家になる」といったケースでは、税負担が重くても生前贈与を選ぶ意味があります。相続時精算課税などの制度で税額を抑えられる場合も多いため、まずは試算してみることをお勧めします。

贈与税の申告は自分でできますか?

暦年課税で年110万円以下なら申告は不要です。それを超える場合や相続時精算課税を使う場合は申告が必要で、特に相続時精算課税は申告しないと適用されません。不動産は評価や特例の判断が難しいため、申告漏れや制度の適用漏れを防ぐ意味でも、税理士へのご相談が安心です。詳しくは所轄の税務署でもご確認いただけます。

まとめ

親から子への不動産の名義変更について、要点を整理します。

POINT
  • 名義変更の方法は3つ:生前贈与・相続・売買。税金の種類も金額も変わる
  • 生前贈与の費用:登録免許税(評価額の2%)+不動産取得税+司法書士報酬。相続より割高になりやすい
  • 最大の注意点は贈与税:基礎控除は年110万円のみ。2,500万円の不動産で約800万円という実例も
  • 暦年課税と相続時精算課税を使い分ける:申告して初めて使える制度もある。誤ると数百万円の差
  • 土地は固有の論点に注意:農地・共有持分・借地は手続きや権利関係が複雑になりやすい

不動産の名義変更は、「法律的に問題ない」ことと「税金がかからない」ことが別物です。善意で親の実家を引き継いだのに高額な贈与税を請求される——そうした事態を避けるには、名義を移す前の段階で、費用と税金を見通しておくことが欠かせません。手続きの詳しい費用比較は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

レスター司法書士法人では、窓口を一つにしてワンストップで対応しております。「どの方法で名義を移すのがよいか」「贈与税はいくらになるのか」といったご不安について、資産税に詳しい税理士とも連携しながら、ご家庭の状況に合わせて最適な進め方をご提案いたします。初回のご相談は無料で承っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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