【相続】親名義の実家売却で税金600万円増える3つの地雷を現役司法書士が解説

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「お母さんがその家に住んでいるんだから、お母さんの名義にするのが当然でしょう」——そう思われている方は多いのではないでしょうか。確かに、感情的にも自然な判断です。しかし、その”当たり前”の選択が、将来的に600万円以上の税負担の差を生んでしまうことがあるのです。

実家の相続は、名義を誰にするかによって、税金の額もその後のトラブルの有無も大きく変わります。「家族仲がいいから大丈夫」と思っていても、年月が経つにつれて状況は変わります。兄弟間の意見の食い違い、借金、認知症——こうした問題が絡み合うと、実家の売却すら身動きが取れなくなってしまうことがあります。

本日は、実家の相続で特に注意していただきたい「3つの地雷」について解説いたします。①母親名義にすること、②共有名義にすること、③認知症対策をきちんとしないこと、この3点です。

「うちは関係ない」と思っていた方が、後になって「あの時相談しておけばよかった」と後悔されるケースを数多く見てきました。ぜひ最後までお読みいただき、ご家族での話し合いのきっかけにしていただければ幸いです。

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目次

地雷①:実家を母親名義にすると税金で600万円以上損する

お母さんが実家に住んでいるのだから、名義もお母さんにするのが自然——そう考えるのはとても理解できます。しかし、この選択には大きな落とし穴があります。

問題の本質は、実家を売却するときの税金です。それを左右するのが「居住用財産の3,000万円特別控除」という制度です。

「3,000万円特別控除」とは何か

居住用財産の3,000万円特別控除とは、自宅として住んでいた不動産を売却した際、売却益のうち3,000万円までは税金がかからないという特例です。わかりやすく言うと、「住んでいた家を売る人には、3,000万円分は税金を免除しますよ」という制度です。

この特例が使えるかどうかで、支払う税金の額が劇的に変わります。

住んでいる場合と住んでいない場合の税金の差

たとえば、実家が5,000万円で売れたとしましょう。税率を20%として比較してみます。

お母さんが住んでいない場合(施設入居後など)
  • 売却価格:5,000万円
  • 3,000万円控除:使えない
  • 課税される金額:5,000万円
  • 税金:約1,000万円
お母さんが住んでいる場合
  • 売却価格:5,000万円
  • 3,000万円控除:使える
  • 課税される金額:2,000万円(5,000万円-3,000万円)
  • 税金:約400万円

この差額、なんと600万円です。

なぜお母さん名義が危険なのか

問題は、相続でお母さんの名義にした後、お母さんが施設に入所するケースが非常に多いという点です。

お母さんはご自身よりも年配です。いずれ施設に移られ、実家に住まなくなる可能性は高いといえます。その状態で実家を売却しようとすると、「住んでいた人が売る」という条件を満たせないため、3,000万円の特別控除が使えなくなってしまいます。

「お母さんが住んでいるうちは大丈夫」と思っていても、タイミングを逃せば600万円以上の税金の差が生まれてしまうのです。お母さんの名義にすること自体がダメというわけではありませんが、このリスクをしっかり理解した上で判断していただく必要があります。


地雷②:共有名義はトラブルの温床になる

兄弟が3人いれば、1/3ずつの共有名義——一見、平等で公平に見えます。実際、「共有名義が一番無難」と思われている方も多いでしょう。しかし、共有名義こそがのちのちの大きなトラブルの原因になりやすいのです。

注意すべきポイントは以下の3つです。

  1. 全員の同意がなければ何もできない
  2. 疎遠な兄弟がいると身動きが取れなくなる
  3. 持ち分を第三者に売られるリスクがある

それぞれ解説します。

1. 全員の同意がなければ何もできない

共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です。3人兄弟で1/3ずつ持っているなら、1人でも反対すれば売れません。

「今は仲が良いから大丈夫」と思っていても、年月が経てば状況は変わります。意見の食い違い、希望する売却金額の差、そもそも売りたくない兄弟——こうした問題が重なると、実家の活用も売却もできないまま固定資産税だけ払い続ける、という状況になりかねません。

2. 疎遠な兄弟がいると身動きが取れなくなる

連絡が取れない兄弟がいる場合、事態はさらに深刻です。どこにいるかもわからない共有者がいれば、全員の同意を得ることができず、実家を売ることも管理することもできなくなります

その間も固定資産税の支払いは続き、建物は老朽化していく。さらに共有者が亡くなれば、その持ち分はまたその子どもたちへと受け継がれ、共有者がどんどん増えていきます。放置すればするほど、問題は複雑になるのです。

また、兄弟の誰かに借金がある場合、その持ち分が差し押さえられることがあります。差し押さえを解除するためには、その借金を他の兄弟が肩代わりしなければならないケースもあります。5年後・10年後に兄弟が借金を抱えるかどうか、誰にも予測できません。

3. 持ち分を第三者(業者)に売られるリスクがある

これが最も厄介なリスクです。共有の持ち分は、他の共有者の同意なしに第三者に売ることができます

以前は「そんな持ち分を買う人はいない」という状況でしたが、近年は持ち分だけを買い取る業者が現れています。実家の1/3が突然、見知らぬ業者のものになってしまうのです。

業者が持ち分を持つと何が起きるか。共有物分割請求という法律上の権利を盾に、売却を迫ってきます。売るには全員の同意が必要ですから、業者が同意しないと売れない。逆に業者から「買い取りましょうか」と言われると、足元を見られた金額での買い叩きになる。いずれにしても、残りの共有者が大きな損をする構造になっています。

「とりあえず共有名義にして、お金が必要になったら3人で分ければいい」という考えが、いかに危険かがおわかりいただけたと思います。


地雷③:認知症対策の手遅れが全てを止める

3つ目の地雷が、認知症への備えの遅れです。認知症になってからご相談いただいても、できることが非常に限られてしまいます。

認知症になると財産が凍結される

認知症(判断能力が著しく低下した状態)と判断されると、銀行預金の引き出しも、不動産の売却も、名義変更もできなくなります。実家をお母さんの名義にしていた場合、お母さんが認知症になった時点で、実家に関するあらゆる手続きが止まってしまうのです。

成年後見人制度の難しさ

こうした場合に活用されるのが成年後見制度(判断能力が不十分な方に代わって、財産の管理や契約を行う仕組み)ですが、この制度には大きな課題があります。

裁判所が法定後見人(弁護士などの専門家)を選任した場合、その後見人は「本人の財産を守ること」を最優先に動きます。これは一見、良いことのようですが、実際には家族の意向がほとんど反映されません。

たとえば、実家を売却したい場合でも「お母さんの住む場所を奪うことになる」と判断されれば、売却を認めてもらえないことがあります。さらに極端な例を挙げると、認知症のお母さんが「娘ののがん治療費に自分の預金を使ってほしい」と望んでいても、後見人が「本人の財産の流出にあたる」と判断すれば、その意思は無視されてしまいます。

「認知症とはいえ、お母さん本人の意思があるのに」と思われるかもしれません。しかし、認知症と判断されている以上、その意思表示は法律上、認められにくい状況になってしまうのです。

認知症対策の2つの手段

だからこそ、判断能力がしっかりある今のうちに対策を講じることが重要です。主な手段は2つあります。

認知症対策の2つの手段
  • 家族信託:信頼できる家族(例:長男)に財産の管理を「契約で」委託する。不動産の売却や預金の管理など、契約で決めた範囲のことを、本人が認知症になった後も続けて行える。後見人不要で家族の意向を反映しやすい。
  • 任意後見:認知症になる前に、自分で後見人を選んで契約しておく制度。裁判所が選ぶ法定後見と異なり、信頼できる身内を後見人に指定できる。本人の意向をよく知る人が対応にあたれる。

この2つは組み合わせて活用することも可能です。

家族信託は「契約で決めた特定の財産・特定の行為」に限定されますが、柔軟に設計できます。一方、任意後見は本人の代理人として幅広く活動できますが、後見監督人の監督下に置かれるため、完全に自由というわけではありません。それでも、裁判所が選ぶ全く見知らぬ専門家が後見人になるよりも、事情をよく知る身内が対応できる点で、家族にとっては大きなメリットがあります。

大切なのは、お母さんの判断能力があるうちに動くことです。認知症になってしまってからでは、これらの対策を講じることができません。


まとめ

本日は、実家の相続で後悔しないために知っておきたい「3つの地雷」を解説しました。要点を整理します。

  • 母親名義のリスク:お母さんが施設に入るなどして住まなくなると「3,000万円特別控除」が使えなくなり、売却時の税金が最大600万円以上変わることがある
  • 共有名義のリスク:全員の同意が必要なため売却が進まなくなる。疎遠な兄弟や借金・差し押さえが絡むとさらに複雑化し、持ち分を第三者業者に買い取られるリスクもある
  • 認知症対策の遅れのリスク:認知症になってからでは財産が凍結され、家族の意向が反映されにくい法定後見制度が適用される。家族信託・任意後見は判断能力があるうちにしか準備できない
  • 対策のタイミングが重要:「うちは仲が良いから大丈夫」「まだ先の話」と思っているうちに手遅れになるケースが多い。相続が発生したとき、あるいは親が元気なうちに専門家へ相談することをお勧めいたします

「うちは大丈夫」という油断が、大きなトラブルにつながることがあります。ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にレスター司法書士法人にご相談ください。

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本記事の内容は、YouTube動画『認知症対策の2つの手段』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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