相続の専門家が解説|デジタル遺言・ハンコ廃止の法改正とは

# 【法改正】ハンコが廃止に!?新制度”デジタル遺言”を相続の専門家が解説

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「遺言書って、なんだか難しそう……」そう感じて、ずっと後回しにしていませんか?実は遺言書に対して、そのようなイメージを持つ方はとても多いのです。でも、その「なんとなく後回し」が、将来ご家族の大きな負担や、思わぬトラブルの種になってしまうことがあります。

さらに、遺言書を作ろうと決意しても、「全文を自分の手で書かないといけない」「ハンコが必要」「公証人役場に足を運ばなければならない」といったハードルが重なって、なかなか一歩を踏み出せない方も多かったのではないでしょうか。

ところが、近年の法改正によって、この状況が大きく変わりつつあります。デジタルで遺言書が作れるようになったり、ハンコが不要になったり、法務局での保管制度が整備されたりと、遺言書はぐっと身近なものになってきています。

本日は、なぜ遺言書を作るべきなのか、そして法改正によって何がどう変わったのかについて、わかりやすく解説いたします。遺言書をまだ作っていない方も、「そろそろ考えてみようかな」と思っていた方も、ぜひ最後までお読みください。

目次

なぜ遺言書が必要なのか

遺言書を作らないと、どうなるのでしょうか。「うちは家族仲がいいから大丈夫」と思われるかもしれません。でも、現実はそう単純ではないことが多いのです。遺言書が必要な理由は、大きく以下の3つです。

  1. 財産の分け方をめぐって家族が揉めやすいから
  2. 相続税や納税資金の問題があるから
  3. 手続きがスムーズに進まなくなるから

それぞれ解説します。

1. 財産の分け方をめぐって家族が揉めやすいから

「うちの家族は仲がいいから、話し合いで決められる」——そう思っていても、実際にお金を目の前にすると、意見が変わることがあります。

たとえば、預金が300万円あって兄弟3人で分けるとしましょう。「1人100万円ずつでいいよね」と事前に話していたとしても、いざ分割の場になると、「お父さんの介護で10万円立て替えてた」「施設の費用を一部払っていた」「実家の維持費を負担してきた」といった意見が次々と出てきて、「100万円」のはずが「70万円」「130万円」とごちゃごちゃしてくることがあります。

さらに難しいのが、配偶者の存在です。長男本人は「弟たちに譲ればいい」と思っていても、長男の奥さんが「あなたは長男なんだから多めにもらうべき」と強く主張するケースはよくあります。反対に、長女の旦那さんが後ろから「もっと権利を主張した方がいい」と促すこともあります。こうして、家族の背後にいる配偶者たちの意見が絡み合うことで、話し合いはどんどん複雑になっていくのです。

亡くなった方が生きている間は、その方の一言で収まっていたことも、いなくなればそれができません。 だからこそ、生前に遺言書という形でご自身の意思を残しておくことが、家族への大切な配慮になります。

2. 相続税や納税資金の問題があるから

財産の分け方によって、相続税の負担額が変わります。誰にどの財産を渡すかを計画的に決めておくことで、税金の負担を抑えられる可能性があります。

また、相続税は現金で支払うことが原則です。不動産や株式などの財産があっても、現金がなければ納税できません。相続税の申告・納付期限は亡くなってから10ヶ月以内と決められており、この短い期間に現金を用意しなければならないケースもあります。

「財産があるのだ」とわかっているなら、早めに納税資金の準備についても対策を検討しておくことをお勧めいたします。

3. 手続きがスムーズに進まなくなるから

遺言書がない場合、銀行で預金を引き出す際には、相続人全員が署名・押印した遺産分割協議書(相続人全員で話し合って財産の分け方を決めた書類)が必要になります。

兄弟が5人いて、1人が県外、1人が海外、1人が音信不通……となると、全員の署名・押印を集めるだけで大変な手間と時間がかかります。一方、遺言書があれば、「この財産はこの方に」と明示されているため、手続きが格段にスムーズになります。


遺言書制度はどう変わったのか

これまでの遺言書制度には、作りづらさという大きな問題がありました。特に、80歳を超えた方が長い文章を全て自筆で書くのは、体力的にも非常に大変です。こうした課題を解消するため、法律が時代に合わせて変わってきています。変更点は以下の3つです。

  1. デジタル遺言が可能になった
  2. ハンコ(印鑑)が不要になる
  3. 法務局での保管制度が整備・拡充される

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. デジタル遺言が可能になった

従来の自筆証書遺言(自分の手書きで作成する遺言書)は、財産目録以外の部分について全文を自分の手で書く必要がありました。パソコンで入力したものや、スマートフォンのメモ機能を使ったものは認められていませんでした。

ところが、現在はオンラインで遺言書を作成できる制度が運用されています。公証人役場に足を運ばなくても、Web上で手続きができるようになりました。 ただし、現時点では都市部の公証人役場を中心とした運用にとどまっており、まだ広く普及しているとは言えない状況です。今後の拡充に期待したいところです。

2. ハンコ(印鑑)が不要になる

日本では「大切な書類にはハンコを押す」という文化が長く続いてきました。遺言書も例外ではなく、署名のうえで印鑑を押すことが要件とされていました。

しかし今後は、署名さえあれば印鑑がなくても遺言書として有効になる法律が成立しています。ただし、この部分についてはまだ施行(実際に効力を持つ段階)には至っておらず、もうしばらく時間がかかる見込みです。施行後は、印鑑を用意する手間がなくなり、遺言書作成のハードルがさらに下がることになります。

3. 法務局での保管制度が整備・拡充される

自分で書いた遺言書は、紛失したり、誰かに改ざんされたりするリスクがあります。そこで、法務局(国の機関)に遺言書を預けて保管してもらえる制度が整備されています。

この制度のメリットとして、以下の点が挙げられます。

  • 遺言書の紛失・改ざんのリスクを防げる
  • 亡くなった際に法務局から相続人へ通知が届く
  • 検認(家庭裁判所で遺言書の存在と状態を確認する手続き)が不要になる
  • 財産目録部分はパソコンで作成できる
注意点
  • 法務局は遺言書を「預かる」だけで、内容のチェックは行いません
  • 内容に法律上の誤りがあっても、そのまま保管されます
  • 例えば「全財産を愛犬のポチに」と書いても受け付けられますが、法的効力はなく、結局は家族の話し合いに委ねられることになります

法的に有効な内容かどうかの確認まで望む場合は、公正証書遺言(公証人が関与して作成する遺言書)の活用や、司法書士・弁護士への相談をお勧めいたします。


お金以外にも書ける——「付言事項」という選択肢

遺言書というと「財産の分け方を書くもの」というイメージがありますよね。もちろんそれが中心ですが、実は「付言事項」(ふげんじこう)という形で、法的効力とは別のメッセージを残すこともできます。

付言事項とは、遺言書の末尾などに書き添える「家族へのメッセージ」です。法的拘束力はありませんが、大切な思いを伝える手段として、多くの方が活用されています。

たとえば、このようなメッセージが書かれることがあります。

  • 「長男よ、お前が生まれた時のことを今でも覚えている。小学校で怪我をして帰ってきた時のことも……」
  • 「お父さんの会社を継いでくれてありがとう。これからも頑張ってくれ」
  • 「お母さんのことを、最後までよろしく頼む」
  • 「長女へ。嫁いでからも家のことを気にかけてくれて、本当に嬉しかった」

親子の間で、喧嘩をしていた時期もあるかもしれません。疎遠になっていた時期もあったかもしれません。それでも、遺言書という形でそっとメッセージを残す——そんなお父様やお母様の姿を見るたびに、「親というのは、いつも大きな視点で家族を見守っているのだな」と感じます。

財産のことだけでなく、自分がどう生きて、家族にどんな思いがあったかを伝える手段としても、遺言書はとても意味のあるものです。


まとめ

  • 遺言書がないと、相続時に家族が揉めやすく、手続きにも時間・手間がかかる可能性があります
  • 法改正により、①デジタル遺言の運用開始、②ハンコ不要(施行待ち)、③法務局保管制度の拡充という3つの大きな変化が起きています
  • 法務局保管制度は便利ですが、内容の法的チェックは行われないため、専門家への相談を組み合わせることをお勧めいたします
  • 遺言書には財産の分け方だけでなく、「付言事項」として家族へのメッセージを残すこともできます
  • オンラインで遺言書の作成ができる時代になりましたので、「難しそう」と感じていた方もぜひ一歩踏み出してみてください

「ハンコは不要になっても、あなたの思いは必要です。」

遺言書の作成や相続についてご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にレスター司法書士法人にご相談ください。全国どこからでも、オンラインにてご対応いたします。

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本記事の内容は、YouTube動画『【法改正】ハンコが廃止に!?新制度”デジタル遺言”を相続の専門家が解説』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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