皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。
「そろそろ実家をどうするか考えないと」「空き家のまま置いておくのも心配だけれど、売るなら一番いいタイミングはいつなんだろう」——実家の売却について、そんなふうに悩まれている方は非常に多いのではないでしょうか。
実は、実家をいつ・誰の名義で売るかによって、支払う税金の額が数百万円単位で変わることがあります。「親が元気なうちに売った方がいいのか」「相続してから売った方がいいのか」——この選択を間違えると、本来使えたはずの税金の特例が使えなくなり、手元に残るお金が大きく減ってしまうのです。
さらに、実家の売却には「名義変更(相続登記)」という前提となる手続きがあり、共有名義や認知症といった問題が絡むと、そもそも売ること自体ができなくなってしまうこともあります。
本日は、実家売却のベストなタイミングを判断するために知っておきたい「生前売却と相続後売却の税金の違い」「使える税金の特例」、そして母親が存命のうちに気をつけたい「3つの地雷」について、沖縄での実務も踏まえて解説いたします。ぜひ最後までお読みいただき、ご家族での話し合いのきっかけにしてください。
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▶ あわせて確認:相続登記の費用はいくら?内訳と司法書士報酬の相場/沖縄で相続の相談はどこにする?相談先の使い分けと流れ
実家売却の全体像|「名義変更→売却」という順番
まず、実家を売却するまでの大まかな流れを押さえておきましょう。相続した実家の場合、いきなり売買契約に進めるわけではありません。
- 誰が相続するか(遺産分割)を決める
- 実家の名義を相続人へ変更する(相続登記)
- 不動産会社に売却を依頼する
- 売買契約・引き渡し
- 翌年に譲渡所得税の確定申告を行う
ここで見落とされがちなのが、②の相続登記(名義変更)が売却の前提になるという点です。亡くなった親の名義のままでは、不動産を売ることはできません。買主に名義を移すためには、いったん相続人へ名義を変えておく必要があるのです。
しかも、2024年4月から相続登記が義務化されており、相続を知った日から原則3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。「売るときにまとめてやればいい」と放置していると、いざ売却したいときに手続きが間に合わない、ということにもなりかねません。相続登記の手続きや必要書類については、法務局が制度の概要を公表しています(法務局「相続登記の申請義務化について」)。

なお、名義を「誰にするか」で税金が変わってくるため、名義変更はできるだけ早い段階で、売却まで見据えて決めることが大切です。名義変更にまつわる注意点は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

実家の相続から売却までにかかる税金4つ
「実家を売ると税金がかかる」と一言で言っても、実際には相続の場面と売却の場面で、別々の税金が順番にかかります。「いつ・誰が・何に対して」払うのかを表に整理しました。
| 税金 | いつ | 誰が | 何に対して |
|---|---|---|---|
| 相続税 | 相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税 | 相続人 | 実家を含む相続財産の総額(基礎控除を超えた部分) |
| 登録免許税 | 相続登記(名義変更)のとき | 登記を受ける相続人 | 不動産の価額(固定資産税評価額) |
| 印紙税 | 売買契約書を作成するとき | 売主・買主(契約書ごと) | 契約書に記載された売買金額 |
| 譲渡所得税・住民税 | 売却した翌年の確定申告 | 売主(相続人) | 売却益(売却価格-取得費-譲渡費用) |
① 相続税|基礎控除の枠内なら申告不要
相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかり、相続人が子2人なら4,200万円までは相続税も申告も原則不要です。申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4152/No.4205)。相続税を納めた方は、後述の「取得費加算の特例」が関係します。
② 登録免許税|相続登記のときにかかる
相続登記には不動産の価額(固定資産税評価額)の1,000分の4(0.4%)の登録免許税がかかります。土地の価額が100万円以下の場合など、令和9年3月31日までの登記には免税措置があります(国税庁 No.7191)。費用全体は相続登記の費用はいくら?登録免許税・報酬・実費の内訳をご覧ください。
③ 印紙税|売買契約書に貼る
売買契約書には記載金額に応じた収入印紙を貼ります。令和9年3月31日までに作成される契約書は軽減措置の対象で、1,000万円超5,000万円以下なら1万円、5,000万円超1億円以下なら3万円です(国税庁 No.7108 印紙税の軽減措置)。
④ 譲渡所得税・住民税|売却益にかかる本命
4つのうち最も大きくなりやすい税金です。譲渡所得は「売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除」で計算し、売却した年の1月1日時点の所有期間が5年超なら所得税15%・住民税5%、5年以下なら所得税30%・住民税9%(別途、所得税額の2.1%の復興特別所得税)です。所有期間は亡くなった親が取得した日から通算されるため、相続直後に売っても通常は「長期」の税率です(国税庁 No.3202/No.3208/No.3211)。
注意したいのが「取得費」です。親の購入時の契約書が見つからないと売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」となり、売却価格の大半が利益扱いになって税額が膨らみます。実家を片付ける際は古い売買契約書・領収書を捨てずに探してください。この税金をどこまで抑えられるかが、次章の「3,000万円特別控除」につながります。
実家売却のタイミングで税金が大きく変わる|生前売却と相続後売却
結論から申し上げると、実家売却のタイミングを考えるうえで最も重要なのは、「3,000万円の特別控除」という税金の特例が使えるかどうかです。この特例が使えるかどうかで、手元に残るお金が数百万円単位で変わります。
実家売却で使える可能性がある3,000万円控除には、大きく分けて2種類あります。どちらが使えるかは「いつ・誰が住んでいたか」で決まります。
① マイホームを売ったときの3,000万円特別控除(居住用財産の特例)
実際に住んでいた人(本人)が、そのマイホームを売るときに使える特例です。売却益のうち3,000万円までは税金がかからなくなります。住まなくなってからでも、住まなくなった日から3年目の年末までに売れば対象になり得ます(所有期間の長短は問いません)。ただし、子や配偶者など特別な関係のある人への売却には使えません。
制度の詳しい要件は国税庁が公表しています(国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例)。
② 相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(空き家特例)
親が亡くなり、相続した実家(空き家)を相続人が売るときに使える可能性がある特例です。一定の要件を満たせば、売却益から最高3,000万円を控除できます。ただし2024年1月1日以降の売却で相続人が3人以上いる場合は、1人あたりの控除額が2,000万円に減額されます。
この特例には、昭和56年5月31日以前に建てられた家であること、相続の直前まで親が一人で住んでいたこと、耐震基準を満たすように改修するか家屋を取り壊して売ることなど、細かな条件があります。適用期限もあり、平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの売却が対象と定められています。詳しくは国税庁の解説をご確認ください(国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)。
空き家3,000万円特別控除の適用要件|8つのチェックポイント
空き家特例は「使えると思っていたのに、1つの要件で外れた」というご相談が多い制度です。私たちが売却前に確認している要件を順番に見ていきます(出典は国税庁 No.3306 および No.3307)。
要件1:昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物は対象外)
旧耐震基準の時代の家屋が対象で、建築年月日は登記事項証明書や固定資産税の課税明細で確認できます。分譲マンションなど区分所有建物は対象外です。
要件2:相続開始から3年目の年末までに売る
「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」が期限です(2026年8月に相続開始なら2029年12月31日)。相続登記・遺産分割・買主探しを考えると、3年は意外と短いものです。
要件3:売却代金が1億円以下
敷地を分けて売る場合や相続人が共有している場合も、合計額で判定されます。
要件4:相続から売却まで「空き家のまま」(貸していない・住んでいない)
相続後に事業用・貸付用・居住用に使われていないことが要件です。「空いているなら親戚に貸そう」「売れるまで自分が住もう」とすると特例が使えなくなります。
要件5:親族など「特別の関係がある人」への売却ではない
配偶者・直系血族・生計を一にする親族・同族会社などへの売却は適用外です。「兄弟の一人が買い取る」形は対象外になり得ますので、事前に税理士へ確認してください。
要件6:耐震改修または取り壊して売る(買主側の実施も可に)
家屋を残して売るなら一定の耐震基準を満たすこと、または取り壊して敷地だけを売ることが必要です。令和6年1月1日以後の売却では、売却後に買主側が耐震改修や取り壊しを行う場合も対象になり、売主が解体費を先に負担しなくてよくなりました。
要件7:相続人が3人以上なら控除額は1人2,000万円
令和6年1月1日以後の売却で、特例を受ける相続人が3人以上いる場合は1人あたり2,000万円になります。兄弟3人で共有相続した実家は、この改正の影響を直接受けます。
要件8:親が老人ホームに入所していた場合の取り扱い
要介護認定・要支援認定を受けて老人ホーム等に入所し、入所後もその家が親の物品の保管などに使われ、事業・貸付・親以外の人の居住に使われていなかったことなどを満たせば対象になります(国税庁 No.3307)。逆に、認定を受けずに入所した場合や入所後に他人へ貸した場合は外れる可能性があります。
空き家特例は、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」などを添えて確定申告をして初めて適用されます。要件の最終判断と申告は税理士、前提となる登記簿の確認・相続登記・共有関係の整理は司法書士、という役割分担です。
どちらの特例が使えるかで税金はこれだけ変わる
特例が使える場合と使えない場合で、税額がどれだけ変わるのか。あくまで一例ですが、実家が5,000万円で売れ、税率を20%と仮定して比較してみます。
- 売却価格:5,000万円
- 3,000万円控除:使えない
- 課税される金額:約5,000万円
- 税金の目安:約1,000万円
- 売却価格:5,000万円
- 3,000万円控除:使える
- 課税される金額:約2,000万円(5,000万円-3,000万円)
- 税金の目安:約400万円
この差額は約600万円です。取得費や譲渡費用、所有期間による税率の違いなどで実際の金額は変わりますが、「特例が使えるタイミングで売る」ことがいかに大切か、おわかりいただけると思います。
なお、上記の税額はあくまで概算の一例です。実際の税額はケースごとに大きく異なり、①と②の特例は要件も併用の可否も異なります。具体的な税額の試算や特例の適用可否については、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。当事務所でも、税理士と連携しながら「売る前」の段階でご相談を承っています。
取得費加算の特例と3,000万円控除の関係
相続した実家の売却では、3,000万円控除と並んで「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算の特例)」が候補に上がります。両者は仕組みも使える人も異なり、同時には使えないため、どちらを選ぶかで税額が変わります。
取得費加算の特例とは
相続税を納めた人が、相続した土地・建物を一定期間内に売った場合に、納めた相続税のうち売った不動産に対応する部分を「取得費」に加算できる制度です。取得費が増える分だけ売却益が減り、譲渡所得税が軽くなります。加算額は譲渡益を超えない範囲に限られます(国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)。
使える人と期限|相続税を納めた人だけ・申告期限から3年以内
使えるのは相続税が課税された人だけです。基礎控除の範囲内で相続税がかからなかったご家庭では使えません。期限は「相続税の申告期限(10か月)の翌日以後3年を経過する日まで」、つまり相続開始からおよそ3年10か月以内の売却で、空き家特例の「3年目の年末」とは数え方が違います。
空き家特例との併用はできない(選択適用)
国税庁は空き家特例の要件として「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例など他の特例の適用を受けていないこと」を挙げています(国税庁 No.3306)。同じ実家の売却では、空き家3,000万円控除と取得費加算のどちらか一方を選ぶことになります。
どちらが有利か|考え方の目安と税理士への相談
空き家特例の要件を満たすなら「売却益から3,000万円を引ける」効果が大きく有利になりやすい一方、空き家特例が使えない場合や納めた相続税額が大きい場合には取得費加算が選択肢になります。加算額は財産の構成で大きく変わるため、どちらを選ぶかは売却前に税理士へ試算を依頼してください。私たちが登記の段階で確認できるのは「要件の前提となる事実(建築年・名義・共有関係・相続開始日)」であり、税額の判断は税理士の領域です。
母が存命のうちに気をつけたい「3つの地雷」
実家売却のタイミングと並んで大切なのが、親(特にお母さま)が元気なうちに、名義と対策を整えておくことです。ここを誤ると、税金の問題だけでなく、そもそも「売りたくても売れない」状況に陥ってしまいます。私が実務で数多く見てきた「3つの地雷」をご紹介します。
地雷①:実家を母親名義にすると税金で600万円以上損することがある
「お母さんが住んでいるのだから、名義もお母さんに」——自然な判断に思えますが、ここに落とし穴があります。相続でお母さまの名義にした後、お母さまが施設に入所するケースが非常に多いのです。
施設に入って実家に住まなくなった状態で売却しようとすると、「住んでいた人が売る」という条件を満たせず、先ほどの3,000万円特別控除が使えなくなってしまうことがあります。その結果、先の一例のように税金が600万円以上変わってしまうのです。お母さま名義にすること自体が悪いわけではありませんが、この売却タイミングのリスクを理解したうえで判断していただく必要があります。
地雷②:共有名義はトラブルの温床になる
兄弟3人で1/3ずつの共有名義——平等に見えますが、共有名義こそがのちのちの大きなトラブルの原因になりやすいのです。注意点は次の3つです。
- 全員の同意がなければ売れない:共有不動産の売却には共有者全員の同意が必要で、1人でも反対すれば売却できません。
- 疎遠な兄弟がいると身動きが取れない:連絡の取れない共有者がいると同意を集められず、売ることも管理することもできません。相続が重なると共有者はさらに増えていきます。
- 持ち分を第三者業者に売られるリスク:共有持ち分は他の共有者の同意なく第三者へ売れます。近年は持ち分だけを買い取る業者もおり、共有物分割請求を盾に買い叩かれる恐れがあります。
「とりあえず共有名義にして、売れたら分ければいい」という考えが、いかに実家売却を難しくするか。売却を見据えるなら、名義は分散させないことが原則です。
地雷③:認知症対策の遅れが売却そのものを止める
3つ目が、認知症への備えの遅れです。親が認知症(判断能力が著しく低下した状態)と判断されると、不動産の売却も名義変更も預金の引き出しもできなくなります。実家をお母さま名義にしていた場合、お母さまが認知症になった時点で、実家に関するあらゆる手続きが止まってしまいます。
こうした場合に使われるのが成年後見制度ですが、裁判所が選任した法定後見人は「本人の財産を守ること」を最優先に動くため、「実家を売りたい」という家族の意向が通らないことがあります。だからこそ、判断能力があるうちに、家族信託や任意後見といった対策を講じておくことが重要です。これらは認知症になってからでは準備できません。契約できる判断能力の目安は、家族信託は認知症になってからでは遅い?契約できる判断基準と任意後見との違いで詳しく解説しています。
- 家族信託:信頼できる家族に財産の管理を契約で委託する仕組み。実家の売却など、契約で決めた範囲を本人が認知症になった後も続けて行えます。
- 任意後見:認知症になる前に、自分で後見人を選んで契約しておく制度。裁判所が選ぶ法定後見と違い、事情をよく知る身内を指定できます。
相続した実家を売却する手順|司法書士が見る「つまずきやすい所」
相続前・相続後の判断ポイントや手順の詳細は、専用記事相続前と相続後の実家売却|司法書士が教える最適な判断ポイントにまとめています。ここでは、税金の特例を使い切るために「どの段階で何を押さえるか」を、司法書士の視点で要約します。
STEP1:相続登記(名義変更)を先に済ませる
遺産分割協議で「誰の名義にするか」を決め、相続登記を申請します。戸籍の収集に1〜2か月かかることも多く、ここで時間を使うと空き家特例の「3年目の年末」が近づきます(必要書類は相続登記の必要書類【ケース別一覧表】)。名義を決める際は、前章の「3つの地雷」と、相続人3人以上の共有で空き家特例の控除額が2,000万円に下がる点を考慮してください。
STEP2:査定の前に登記簿・境界・残置物を確認する
登記簿に古い抵当権や仮登記が残っていないか、隣地との境界が確定しているか、家財(残置物)の処分をどうするかを先に確認しておくと、その後の契約が止まりません。沖縄では境界未確定・共有者多数の土地が少なくなく、「売れる状態にする」登記手続きが先に必要になることがあります。
STEP3:媒介契約・売買契約|共有なら全員の意思をそろえる
共有名義のまま売る場合は共有者全員が売主として契約・決済に関与する必要があり、遠方の兄弟がいると日程調整だけでも時間がかかります。空き家特例を使う予定なら、解体を売主・買主のどちらが行うか、代金が1億円以下に収まるかなど、要件に関わる事項を契約前に税理士へ確認しておきます。
STEP4:決済・引き渡し・所有権移転登記→翌年の確定申告
残代金の受領と同時に買主への所有権移転登記を申請します。権利証(登記識別情報)の紛失や抵当権の抹消漏れも、事前にわかっていれば決済日までに手当てできます。そして売却した翌年の確定申告で、特例を適用します。
確定申告は必要?|譲渡益ゼロでも「特例を使うなら申告」が原則
「3,000万円控除で税金がゼロになるなら申告はいらない」という誤解が多いのですが、国税庁はマイホームの3,000万円控除も空き家特例も「一定の書類を添えて確定申告をすることが必要」としています(国税庁 No.3302・No.3306)。申告をしなければ特例は適用されません。特例なしでも売却益が出ないケースでは申告不要になることもありますが、判定はご自身で決めず税理士または税務署にご確認ください。
売れない実家の選択肢|買取・賃貸・空き家バンク
買主が見つからない場合は、不動産会社による買取(価格は下がるが早く確実)、賃貸、市町村の空き家バンクへの登録といった選択肢があります。ただし賃貸に出した時点で空き家特例の要件を外れるため、賃貸化の前に税理士へ確認してください。放置だけは避けましょう(空き家を放置すると数億の損害賠償に?火災リスクと今すぐできる対策/相続の実家じまいタイミングは?5つのステップ)。
沖縄の実家売却で特に注意したいこと
沖縄で実家の売却を考える場合、本土とは異なる事情がいくつかあります。当事務所が沖縄で数多くのご相談を受けるなかで、特に注意が必要だと感じる点をお伝えします。
軍用地が含まれる場合
実家の敷地や相続財産に軍用地が含まれるケースは、沖縄ならではです。軍用地は借地料(地代)収入を生む資産として扱われるため、売却するか保有し続けるかの判断、評価の考え方が通常の宅地とは異なります。相続財産に軍用地が含まれる場合は、名義や分け方を決める段階から専門家に相談されることをおすすめします。
共有持分・トートーメー(祭祀承継)が絡む場合
沖縄では、古くからの土地が親族間で細かく共有名義になっていることが少なくありません。世代を重ねるうちに共有者が数十人に及び、全員の所在や同意を確認するだけでも大変な労力がかかります。実家を売ろうとして初めて「名義が整理されていない」と気づくケースも多いのです。
また、位牌(トートーメー)を継ぐ人が実家(仏壇のある家)をどうするか、という祭祀承継の問題が、売却の話し合いに影響することもあります。法律だけでは割り切れない、沖縄特有の家族の事情に配慮しながら進める必要があります。こうした複雑なケースこそ、地元で相続を扱う専門家にご相談ください。
相続した土地を売りに出そうとしたところ、登記簿に昭和時代の古い抵当権が残っていたケースがありました。ローンは完済済みでしたが抹消書類は紛失しており、当時の銀行は別の銀行に合併されていました。当事務所が窓口となって銀行へ合併に関する資料と抹消書類の再発行を依頼し、合併を原因とする抵当権移転登記を経て、抵当権の抹消登記を完了しました。
また、権利証(登記済証)を紛失していても、売却をあきらめる必要はありません。「事前通知」または「資格者代理人による本人確認情報の提供制度」を利用して手続きを進められます(融資が絡む取引では、後者を用いるのが一般的です)。
実家の売却では、こうした登記簿上の「見えない障害」が直前に見つかることが少なくありません。売却をお考えの段階で、まず登記簿の確認からご相談ください。
先日も「母の名義にしておけば安心」というご相談があり、売却のタイミングで使える特例が変わる可能性があったため、早めに税理士にもご確認いただくようご案内しました。
よくある質問
実家を売るなら、親の生前と相続後のどちらが得ですか?
ケースによって異なります。親が実際に住んでいるうちに親自身が売れば「マイホームを売ったときの3,000万円特別控除」が使いやすく、相続後に空き家を売る場合は「空き家特例」の要件を満たすかどうかがポイントになります。どちらが有利かは、家の建築年・居住状況・相続人の人数・売却時期などで変わるため、売る前に税理士や税務署、司法書士へご相談いただくのが確実です。
相続してから何年以内に売るのが有利ですか?
特例の期限から逆算すると、目安は「相続開始から3年目の年末まで」です。空き家3,000万円特別控除はこの期限が要件で、取得費加算の特例は相続税の申告期限の翌日以後3年(相続開始からおよそ3年10か月)です。相続登記や遺産分割に時間がかかるため、相続から1年以内に方向性を決めるのが安全です。なお所有期間は親の取得日から通算されるので、「相続後5年待たないと税率が高い」という心配は通常不要です。
兄弟で共有名義のまま実家を売れますか?
共有者全員が売主として契約・決済に関与すれば売却できます。ただし1人でも反対したり連絡が取れなかったりすると売れず、相続人3人以上で空き家特例を使う場合は控除額が1人2,000万円に下がります。売却して代金を分けることが決まっているなら、代表者1人の名義で売却し代金を分配する「換価分割」を遺産分割協議書に明記する方法もあります。名義の組み方は税金にも影響するため、相続登記の前に司法書士と税理士へご相談ください。
親が認知症になってしまったら、実家は売れないのですか?
判断能力が著しく低下したと判断されると、原則としてご本人名義の不動産を売却することはできなくなります。成年後見制度を使う方法はありますが、家庭裁判所が選んだ後見人が売却を認めないこともあり、家族の思うようには進まないのが実情です。認知症になる前であれば、家族信託や任意後見で備えておくことができます。
名義変更(相続登記)をしないまま実家を売ることはできますか?
できません。亡くなった方の名義のままでは売買による名義移転ができないため、いったん相続人へ相続登記をしてから売却する流れになります。2024年4月から相続登記は義務化されており、放置すると過料の対象となる可能性もあります。売却を考え始めた段階で、早めに名義の整理を進めることをおすすめします。
兄弟で共有名義にしておけば公平で安心ではないですか?
一見公平に見えますが、共有名義は売却時に全員の同意が必要になり、1人でも反対すれば売れません。疎遠になったり、借金・差し押さえ・持ち分の第三者への売却といった問題が起きると、実家が塩漬けになってしまいます。将来的に売却する可能性があるなら、共有名義は避け、誰か1人の名義にまとめる方向で検討されるのが安全です。
▶ あわせて確認:相続前と相続後の実家売却|司法書士が教える最適な判断ポイント/相続登記の義務化はいつから?過料10万円の実際と2027年3月期限の対処法/相続の実家じまいタイミングは?司法書士が解説する5つのステップ
まとめ
実家売却のベストなタイミングと、後悔しないための注意点を解説してまいりました。要点を整理します。
- 売却は「名義変更(相続登記)→売却」の順番。親名義のままでは売れず、相続登記は2024年4月から義務化されている。
- かかる税金は4つ=相続税(基礎控除内なら不要)・登録免許税(相続登記)・印紙税(売買契約)・譲渡所得税と住民税(売却益)。最も大きいのは譲渡所得税。
- タイミングで税金が大きく変わる。「マイホームを売ったときの3,000万円控除」と「相続空き家の3,000万円控除」のどちらが使えるかで、手取りが数百万円変わることがある(本文の金額はいずれも一例)。空き家特例は8つの要件と「3年目の年末」の期限を確認する。
- 取得費加算の特例と空き家特例は選択適用。相続税を納めた人だけが使え、どちらが有利かは税理士に試算を依頼する。
- 母が存命のうちの3つの地雷=①母親名義(施設入所で控除が使えず600万円級の差)②共有名義(売れない・買い叩き)③認知症対策の遅れ(売却が凍結)。
- 特例は確定申告をして初めて適用される。税額がゼロでも申告が必要。
- 沖縄特有の事情=軍用地・多数の共有持分・トートーメー(祭祀承継)が売却の判断や話し合いに影響する。
- 税額の具体的な試算・特例の適用可否は、必ず税理士または税務署に確認する。名義や売却の段取りは、早い段階で司法書士に相談すると選択肢が広がる。
実家の売却は、「いつ・誰の名義で・どう売るか」の判断ひとつで、結果が大きく変わります。「何から手をつければいいのかわからない」という段階でも大丈夫です。まずはその交通整理から始めましょう。
レスター司法書士法人では、窓口を一つにしてワンストップで対応しております。税理士など他の専門家とも連携しながら、実家の名義・売却・相続対策をまとめてご相談いただけます。初回のご相談は無料で承っておりますので、ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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