【相続】子どもがいない夫婦は遺言書を作るべき?相続人は誰になるのか司法書士が解説

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「子どもがいないから、相続は夫婦間で自然と引き継がれるだろう」と思っていませんか?

実は、子どもがいないご夫婦の相続には、思わぬ落とし穴があります。ご自身が気づかないうちに、遠い親戚に手続きの負担をかけてしまったり、先祖代々の財産が予想外の方向へ渡ってしまったりすることがあるのです。

「遺言書なんて、まだ早い」「うちは財産も少ないし大丈夫」と感じている方も多いかもしれません。

しかし、約20年にわたって北海道から沖縄まで相続の手続きに携わってきた経験から申し上げると、子どものいないご夫婦こそ、遺言書は必ず作っておくべきです。

なぜそう断言できるのか。それは、遺言書がないことで、ご本人が望まない形で相続が進んでしまった事例を数多く見てきたからです。

甥や姪に突然「おじさんの手続きをしてください」と連絡が届いたり、先祖代々守ってきた家や会社の権利が全く別の家系へ渡ってしまったり……。

こうした事態は、遺言書一枚で防げたケースがほとんどです。

本日は、子どものいないご夫婦の相続人が「法律上、誰になるのか」という基本から、遺言書がないことで実際に起きたトラブル事例、さらに知っておきたい遺留分(いりゅうぶん)のポイントまで、詳しく解説いたします。

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目次

子どもがいない場合、誰が相続人になるのか

まず前提として、相続人が誰になるかというルールを確認しておきましょう。このルールを知らないまま遺言書の話をしても、なぜ必要なのかがピンとこないと思いますので、ここをしっかり押さえてください。

相続人の範囲は、以下の順位で決まります。

  1. 配偶者(常に相続人)+第1順位:子ども
  2. 配偶者(常に相続人)+第2順位:親(子どもがいない場合)
  3. 配偶者(常に相続人)+第3順位:兄弟姉妹(子どもも親もいない場合)

それぞれ解説します。

子どもがいる場合との比較

子どもがいる場合、旦那さんが亡くなったとすると、相続人は奥さんと子どもです。財産の割合は奥さんが1/2、子どもが残りの1/2を分け合います。これは多くの方がイメージされている通りです。

子どもがいない場合の相続人

問題は、子どもがいない場合です。旦那さんが亡くなったとすると、まず奥さんが相続人になります。ここまでは同じですが、子どもがいないため、第2順位である親が相続人に加わります。

しかし、子どもがいないご夫婦の場合、親もすでに亡くなっていることが多いです。その場合は第3順位である兄弟姉妹が相続人になります。つまり、旦那さんの弟や妹が相続人になるわけです。

このとき、相続の割合は以下の通りです。

子どもがいない夫婦の相続割合(旦那が死亡・兄弟が存命の場合)
  • 奥さん:財産の3/4
  • 旦那さんの兄弟姉妹:財産の1/4

奥さんだけが相続するわけではないという点が、最大のポイントです。旦那さんの兄弟に1/4の権利が生じてしまうのです。

遺言書がないと、なぜ問題が起きるのか

子どもがいないご夫婦が遺言書を作っておくべき理由は以下の2つです。

  1. 予期せず遠い親族に手続きの負担がかかるから
  2. 自分が望まない相手に財産が渡ってしまうから

それぞれ、実際の事例をもとに解説します。

1. 予期せず遠い親族に手続きの負担がかかるから

実際に扱った事案をご紹介します。

先に奥さんが亡くなり、旦那さんが沖縄の石垣島で人生の最後を過ごしたいと移住し、その地で亡くなったケースです。子どもがおらず、奥さんもすでに他界していたため、相続人は旦那さんの兄弟となりました。

この兄弟のもとに突然連絡が入りました。「お兄さんが亡くなりましたので、手続きをお願いします」と。その手続きの内容は、決して簡単なものではありませんでした。

  • 住んでいたアパートの契約解除
  • 遺体に関する手続き
  • 遺品の整理
  • 通院・施設の支払い

これらすべてを、その方が一人で対応することになったのです。

さらに問題となるのは、兄弟にも子どもがいる場合です。兄弟が既に亡くなっていれば、その子ども、つまり甥や姪が相続人になります(これを代襲相続〔だいしゅうそうぞく〕といいます)。突然、「おじさんの手続きをしてください」という連絡が甥や姪のもとへ届くことになるわけです。

「相続を放棄すればいいのでは?」と思われるかもしれません。もちろん相続放棄(そうぞくほうき:相続人としての権利と義務を一切放棄する手続き)という選択肢はあります。しかし、放棄したとしても、諸手続きの一切から完全に解放されるわけではなく、精神的・時間的な負担はかかります。

ご本人にとっては悪気はないのです。「まさか甥や姪が自分の遺体や遺品の手続きをすることになるとは」と、思い至らなかっただけのことです。しかし、残された親族にとっては突然の負担になってしまいます。

遺言書を作成し、あらかじめ信頼できる親族や専門家に手続きをお願いしておけば、こうした混乱は防ぐことができます。専門家(司法書士など)に遺言書の中で依頼しておけば、亡くなった後の諸手続きをすべて任せることも可能です。

2. 自分が望まない相手に財産が渡ってしまうから

もう一つ、実際に扱った事例をご紹介します。

子どもがおらず、奥さんが先に亡くなった旦那さんのケースです。旦那さんには弟がいましたが、弟よりも弟の奥さん(義妹)に大変お世話になっており、食事の世話など日々の生活を支えてもらっていました。そのため、財産は義妹に渡したいというご希望でした。

しかし、法律上の相続人は弟です。遺言書がなければ、いくら義妹にお世話になっていても、財産は弟に渡ってしまいます。義妹は相続人ではないからです。

この方は遺言書を作成し、義妹に財産が渡るよう手続きを整えることができました。

さらに深刻だったのが、別の事例です。ある方が亡くなった際、遺言書がなかったために、先祖代々受け継いできた不動産や会社の権利の一部が、奥さんの兄弟へと渡ってしまいました。

「奥さんに渡るのはまだ理解できる。しかし、奥さんを通じて、奥さんの兄弟にまで先祖代々の財産が渡るのはどういうことか」という声が、ご親族から上がりました。法律が間違っているのではないかとさえ言われた、とても複雑な案件でした。

会社の株式が絡む場合はさらに注意が必要です。株式が相続されると、株主権(かぶぬしけん:株主として議決権などを行使できる権利)が移転します。経営権が全く別の家系へ渡り、役員が総入れ替えになる可能性すらあります。会社の経営権や株式をお持ちの方は、特に早急に対策を検討されることをお勧めいたします。

知っておくべき「遺留分」と「予備的遺言」

遺言書を作成するうえで、あわせて知っておいていただきたい重要なポイントが2つあります。

以下の2つです。

  1. 遺留分(いりゅうぶん)のルール
  2. 予備的遺言(よびてきいごん)の必要性

順番に見ていきましょう。

1. 遺留分(いりゅうぶん)のルール

遺留分とは、一定の相続人に対して法律が保証している「最低限もらえる権利」のことです。

たとえば、遺言書に「全財産を奥さんに」と書いたとしても、他の相続人が遺留分を持っていれば、その分を請求される可能性があります。

ここで大切なのが、兄弟姉妹には遺留分がないという点です。

遺留分が認められる相続人・認められない相続人
  • 遺留分あり:子ども(第1順位)、親(第2順位)
  • 遺留分なし:兄弟姉妹(第3順位)

子どもがいないご夫婦で親もすでに他界している場合、相続人となる兄弟姉妹には遺留分がありません。つまり、「全財産を奥さんに」という遺言書を作成すれば、旦那さんの兄弟から遺留分を請求されることはなく、遺言書の通りに相続を実現できるのです。

これは、子どもがいないご夫婦にとって大きなメリットです。遺言書の効力を最大限に発揮できる状況にあるといえます。

2. 予備的遺言(よびてきいごん)の必要性

遺言書を作成する際には、「もし先に奥さんが亡くなっていたら」という場合も想定しておくことが重要です。これを予備的遺言といいます。

遺言書に「全財産を奥さんに」と書いたとしても、奥さんが先に亡くなっていた場合、その遺言自体が無効になることがあります。そうなると、遺言書がない状態と同じことになってしまいます。

「奥さんが亡くなっていた場合には、〇〇に相続させる」という予備的な内容も遺言書に書いておくことで、どちらが先に亡くなっても、ご本人の希望通りの相続を実現できます。

奥さん側も同様です。「旦那さんに全財産を」という遺言書を奥さんも作成し、「もし旦那さんが先に亡くなっていた場合には〇〇に」という予備的な内容を盛り込んでおく。夫婦それぞれが遺言書を作成し、お互いに備えておくことが理想的です。

当事務所の解決事例|任意後見・死後事務委任・尊厳死宣言をセットで備えたケース

「今は元気だが、判断能力が低下したときのために備えておきたい。亡くなったあと親族に迷惑をかけたくない」というご相談で、任意後見契約・死後事務委任契約の締結と、尊厳死宣言の公正証書作成をお手伝いしました。

任意後見契約は、判断能力が低下したときに備えて、支援してもらう人と支援の内容をあらかじめ契約で決めておく制度です。死後事務委任契約は、亡くなったあとの葬儀・納骨・遺品整理などの事務をあらかじめ依頼しておく契約で、尊厳死宣言公正証書は、終末医療で意思表示ができなくなった場合に延命処置を望まない意思を残しておくものです。お子さまのいないご夫婦は、遺言書とあわせてこうした生前の備えを検討する価値があります。

【早見表】相続人パターン別の法定相続分

ここまでの内容を整理するために、子どもがいないご夫婦で配偶者の一方が亡くなった場合の、相続人の組み合わせごとの法定相続分(民法で定められた相続割合)を一覧表にまとめました。ご自身のご家族構成と照らし合わせてご確認ください。

相続人の組み合わせ配偶者の相続分血族相続人の相続分
配偶者+親(第2順位)3分の2親:3分の1
配偶者+兄弟姉妹(第3順位)4分の3兄弟姉妹:4分の1
配偶者+甥・姪(代襲相続)4分の3甥・姪:4分の1を人数で等分
配偶者のみ(親・兄弟姉妹・甥姪がいない)全部

ポイントは3つあります。まず、親御様が存命の場合は配偶者3分の2・親3分の1となり、兄弟姉妹が相続人になる場合よりも血族側の取り分が大きくなります。次に、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子ども(甥・姪)が代襲相続により4分の1を人数で分け合います。なお、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りで、甥・姪の子どもにまで引き継がれることはありません。

最後に、親も兄弟姉妹も甥・姪も全くいない場合に限り、配偶者が全財産を相続します。ただしこのケースは実際には多くありません。また、離婚した元配偶者との間にお子様がいる場合や認知したお子様がいる場合は、そのお子様が第1順位の相続人となり、上の表よりも優先されますのでご注意ください。

遺言書がない場合の現実的な負担|義理の兄弟姉妹との遺産分割協議

遺言書がない場合、残された配偶者は、亡くなった方の兄弟姉妹(配偶者から見れば義理の兄弟姉妹)や甥・姪と遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ:相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続き)を行わなければなりません。これが実務上、想像以上の負担になります。

  • 預金の解約や不動産の名義変更には、相続人全員の署名と実印の押印、印鑑証明書が必要になる
  • ほとんど面識のない甥・姪にも連絡を取り、協力をお願いしなければならない
  • 1人でも協力が得られない、または連絡が取れない相続人がいると、手続き全体が止まってしまう
  • 話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の調停に進まざるを得ないこともある

特に沖縄では、相続人となる兄弟姉妹や甥・姪が県外にお住まいというケースが少なくありません。書類の郵送のやり取りだけでも時間がかかり、配偶者を亡くされた悲しみの中で、この負担を背負うことになります。逆に言えば、「全財産を配偶者に相続させる」という遺言書が1枚あれば、この協議自体が不要になるのです。

配偶者に全財産を残すには|夫婦相互遺言のすすめ

ここまでの内容を踏まえ、当事務所が子どものいないご夫婦にお勧めしているのが、ご夫婦がお互いに「全財産を配偶者に相続させる」という遺言書を1通ずつ作成しておく方法です。

兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書どおりに実現できる

前述の通り、兄弟姉妹(およびその代襲相続人である甥・姪)には遺留分がありません。そのため、親御様がすでに他界されているご夫婦であれば、「全財産を配偶者に」という遺言書を作れば、後から請求を受ける心配なく、そのとおりの相続を実現できます。遺留分の仕組みや対策の詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。

遺言書は必ず1人1通ずつ作成する

「夫婦で1通にまとめて書けば楽なのでは」と思われるかもしれませんが、民法では2人以上の者が同じ証書で遺言をすること(共同遺言)は禁止されており、夫婦連名の遺言書は無効になります。必ずご主人様・奥様それぞれが1通ずつ作成してください。その際、先に解説した予備的遺言(「配偶者が先に亡くなっていた場合には〇〇に」という定め)も、それぞれの遺言書に盛り込んでおくことが大切です。

確実性を重視するなら公正証書遺言

遺言書には、ご自身で書く自筆証書遺言と、公証役場で公証人に作成してもらう公正証書遺言があります。形式の不備で無効になるリスクがなく、原本が公証役場に保管される公正証書遺言は、確実に想いを実現したい子どものいないご夫婦にこそ適した方式です。沖縄県内の公証役場の場所や作成の流れは、以下の記事をご覧ください。

遺言書の作成にかかる費用

自筆証書遺言はご自身で作成すれば費用をほとんどかけずに作れます。公正証書遺言の場合は、財産額に応じた公証人手数料がかかります。司法書士など専門家に作成支援を依頼する場合の報酬は事務所により異なりますので、まずは無料相談でお見積りをご確認ください。方式ごとの費用の内訳と相場は、以下の記事で詳しく解説しています。

子どもがいない夫婦の相続に関するよくあるご質問

Q. 遺言書があれば、義理の兄弟姉妹の実印や同意は不要になりますか?

A. 「全財産を配偶者に相続させる」という有効な遺言書があれば、遺産分割協議は不要となり、兄弟姉妹の署名・実印・印鑑証明書を集める必要はありません。兄弟姉妹には遺留分もないため、遺言書の内容どおりに手続きを進めることができます。

Q. 義理の兄弟姉妹や甥・姪と疎遠でも、連絡しなければいけませんか?

A. 遺言書がない場合は、疎遠であっても相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるため、連絡を避けることはできません。連絡先が分からない場合は戸籍をたどって調査することになり、負担はさらに大きくなります。遺言書があれば、こうした負担をあらかじめ避けられます。

Q. 内縁関係(事実婚)のパートナーに財産を残せますか?

A. 内縁のパートナーには法律上の相続権がありません。婚姻届を出していないご夫婦の場合、財産を残すには遺言書による遺贈(いぞう:遺言によって財産を贈与すること)が必要です。法律婚のご夫婦以上に、遺言書の作成が重要になります。

Q. 遺言書を作るのに早すぎるということはありますか?

A. ありません。遺言書は作成後に何度でも書き直すことができます。むしろ、認知症などで判断能力が低下すると遺言書自体が作成できなくなるため、お元気なうちの作成をお勧めしています。

まとめ

本日の内容を整理します。

  • 子どもがいない夫婦の相続人は、奥さんと旦那さんの兄弟姉妹(親が他界している場合)になる。奥さんだけに相続されるわけではない
  • 遺言書がないと、甥・姪など遠い親族に突然手続きの負担がかかる可能性がある。あらかじめ信頼できる親族や専門家に依頼しておくことが大切
  • 遺言書がないと、自分が望まない相手に財産が渡ってしまうことがある。特に先祖代々の不動産や会社の株式には注意が必要
  • 子どもも親も他界している場合、兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書の効力を最大限に活かせる
  • 夫婦どちらが先に亡くなるかわからないため、夫婦それぞれが予備的遺言を含む遺言書を作成しておくことが望ましい

「まだ早い」と感じている方も、ぜひ一度ご検討ください。遺言書は、残された方への最後の思いやりです。ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にレスター司法書士法人にご相談ください。

YouTubeやってます!

本記事の内容は、YouTube動画『「子どもがいない」夫婦は相続の時に遺言書を作るべき?。誰が相続人になるのか?』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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