成年後見制度とは?わかりやすく全体像と3つの類型・家族がなれるかを司法書士が解説

成年後見制度をわかりやすく

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「親が認知症になって、銀行の窓口で預金を下ろせなくなった」「実家を売りたいのに、名義人である母が施設に入っていて手続きが進まない」——このようなご相談をいただくと、私たちは必ず成年後見制度のご説明をします。

ところが、いざ調べてみると「法定後見」「任意後見」「後見・保佐・補助」といった聞き慣れない言葉が並び、そこで手が止まってしまう方がとても多いのです。制度の全体像がつかめないまま、「なんだか大変そうだ」という印象だけが残ってしまう。これは非常にもったいないことだと感じています。

成年後見制度は、正しく理解すればご家族の窮地を救う制度です。一方で、一度始めると原則として途中でやめられないという、慎重に考えるべき側面も確かにあります。良い面だけを並べても、悪い面だけを強調しても、判断の役には立ちません。

本日は、成年後見制度の全体像を、専門用語をできるだけ噛み砕きながらわかりやすく整理いたします。制度の種類、3つの類型、後見人にできること・できないこと、利用までの流れ、ご家族が後見人になれるのか、そして2026年6月に成立した改正法まで、順を追って解説してまいります。

なお、税額の計算や具体的な節税手法は税理士・税務署の領域、ご親族間の紛争解決は弁護士の領域となります。本記事では制度の仕組みと手続きの部分を中心にお伝えいたします。

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目次

成年後見制度とは?わかりやすく言うと「判断する力を法律で補う制度」

結論から申し上げます。成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって物事を判断する力(判断能力)が不十分になった方について、本人に代わって財産を管理し、契約などの法律行為を行う人を法律上つける制度です。

厚生労働省の「成年後見はやわかり」では、成年後見制度は「知的障害・精神障害・認知症などによってひとりで決めることが心配な人の思いを地域みんなで分かち合い、いろいろな契約や手続をする際にお手伝いする制度」と説明されています(厚生労働省|成年後見はやわかり)。

なぜ必要になるのか|「本人にしかできない手続き」で止まるから

日本の法律では、契約や財産の処分は本人の意思にもとづいて行うのが大原則です。家族であっても、勝手に本人の財産を動かすことはできません。

そのため、本人の判断能力が低下すると、次のような場面で手続きが完全に止まってしまいます。

  • 金融機関が口座を凍結し、預金の引き出しや解約ができない
  • 本人名義の自宅や土地を売却できず、介護費用が捻出できない
  • 介護施設の入所契約が結べない
  • 相続が発生したのに、相続人の一人が認知症で遺産分割協議ができない
  • 訪問販売などで結んでしまった不利な契約を取り消せない

これは実感とも一致しています。最高裁判所事務総局家庭局の「成年後見関係事件の概況」(令和7年1月〜12月)によれば、申立ての動機として最も多いのは預貯金等の管理・解約で全体の約93.4%、次いで身上保護が約74.2%、不動産の処分が約36.3%、相続手続が約25.6%となっています(裁判所|成年後見関係事件の概況)。

つまり多くのご家庭が、お金が動かせなくなって初めてこの制度にたどり着いているということです。

制度の本質は「代わりにやる力」と「なかったことにする力」の2つ

成年後見制度を一言でつかむなら、後見人等に与えられる次の2つの力を押さえるのが近道です。

  1. 代理権(代わりにやる力):本人に代わって預金を管理する、施設と契約する、不動産を売却する(一定の場合は家庭裁判所の許可が必要)といった行為ができます
  2. 同意権・取消権(なかったことにする力):本人が不利な契約を結んでしまったときに、後からその契約を取り消すことができます

この2つの力が、どの範囲でどれだけ与えられるかによって、制度の使い勝手が変わります。次章以降で見ていく「法定後見と任意後見」「後見・保佐・補助」という分類も、突き詰めればすべてこの2つの力の配り方の違いだとお考えください。ここさえ押さえておけば、制度の説明は格段に読みやすくなります。

成年後見制度は大きく2種類|法定後見と任意後見の違い

成年後見制度は、まず大きく法定後見任意後見の2つに分かれます。分かれ目はシンプルで、判断能力が低下した「後」に始めるか、低下する「前」に備えておくかです。

項目法定後見任意後見
使うタイミング判断能力が低下した後判断能力があるうちに準備
誰が支援者を決めるか家庭裁判所が選任する本人が自分で選んで契約する
支援の内容法律で定められた範囲契約で決めた範囲
始まり方家庭裁判所への申立て・審判公正証書で契約→判断能力低下後に任意後見監督人の選任を申立て
取消権あり(類型により範囲が異なる)原則なし
監督家庭裁判所(監督人がつく場合も)任意後見監督人が必ずつく

法定後見|判断能力が低下した後に、家庭裁判所が支援者を決める

すでに判断能力が低下している場合に使うのが法定後見です。ご家族などが家庭裁判所に申立てを行い、裁判所が本人の状態を調べたうえで、成年後見人・保佐人・補助人を選任します。

ここで大切なのは、誰を選ぶかを決めるのは家庭裁判所であるという点です。申立ての際に「長男を候補者にしたい」と希望を出すことはできますが、そのとおりに選ばれるとは限りません。この点は後ほど詳しく触れます。

任意後見|元気なうちに、自分で支援者を選んでおく

判断能力があるうちに、「将来この人に任せたい」という相手と契約を結んでおくのが任意後見です。誰に、何を、どこまで任せるかを自分で決められるのが最大の利点で、法定後見にはない自由度があります。

任意後見契約は必ず公正証書で作成する必要があります。日本公証人連合会によれば、任意後見契約公正証書の作成にかかる公証役場の手数料は1契約につき1万3,000円(印刷が3枚を超える場合は1枚ごとに300円加算)、これに法務局へ納める収入印紙代2,600円、登記嘱託手数料1,600円、書留郵便料などが加わります(日本公証人連合会|任意後見契約公正証書を作成する費用)。

ただし、契約を結んだだけでは効力は生じません。実際に判断能力が低下した段階で家庭裁判所に申立てを行い、任意後見監督人が選任されて初めてスタートします。この監督人には報酬が発生する点も、あらかじめ知っておいていただきたいところです。

なお、任意後見は利用者数がまだ多くありません。前掲の「成年後見関係事件の概況」(令和7年1月〜12月)では、成年後見制度の利用者総数25万9,901人のうち、任意後見の利用者は2,833人にとどまっています。「備えておく」という発想が、まだ十分に広がっていないのが現状です。

法定後見の3類型|後見・保佐・補助をわかりやすく整理

法定後見は、本人の判断能力の程度に応じてさらに後見・保佐・補助の3つに分かれます。裁判所の説明では、それぞれ「判断能力が欠けているのが通常の状態の方」「判断能力が著しく不十分な方」「判断能力が不十分な方」が対象とされています(裁判所|成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ)。

言葉だけでは区別しにくいので、支援の強さの順に「後見がいちばん手厚く、保佐、補助の順に軽くなる」と覚えていただくと整理しやすくなります。

類型本人の状態の目安支援する人代理権取消しできる範囲
後見判断能力が欠けているのが通常の状態成年後見人財産に関する法律行為全般日用品の購入など日常生活に関する行為を除き、原則として取消し可能
保佐判断能力が著しく不十分保佐人申立てにより、家庭裁判所が定めた特定の行為(本人の同意が必要)借金・不動産の売買・相続の承認や放棄など、法律が定める重要な行為
補助判断能力が不十分補助人申立てにより、家庭裁判所が定めた特定の行為(本人の同意が必要)申立ての範囲内で家庭裁判所が定めた行為

後見|日常的な買い物も含めて判断が難しい状態

重度の認知症などにより、ご自分の財産をほとんど管理できない状態が想定されています。成年後見人には財産に関する広い代理権が与えられ、本人が結んだ契約も原則として取り消すことができます。ただし、スーパーでの買い物のような日常生活に関する行為は取消しの対象外です。本人の生活を過度に縛らないための配慮です。

保佐|重要な契約に「待った」をかけられる状態

日常の買い物はできるものの、不動産の売買や借金といった重要な取引は難しい、という段階です。保佐人には、法律が定める重要な行為について同意権と取消権が与えられます。代理権をつけたい場合は、その範囲を申立てで特定し、本人の同意を得たうえで家庭裁判所が定めます。

補助|必要なところだけ、部分的に支える状態

3類型のなかで最も支援が軽く、本人の自己決定を最大限に尊重する仕組みです。開始そのものに本人の同意が必要で、支援の範囲も「この行為だけ」とオーダーメイドで設計します。後述する2026年の改正法では、この補助に制度を一元化する方向が示されており、今後の中心となる考え方です。

実際には「後見」が約7割を占めています

制度上は3類型が用意されていますが、実際の利用は後見に大きく偏っています。前掲の「成年後見関係事件の概況」(令和7年1月〜12月)における申立件数は次のとおりです。

申立件数の内訳(令和7年1月〜12月・全国)
  • 合計:43,159件(前年比 約3.2%増)
  • 後見開始:29,233件(全体の約68%)
  • 保佐開始:9,743件
  • 補助開始:3,302件
  • 任意後見監督人選任:881件

判断能力が大きく低下してから、いわば駆け込みで申し立てるケースが多数派だということが、この数字から読み取れます。もっと早い段階で保佐や補助、あるいは任意後見を検討できていれば、選択肢はずっと広かったはずです。

成年後見人にできること・できないこと

ここは誤解が非常に多いところです。「後見人がつけば何でも代わりにやってもらえる」と思われがちですが、実際にはできないことがはっきりと決まっています。

できること|財産管理と身上保護

  • 財産管理:預貯金の管理・入出金、年金や賃料の受け取り、税金や施設費の支払い、必要に応じた不動産の売却(居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要)
  • 身上保護(身上監護):介護サービスや施設入所の契約、医療機関との契約、生活状況の確認・見守り
  • 本人が結んだ不利な契約の取消し:訪問販売や不要な高額商品の購入などへの対応
  • 相続手続きへの参加:本人が相続人である場合の遺産分割協議への関与

できないこと|ここを知らないと期待外れになります

  • 医療行為への同意:手術や延命治療に同意する権限は、後見人にはないと解されています
  • 身元保証人・身元引受人になること:後見人の立場と利益が衝突しうるため、原則として引き受けません
  • 実際の介護や家事:制度が担うのは契約や手続きであって、介護そのものではありません
  • 本人のためにならない財産の処分:家族への生前贈与や、相続税を軽くする目的での資産の組み替えなどは、本人の財産を減らす行為として原則できません
  • 一身専属的な行為:遺言の作成、婚姻・離婚、養子縁組といった、本人にしかできない行為の代理

特にご注意いただきたいのが相続税対策ができなくなるという点です。成年後見制度の目的はあくまで本人の財産を守ることにあり、次の世代のための節税は目的に含まれません。生前贈与や不動産の組み替えといった対策を考えているのであれば、判断能力があるうちに動く必要があります。なお、税額の計算や具体的な節税手法については税理士または税務署へご確認ください。

成年後見制度を利用するまでの流れ(法定後見の場合)

手続きの全体像を、5つのステップで整理します。

  1. 相談・準備:市区町村の窓口、地域包括支援センター、社会福祉協議会、中核機関、または司法書士などの専門職に相談します。あわせて医師に診断書を作成してもらい、福祉関係者に本人情報シートの作成を依頼します
  2. 書類の収集と申立書の作成:戸籍謄本、住民票、財産目録、収支予定表、登記されていないことの証明書などを揃えます
  3. 家庭裁判所へ申立て:申立先は本人の住所地を管轄する家庭裁判所です
  4. 調査・面談・(必要なら)鑑定:裁判所の調査官が申立人や本人と面談します。本人の判断能力について医師の鑑定が行われることもあります
  5. 審判・後見開始:後見人等が選任され、審判が確定すると法務局に登記されます。選任された後見人等は原則として1か月以内に財産目録などを裁判所に提出し、その後は定期的に報告を続けます

どのくらいの期間がかかるのか

前掲の「成年後見関係事件の概況」(令和7年1月〜12月)によれば、終局した事件のうち2か月以内に終わったものが約71.1%、4か月以内が約93.8%でした。ただしこれは申立てをしてからの期間です。書類集めや診断書の取得に数か月かかることも珍しくありませんので、「相談を始めてから実際に動けるまで半年程度」を見込んでおくと、計画が立てやすくなります。

費用の全体像(法定費用)

後見開始の申立てにかかる費用として、裁判所は次の金額を示しています(裁判所|後見開始の申立て)。

  • 申立手数料:800円分の収入印紙
  • 登記手数料:2,600円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手:金額は裁判所ごとに異なるため、申立先で確認が必要です
  • 鑑定費用:鑑定が必要と判断された場合、申立人が負担することがあります

見落とされがちなのは、本当の負担は開始後にやってくるということです。専門職が後見人になった場合の報酬は家庭裁判所が決定し、制度が続く限り毎年発生します。申立時の実費と開始後の報酬を分けて整理した内容は、成年後見の費用はいくら?申立時の実費と毎月の報酬で詳しく解説しておりますので、資金計画を立てる際にあわせてご覧ください。

家族が成年後見人になれるのか|「なれる」と「選ばれる」は違います

ご相談のなかで最も多いご質問が、これです。

結論を申し上げると、ご家族が成年後見人になること自体は可能です。特別な資格は不要で、未成年者や破産者、本人に対して訴訟をした人などの欠格事由に当たらなければ、法律上の資格は満たしています。

問題は、候補者として名前を挙げても、そのとおりに選ばれるとは限らないという点です。前掲の「成年後見関係事件の概況」(令和7年1月〜12月)では、成年後見人等と本人との関係について次のような結果が出ています。

  • 親族(配偶者・親・子・兄弟姉妹・その他親族)が選任されたもの:全体の約16.4%(前年は約17.1%)
  • 親族以外が選任されたもの:全体の約83.6%
  • 親族以外の内訳は、司法書士が11,966件と最も多く、次いで弁護士8,903件、社会福祉士7,280件

つまり、実際に選任されているのは8割以上が専門職などの第三者です。財産の額が大きい、親族間で意見が割れている、財産の状況が不透明といった事情があると、専門職が選ばれやすくなる傾向があります。

「家族がなるつもりだったのに、知らない専門家が選ばれて報酬が発生することになった」というのは、後から不満につながりやすいポイントです。事前に見通しを持っておくことが何より大切ですので、条件や準備のポイントは成年後見人になれる人とは?家族が選ばれるための条件とポイントで詳しくご確認ください。

【正直な注意点】一度始めると、原則として途中でやめられません

ここが、この記事で最もお伝えしたい部分です。

現行の制度では、「実家を売る」という当初の目的が達成されても、それだけでは制度は終わりません。本人の判断能力が回復するか、本人がお亡くなりになるまで続くのが原則です。

始める前に理解しておきたい5つのこと
  • 原則として途中でやめられない:目的を達成しても継続します
  • 報酬が続く:専門職が後見人になった場合、家庭裁判所が定める報酬が毎年発生します
  • 希望どおりの人が選ばれるとは限らない:選任するのは家庭裁判所です
  • 財産の使い道が制限される:本人のための支出が原則で、家族への援助や生前贈与、相続税対策は基本的にできません
  • 申立ては自由に取り下げられない:裁判所も、申立て後は「家庭裁判所の許可を得なければ取下げできない」と案内しています

誤解のないように申し添えますが、これらは制度の欠陥というより本人の財産を守るという目的から導かれる当然の帰結です。自由に始めたりやめたりできる制度であれば、本人の財産は容易に狙われてしまいます。

したがって考えるべきは、「成年後見は良いか悪いか」ではなく、「今のご家庭の状況で、他に手段が残っているかどうか」です。まだ判断能力がしっかりしている段階であれば、任意後見や家族信託、遺言といった選択肢を組み合わせて設計できます。判断能力が低下してしまった後は、法定後見以外の道はほぼ残りません。

制度の使い分けについては、家族信託は必要ない?不要なケース6つと後悔しやすい失敗類型で遺言・成年後見・家族信託の比較表を載せていますので、判断材料としてお役立てください。

2026年6月、成年後見制度の改正法が成立しました

ここまで説明してきた「一度始めるとやめられない」という点は、かねてから制度の課題として指摘されてきました。そして2026年6月17日、この課題に対応する改正法が国会で成立しました

法務省の発表によれば、「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)および関係法律の整備等に関する法律(令和8年法律第46号)が令和8年6月17日に成立し、同月24日に公布されました(法務省|「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について)。

改正の柱|後見・保佐を廃止して「補助」に一元化

法務省は改正の内容として、「後見及び保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化して本人にとって必要な範囲でその利用を可能とすること」を挙げています。

本記事の3類型の章で、補助は「必要なところだけ部分的に支える、最も本人の自己決定を尊重する類型」だとご説明しました。改正法は、その考え方を制度全体の基本に据えるものだとご理解いただくとわかりやすいかと思います。あわせて、遺言制度についても電子データ等で作成し法務局で保管する「保管証書遺言」の創設が盛り込まれています。

施行はこれから|今申し立てる方は現行制度で進みます

ここで最も注意していただきたいのが、成立・公布と施行は別だということです。

法務省の資料によれば、成年後見制度の見直しに関する部分の施行期日は「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。公布日が2026年6月24日ですので、遅くとも2028年内には施行される見込みですが、具体的な日付はこれから政令で定められます。

したがって、現時点で申立てを行う場合は、これまでどおり現行の制度(後見・保佐・補助の3類型)で手続きが進みます。「改正されたからもうやめられる」というわけではありません。

今まさに預金凍結や実家の売却で困っておられる方は、施行を待たずに現行制度での対応をご検討ください。一方、まだ時間に余裕のあるご家庭であれば、施行後の運用を見据えて任意後見や家族信託とあわせて設計するという判断もありえます。

改正の中身と「今申立てを迷っている場合どうすべきか」は「成年後見制度の改正で何が変わる?いつから施行かを解説した記事」で詳しく解説しています。

沖縄で成年後見を利用する場合|那覇家庭裁判所と地域の実情

最後に、沖縄で申立てをお考えの方に向けた実務的な情報をお伝えします。

申立先は本人の住所地を管轄する家庭裁判所

沖縄県内の家庭裁判所は、那覇市の那覇家庭裁判所(本庁)のほか、沖縄支部・名護支部・平良支部・石垣支部が置かれています。申立先はご本人の住所地を管轄する家庭裁判所ですので、たとえば宮古島にお住まいの親御様であれば平良支部、石垣島であれば石垣支部が窓口になります。

申立ての書式や記載例、後見人に選任された後の報告書類は、那覇家庭裁判所のサイトからダウンロードできます(那覇家庭裁判所|成年後見制度(後見・保佐・補助))。連絡用の郵便切手の額は裁判所ごとに異なりますので、申立先に必ずご確認ください。

沖縄ならではの事情|離島・県外の子ども・軍用地

沖縄でのご相談を重ねるなかで、繰り返し直面する事情がいくつかあります。

  • 離島と本島の距離:申立てや面談のたびに船や飛行機での移動が必要になるご家庭があります。書類の不備で往復が増えないよう、事前準備を丁寧に行うことが本島以上に重要になります
  • お子様が県外・海外にお住まいのケース:進学や就職で本土へ出られたご子息が候補者となる場合、日常的な財産管理や裁判所への報告をどう回すかが現実的な論点になります。距離だけを理由に候補者から外れるわけではありませんが、体制の説明は求められます
  • 軍用地や共有名義の土地:沖縄では軍用地料が本人の重要な収入源になっているご家庭があります。名義人の判断能力が低下すると、契約更新や賃料の受け取りに支障が出ることがあり、後見人の関与が必要になる場面があります
  • トートーメー(位牌)の承継と実家:ご先祖の位牌を誰が継ぐかという話し合いと、実家の名義や介護費用の問題が同時に持ち上がることがあります。本人の判断能力の問題が絡むと、話し合いだけでは前に進まなくなります

なお、ご親族の間で対立が生じており紛争性が高いケースについては、弁護士へのご相談が適切な場面もございます。当事務所では状況を伺ったうえで、必要に応じて適切な専門家をご案内しております。

誰に相談すべきか迷っている方は「成年後見は誰に相談すべき?司法書士・弁護士・行政書士の違いを解説した記事」もご覧ください。

よくある質問

成年後見制度とは、簡単に言うとどんな制度ですか?

認知症などで判断する力が不十分になった方について、本人に代わって財産を管理し、契約などを行う人を法律上つける制度です。ポイントは「代わりにやる力(代理権)」と「不利な契約をなかったことにする力(取消権)」の2つ。

判断能力が低下した後に家庭裁判所が支援者を決める「法定後見」と、元気なうちに自分で支援者を選んで契約しておく「任意後見」の2種類があり、法定後見はさらに支援の強さで後見・保佐・補助の3つに分かれる、という構造で捉えていただくと整理しやすくなります。

家族が反対していても申立てはできますか?

申立てをすることができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長などと法律で定められており、他のご親族全員の同意が要件になっているわけではありません。したがって、ご家族の一部が反対していても申立て自体は可能です。

ただし、家庭裁判所は申立ての際に他のご親族の意向も確認するのが一般的です。親族間で意見が割れている事案では、中立性の確保という観点から専門職が後見人に選ばれやすくなる傾向があります。できる限り事前に話し合いの場を持たれることをお勧めいたします。

認知症の診断がないと利用できませんか?

診断名そのものが要件なのではなく、精神上の障害によって判断能力が不十分な状態にあるかどうかが判断の基準です。認知症のほか、知的障害や精神障害、高次脳機能障害なども対象になり得ます。

実務上は、医師が作成する診断書と、福祉関係者が作成する本人情報シートをもとに家庭裁判所が判断します。必要に応じて鑑定が行われることもあります。個別の判断は事案によって異なりますので、まずは主治医とご相談のうえ、診断書の作成をご依頼ください。

申立ての費用は誰が負担するのですか?

申立てにかかる費用は、原則として申立てをした方が負担するのが基本です。ただし、事情によっては家庭裁判所の判断で本人の負担とされる場合もあります。

また、費用の負担が難しいご家庭のために、市区町村が申立費用や後見人報酬を助成する「成年後見制度利用支援事業」を設けている場合があります。制度の名称や要件は自治体によって異なりますので、お住まいの市町村の高齢福祉担当窓口や地域包括支援センターにご確認ください。

まず誰に相談すればよいですか?

ご本人の生活面が心配な段階であれば、地域包括支援センターや市区町村の窓口、社会福祉協議会が適しています。一方、預金が凍結された、実家を売る必要があるなど財産や手続きが具体的に動かなくなっている場合は、司法書士などの専門職にご相談いただくとスムーズです。申立書類の作成をお手伝いできるほか、成年後見以外の選択肢が残っているかどうかも含めて整理できます。

まとめ

成年後見制度の全体像について解説してまいりました。要点を整理いたします。

  • 成年後見制度とは、判断能力が不十分になった方に代わって財産管理や契約を行う人を法律上つける制度。本質は「代理権」と「取消権」の2つの力
  • 大きく法定後見と任意後見の2種類。判断能力が低下した後なら法定後見、元気なうちに備えるなら任意後見
  • 法定後見は後見・保佐・補助の3類型。支援の強さが異なり、実際の申立ての約7割は後見
  • 後見人にできないこともある。医療同意、身元保証、介護そのもの、家族への贈与や相続税対策は原則できない
  • 家族が後見人になることは可能だが、実際に選任されているのは約16.4%。選ぶのは家庭裁判所
  • 一度始めると原則として途中でやめられない。だからこそ、判断能力があるうちの選択肢が重要
  • 2026年6月17日に改正法が成立し、同月24日に公布。後見・保佐を廃止して補助に一元化する方向だが、施行は公布から2年6月以内の政令で定める日。現時点の申立ては現行制度で進む

成年後見制度は、知れば知るほど「もっと早く知っていれば」と感じる制度です。判断能力が低下してしまった後では、選べる道はどうしても限られます。逆に言えば、今この記事をお読みいただいている時点で、まだ間に合う可能性は十分にあるということです。

レスター司法書士法人では、窓口を一つにしてワンストップで対応しております。「うちの場合はどの制度が合うのか」「今から間に合うのか」といった段階のご相談でも構いません。初回のご相談は無料で承っておりますので、ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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