# 【銀行で戸籍の束は不要】相続で役立つ「法定相続情報証明制度」とは?手続きをスピードアップする方法
皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。
「親が亡くなって、銀行に手続きに行ったら、大量の書類を求められた」「戸籍を集めるだけで何ヶ月もかかってしまった」そんなお話を、相談にいらっしゃるお客様からよく伺います。相続の手続きというのは、精神的にも肉体的にもとても負担が大きいものですよね。
実は、その負担を大幅に軽減できる「魔法の紙」とも呼べる制度が存在します。正式には法定相続情報証明制度といいます。この制度を使えば、複数の銀行や各種機関への手続きを同時並行で進めることができ、従来であれば6週間かかっていた手続きが、わずか1日で動き出すこともあるほどです。
「でも、そもそも戸籍の収集がなぜあんなに大変なのかよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。この制度の便利さを正しく理解するためには、まず戸籍収集の大変さを知っておくことが重要です。
本日は、なぜ相続手続きに戸籍が必要なのか、その収集がなぜ大変なのか、そして「魔法の紙」である法定相続情報証明制度がどのように問題を解決してくれるのかについて、詳しく解説いたします。
なぜ相続に戸籍が必要なのか
相続手続きにおいて、なぜ戸籍の提出が求められるのか、意外と知らない方が多いのではないでしょうか。その理由は以下の2点です。
- 相続は法律上、自動的に発生するものだから
- 「相続人である」ことを客観的に証明する手段が戸籍しかないから
それぞれ解説します。
1. 相続は法律上、自動的に発生するものだから
親が亡くなったとき、子供が「何かの手続きをしよう」と思うかどうかに関係なく、相続(亡くなった方の財産や権利を引き継ぐこと)は自動的に発生します。これは民法(日本の財産・家族関係のルールを定めた法律)に定められているルールです。
「亡くなった方の財産を動かすには、まず『誰が相続人か』を明らかにしなければならない」——これが相続手続きの大原則です。
2. 「相続人である」ことを客観的に証明する手段が戸籍しかないから
たとえば、お父様が亡くなって銀行へ預金の手続きに行ったとします。窓口で「あなたはどちら様ですか?」と聞かれ、「息子です」と答えたとします。では、それをどうやって証明しますか?
- 「一緒に暮らしていた」→ 証拠になりません
- 「顔が似ているでしょう」→ 証拠になりません
- 「苗字が同じです」→ 同じ苗字の人はたくさんいます
- 「写真を見せる」→ 証明にはなりません
- 「DNA鑑定結果を持ってきた」→ 銀行では受け付けてもらえません
このように、「自分が相続人である」ことを証明するのは、実は非常に難しいのです。そこで活用されるのが戸籍制度です。日本の戸籍制度は非常に優れた仕組みで、海外(たとえばアメリカ)にはこのような制度はありません。戸籍を見ることで、親子関係や家族構成が明確に分かります。
戸籍収集がこれほど大変な理由
では、戸籍を揃えればいいだけでは?と思われるかもしれません。ところが、この戸籍集めがとても大変なのです。大変な理由は以下の3つです。
- 「出生から死亡まで」すべての戸籍を揃える必要があるから
- 戸籍の内容が読みにくく、繋がりが分かりにくいから
- 平日の役所での手続きに多大な時間がかかるから
順番に見ていきましょう。
1. 「出生から死亡まで」すべての戸籍を揃える必要があるから
銀行や法務局などに提出する戸籍は、「亡くなった方の出生から死亡まで」の全期間を網羅したものが必要です。つまり、お父様が80歳で亡くなった場合、80年分の戸籍をすべて集めなければなりません。
「そんなに枚数があるの?」と思われるかもしれませんが、実は意外と多いのです。
戸籍は法律の改正に伴い、約10年に1回書式が見直されています。縦書きから横書きへの変更もその一つです。80年間で8回以上書き換えられていると考えると、同じ場所に住み続けた方でも、少なくとも8枚以上の戸籍が存在します。さらに、結婚・離婚・転籍(本籍地の変更)などがあれば、その都度新しい戸籍が発生します。多い方では、戸籍の束がバインダー1冊分になることもあります。
また、亡くなった方の戸籍だけでなく、相続人となるお子様たちの戸籍も取得する必要があります。
2. 戸籍の内容が読みにくく、繋がりが分かりにくいから
戸籍は専門家でも読み解くのに時間がかかる書類です。一般の方が読んで内容を理解するのは、非常に難しいといえます。
複数の戸籍を「出生から死亡まで」つながるようにパズルのピースを組み合わせるように整理していく作業が必要で、「集めたつもりだったのに、まだ足りない戸籍があった」ということも珍しくありません。
3. 平日の役所での手続きに多大な時間がかかるから
戸籍は本籍地(本来の戸籍の所在地)の市区町村役場で取得します。住所と本籍地は異なる場合が多く、「沖縄に住んでいるけれど、本籍は北海道」というケースもよくあります。
現在は全国どこの市区町村でも取得できるようになりましたが、役所の窓口は平日しか開いていません。働いている方が休みを取って行っても、3時間待たされることもあります。一度では揃わず、3〜4回足を運ぶこともあり、法務局への申請も含めると、戸籍収集だけで1〜2ヶ月かかってしまうこともあります。
「魔法の紙」法定相続情報証明制度とは
このように大変な戸籍収集の手間を解決してくれる制度が、法定相続情報証明制度です。
この制度の仕組みはシンプルです。
- 戸籍を全部集める(この作業は必要)
- 集めた戸籍をもとに、法務局(不動産登記や法人登記を管轄する国の機関)に申請する
- 法務局が内容を確認し、「この方の相続人はこの方々です」と認証したA4サイズ1枚の証明書を交付してくれる
- この1枚を各機関に提出するだけで、相続人であることが証明できる
- 無料で取得できる
- 何枚でも交付してもらえる
- 銀行・法務局・税務署・証券会社・保険会社・年金機関などあらゆる場所で使える
- 複数の機関に同時並行で提出できる
従来の戸籍の束を使った手続きでは、A銀行での調査に2週間、B銀行でさらに2週間、C銀行でまた2週間……と合計6週間以上かかることがありました。それが、法定相続情報証明書を複数枚取得しておけば、A銀行・B銀行・C銀行に同時に提出して、並行して手続きを進めることができます。
- 従来の方法:各銀行が順番に戸籍を調査 → 6週間以上
- 魔法の紙を使った方法:各銀行に同時提出 → 大幅に短縮
戸籍収集が特に大変なケースとは
戸籍の収集が複雑になるケースとシンプルなケースがあります。特に大変になりやすいのは以下のような状況です。
- 複数回結婚されている方の場合:前の婚姻関係での子供も相続人となるため、さかのぼって調査する必要があります
- 子供がすでに亡くなっている場合:その子供の子(亡くなった方からみると孫)が相続人となるため、さらに戸籍が増えます
- 認知している子供がいる場合:法律上の子供として相続人に含まれます
このように相続人の確定が複雑になればなるほど、集めるべき戸籍も増え、専門家でないと見落としが生じる可能性があります。
法定相続情報証明書と遺産分割協議書の違い
ここで、大切な点を整理しておきます。
法定相続情報証明書は「誰が相続人か」を証明するものです。「誰が何を相続するか」を決めるものではありません。
相続手続きを進めるうえで、最終的には以下の3点が必要になります。
- 法定相続情報証明書:「相続人は誰か」を証明する書類(法務局が発行)
- 遺産分割協議書:「誰が何を相続するか」を相続人全員で話し合って決めた内容をまとめた書類
- 印鑑証明書:市区町村役場に届け出ている実印の証明書(遺産分割協議書に押印した印鑑が本物であることを証明するために必要)
手続きの流れとしては、まず「相続人を確定する」ことが最初のステップです。相続人が確定して初めて、遺産分割協議書を作成できます。法定相続情報証明書はこの「出発点」となる重要な書類です。
まとめ
本日の内容を整理いたします。
- 相続が発生すると、「自分が相続人である」ことを戸籍で証明する必要がある
- 戸籍は出生から死亡までの全期間分を集める必要があり、枚数が多く、読み解くのも難しい
- 平日のみ対応の役所での収集作業は、複数回の来訪が必要になることも多く、1〜2ヶ月かかるケースもある
- 法定相続情報証明書(魔法の紙)を使えば、1枚の証明書を複数の銀行・役所・税務署などに同時提出でき、手続きが大幅にスピードアップする
- 法定相続情報証明書は「相続人が誰か」を証明するものであり、「誰が何を相続するか」は別途、遺産分割協議書で決める必要がある
相続の手続きは、ただでさえ大切な方を亡くされた直後の大変な時期に進めなければなりません。「戸籍を集めるだけで何ヶ月もかかってしまった」という状況は、できれば避けたいものです。
「戸籍をどこで取ればいいか分からない」「法定相続情報証明書の申請を代わりにやってほしい」「相続人が何人いるのか整理したい」など、ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にレスター司法書士法人にご相談ください。
本記事の内容は、YouTube動画『【銀行で戸籍の束は不要】相続で役立つ「魔法の紙」とは?手続きをスピードアップする方法』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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