皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。
「親が軍用地を持っていたけれど、どう相続すればいいのか分からない」「軍用地の名義変更は普通の土地と同じでいいの?」「兄弟で分けたいが、どう分割すればもめないのか」——沖縄で相続に向き合う方から、こうしたご相談をよくいただきます。
軍用地は、沖縄という土地の歴史から生まれた特有の資産です。毎年安定した借地料が入り、相続税評価の面でも有利になりやすいことから、県内外の方が注目しています。その一方で、名義変更や地主会・防衛局への届出、相続税の評価、そして相続人が複数いる場合の分け方など、一般的な不動産とは違う「軍用地ならではの勘どころ」があります。
本日は、沖縄の軍用地を相続するときに知っておきたいことを、軍用地とは何かという基本から、相続税評価の仕組み、手続きの流れ、名義変更、遺産分割の論点、売却との関係まで、司法書士の実務の視点で解説いたします。
レスター司法書士法人の公式LINEでは、相続に役立つチェックリストを無料プレゼントしています!
ほかにも、LINE限定の無料Zoom相談もご用意しておりますので、この機会にぜひご登録ください。
軍用地とは?沖縄特有の資産である理由
軍用地とは、在日米軍や自衛隊の基地・施設として、国が個人の所有者から借り上げている土地のことです。所有権は個人(地主)にあり、国がそこを借りて基地として使用し、その対価として毎年「軍用地料(借地料)」が地主に支払われます。
沖縄には第二次世界大戦後に接収された広大な米軍基地が今も残っており、全国の米軍専用施設の多くが沖縄に集中しています。そのため軍用地という資産は、実務上ほぼ沖縄に固有のものと言ってよく、全国の一般的な相続の知識だけでは対応しきれない場面が出てきます。
相続の観点から見た軍用地の特徴を整理すると、次のようになります。
- 毎年安定した借地料が入る:国が借主のため賃料の未払いリスクがほとんどなく、空室リスクもありません
- 建物を建てて管理する必要がない:更地(底地)を貸しているだけなので、修繕やメンテナンスの手間がかかりません
- 相続税評価が時価より低くなりやすい:評価方法が特殊で、市場での取引価格と相続税評価額に差が生じやすい傾向があります
- 取引に沖縄特有の慣行がある:地主会や沖縄防衛局への届出など、地元でなければ分かりにくい手続きが伴います
軍用地料は、施設の種類や場所によって単価が異なり、年ごとに見直されます。相場や制度の詳細は、沖縄防衛局の公表情報などで確認できます。相続にあたっては、まず「どの施設の、どのくらいの面積・借地料の土地なのか」を正確に把握することが出発点になります。
軍用地の相続税評価の仕組み
結論から申し上げますと、軍用地の相続税評価額は、「固定資産税評価額 × 評価倍率」で計算するのが原則です。一般的な宅地で使われる路線価方式とは異なる、倍率方式が用いられます。
この倍率は、国税庁が公表する財産評価基準書の「評価倍率表(公用地の倍率)」で確認します。沖縄県の該当地域の倍率を調べ、固定資産税評価額に掛け合わせることで評価額の基本形を求めます。倍率表は国税庁の財産評価基準書・路線価図のページで公開されています。
軍用地が「相続対策として有利」と言われるのは、毎年入ってくる借地料から想定される収益力(時価)に比べて、この方式で算出される相続税評価額が低くなりやすいためです。ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、施設の種類・返還の見込み・契約内容によって評価は個別に変わります。
また、相続税がかかるかどうか、いくらになるかは、軍用地以外の財産も含めた遺産全体で判断されます。相続税評価額の算定や申告の要否は税理士・税務署の領域ですので、具体的な金額の判断は必ず税務の専門家にご確認ください。当事務所でも、必要に応じて連携する税理士とともに対応いたします。
軍用地を相続する手続きの流れ
軍用地の相続は、大まかに次の順序で進みます。基本的な流れは通常の不動産相続と同じですが、④の届出は軍用地特有です。
- 相続人を確定する:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集め、法定相続人を確定します
- 遺産分割の方法を決める:遺言がなければ相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が軍用地を取得するかを決めます
- 相続登記(名義変更)を行う:法務局で土地の名義を相続人へ変更します
- 地主会・沖縄防衛局へ所有者変更の届出をする:借地料の受取名義を変更するための、軍用地特有の手続きです
- 相続税の申告・納付をする:申告が必要な場合、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行います
特に見落とされがちなのが④です。相続登記で法務局上の名義を変えても、地主会や防衛局への届出をしなければ、借地料の受取人が故人の名義のままになってしまうことがあります。名義変更(登記)と借地料の受取名義の変更は別の手続きだと理解しておくことが大切です。相続登記の管轄や必要書類は、那覇地方法務局で確認できます。
なお、2024年4月から相続登記は義務化されており、正当な理由なく期限内に登記をしないと過料の対象となる可能性があります。軍用地であっても例外ではありませんので、早めの手続きをおすすめします。義務化の詳細は相続登記の義務化を司法書士が解説した記事で詳しくご説明しています。
軍用地の名義変更(相続登記)の実際
軍用地の名義変更は、法律上は通常の土地の相続登記と同じ手続きです。必要書類も、故人の戸籍一式・相続人の戸籍・住民票・遺産分割協議書・固定資産評価証明書などで、基本的な考え方は変わりません。
ただし、軍用地では次のような点に注意が必要です。
- 一筆の土地を複数人で共有名義にしているケースが多い:昔からの経緯で持分が細かく分かれていることがあり、権利関係の把握に手間がかかります
- 登記の後に地主会・防衛局への届出が続く:名義変更は「登記して終わり」ではありません
- 長年放置された名義がそのままになっていることがある:祖父母の代の名義のまま相続登記がされておらず、相続人が多数にのぼる(数次相続)ケースもあります
登記にかかる費用の考え方は、一般的な相続登記と共通する部分が多くあります。登録免許税や司法書士報酬の目安については、相続登記の費用相場を比較した記事もあわせてご覧ください。数次相続で相続人が多い場合は、戸籍収集や協議の調整に相応の時間がかかることを見込んでおくと安心です。
軍用地の遺産分割で押さえたい論点
相続人が複数いる場合、軍用地をどう分けるかが悩みどころになります。土地の分け方には、大きく次の4つの方法があります。
- 現物分割:土地を分筆して、それぞれの相続人が別々の土地として取得する方法
- 代償分割:一人が軍用地を取得し、他の相続人へ代償金を支払って公平を図る方法
- 換価分割:軍用地を売却し、その代金を相続人で分ける方法
- 共有分割:複数の相続人が持分を決めて共有で取得する方法
軍用地の分割で特徴的なのは、「毎年安定した借地料が入る」という性質から、共有分割との相性が比較的よい点です。一般の不動産では共有は将来のトラブルの火種になりやすく避けるべきとされることが多いのですが、軍用地は借地料を持分に応じて分配できるため、共有のままでも収益を公平に受け取りやすいという実情があります。
とはいえ、共有には「売却や条件変更に共有者全員の合意が必要になる」「次の代でさらに相続人が増えて権利関係が複雑になる」といったデメリットもあります。どの方法が最適かは、相続人の人数・関係性・将来の売却意向・借地料をどう分けたいかによって変わります。分割の合意内容は遺産分割協議書にまとめて残す必要がありますので、遺産分割協議書の作り方を解説した記事も参考になさってください。
なお、相続人同士で意見が対立し、話し合いでの解決が難しい場合の調停・訴訟対応は弁護士の業務領域です。当事務所は登記や手続きの窓口として、必要な専門家との連携も含めてお手伝いいたします。
相続した軍用地は売却できる?相続と売買の関係
「相続はしたけれど、借地料はいらないので現金化したい」「相続税の納税資金にあてたい」という理由で、相続した軍用地の売却を検討される方もいらっしゃいます。
軍用地は沖縄では取引市場があり、専門の不動産会社を通じて売買されています。売却する場合の一般的な流れは次のとおりです。
- まず相続登記で名義を相続人に変更する(故人名義のままでは売却できません)
- 軍用地を扱う不動産会社に査定・売却を依頼する
- 売買にともない、再び所有者変更の届出を行う
ここで注意したいのは、「相続税対策として評価が低い」ことと「売って手元に残る金額」は別の話だという点です。売却して現金化すると、相続税評価では有利だった分がそのまま反映されるとは限りません。売却か保有かは、借地料という安定収入を手放してよいか、納税資金の必要性、家族の意向などを総合的に見て判断することをおすすめします。
よくある質問
軍用地の相続登記をしないまま放置するとどうなりますか?
2024年4月から相続登記は義務化されており、正当な理由なく期限内に登記をしないと過料の対象となる可能性があります。加えて、名義を放置している間に次の相続が発生すると、相続人が増えて権利関係が複雑になり、いざ手続きしようとしたときに戸籍収集や協議が大変になります。軍用地の場合、借地料の受取名義も故人のままになりかねませんので、早めの手続きをおすすめします。
軍用地の借地料の名義変更は、相続登記とは別に必要ですか?
はい、原則として別の手続きが必要です。法務局での相続登記で土地の名義を変えても、借地料の受取名義を変えるには地主会や沖縄防衛局への所有者変更の届出が必要になります。登記と届出はセットで進めるものとお考えいただくとよいでしょう。届出の具体的な様式や窓口は施設によって異なる場合があるため、個別にご確認ください。
相続人が県外に住んでいても軍用地を相続できますか?
相続できます。相続人が沖縄県外に住んでいても、軍用地を相続し、名義変更や借地料の受取を行うことは可能です。ただし戸籍収集や書類のやり取り、届出などで沖縄の手続きが必要になるため、遠方の場合は現地の司法書士に窓口を一本化して依頼すると負担が軽くなります。
軍用地の相続税評価は自分で計算できますか?
基本的な考え方は「固定資産税評価額 × 評価倍率」で、国税庁の評価倍率表を使えば概算を出すこと自体は可能です。ただし、施設の種類や個別事情によって評価は変わり、相続税がかかるかどうかは遺産全体で判断されます。実際の申告額の算定は税理士・税務署の領域ですので、正式な判断は税務の専門家にご相談ください。
まとめ
沖縄の軍用地の相続について解説してまいりました。要点を整理いたします。
- 軍用地は国に貸している土地で、毎年安定した借地料が入る沖縄特有の資産。相続の勘どころも一般の不動産とは異なる
- 相続税評価は「固定資産税評価額 × 評価倍率」が原則で、時価より低くなりやすい傾向があるが、具体的な金額は税理士・税務署に確認する
- 手続きは相続人確定→遺産分割→相続登記→地主会・防衛局への届出→相続税申告の流れ。借地料の受取名義変更は登記とは別に必要
- 遺産分割では、軍用地は借地料を分配しやすいため共有分割との相性が比較的よいが、将来の複雑化には注意する
- 売却という選択肢もあるが、評価の有利さと手取り額は別の話。保有か売却かは総合的に判断する
軍用地の相続は、「登記」「借地料の届出」「評価・税金」「分割」と複数の手続きが絡み合い、どこから手をつけてよいか分からなくなりがちです。まずはその交通整理から始めることが大切です。
レスター司法書士法人では、窓口を一つにしてワンストップで対応しております。相続登記から地主会・防衛局への届出、必要に応じた税理士との連携まで、沖縄の実情を踏まえてお手伝いいたします。初回のご相談は無料で承っておりますので、ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Contact
まずは、話してみてください。
初回相談は無料です。どんな小さなことでもお気軽にお声がけください。
Quick Call
098-987-1628Office Hours
平日 8:30 – 17:30


コメント