M&Aの流れを現役司法書士が徹底解説!成功の鍵と6つのステップ

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「会社を売りたいけど、何から始めればいいのかわからない」「M&Aって聞いたことはあるけど、実際どんな流れで進むの?」そんな疑問をお持ちの経営者の方は多いのではないでしょうか。

M&Aは、会社という組織を動かし、そこで働く人たちの生活も関わってくる非常に複雑なプロセスです。だからこそ、早めに流れを把握しておくことが成功の鍵になります。

「どれくらい時間がかかるの?」と聞かれると、早くて半年、通常は1年、長ければ2〜3年かかることもあります。

思っているよりずっと時間がかかるものなのです。

本日は、M&Aが実際にどのようなステップで進んでいくのか、各段階でどんなことが行われるのかを、わかりやすく解説いたします。

M&Aを検討中の方はもちろん、「まだ決めていないけど少し気になっている」という方にもぜひ読んでいただきたい内容です。

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目次

M&Aにはなぜ時間がかかるのか

M&Aのプロセスは、以下の大きなステップで構成されています。

  1. 初期相談
  2. 仲介契約
  3. 基本合意
  4. デューデリジェンス(会社調査)
  5. 最終合意・決済
  6. 引き継ぎ

それぞれ解説します。

1. 初期相談

まず最初のステップが初期相談です。「いくらで売れるのか」「どんな書類が必要なのか」といった基本的な疑問を専門家にぶつける段階です。

ここで全体像を把握することで、その後の流れがスムーズになります。「まだ売ると決めていない」という段階でも、相談することに意味があります。方向性や選択肢を整理するだけでも、大きな助けになるはずです。

2. 仲介契約

次に、M&Aの仲介会社(売主と買主の間を取り持つ会社)と契約を結びます。お見合いでいえば、結婚相手を探してくれる仲人さんのようなイメージです。

この段階で確認しておくべき重要なポイントがあります。それは費用の内訳です。着手金はいくらか、成約時には取引金額の何パーセントが報酬になるのか。「聞きにくいな」と感じる方もいるかもしれませんが、何に対していくらかかるのかを最初にきちんと確認しておくことが、後々のトラブルを防ぐうえでとても大切です。

3. 基本合意

仲介会社が買い手候補を見つけてきたら、いきなり成約ではなく、まず基本合意という段階に入ります。結婚で言えば「婚約」のようなイメージです。

ここで押さえておきたいのが、基本合意には法的拘束力がないという点です。つまり、基本合意をした後でも「やっぱり売らない」と決めることができます。「約束したじゃないか」と裁判所に訴えても、基本合意の段階では覆せないのです。

ただし、一点注意が必要です。基本合意の時点では多くの場合、独占交渉権(「他の買い手候補とは話し合わないでください」という約束)には法的拘束力が生じることがあります。つまり「他の人とも話してみよう」ということは、この段階ではできなくなる可能性があります。

基本合意を結ぶ目的は、お互いの認識のずれをなくすことです。頭の中だけで考えていると誤解が生まれます。金額や条件の方向性を書面で言語化しておくことで、その後の交渉がスムーズに進みます。

4. デューデリジェンス(会社調査)

基本合意の後、いよいよ本格的なデューデリジェンス(会社の詳細調査)が始まります。これは、買い手が対象会社の「健康診断」を行うようなイメージです。

調査の主な項目は以下のとおりです。

調査項目の種類
  • 法務調査:法律違反はないか、必要な免許を持っているか、裁判中の案件はないか
  • 税務・会計調査:申告している売上は本当に正しいか、不適切な資金の動きはないか
  • 労務調査:就業規則は整備されているか、残業代はきちんと支払われているか
  • 不動産調査:建物や土地の状態・評価額は問題ないか

特に見落としやすいのが保証(債務保証)の問題です。たとえば、社長個人の借入れに対する保証や、関連会社の保証を会社が引き受けているケースがあります。財務諸表だけでは見えにくい部分であり、「レントゲンを撮っても映らない」ような隠れたリスクです。

そのため、調査の最終段階では表明保証という約束を取り交わします。「この会社に隠れた問題はありません」と売り手が表明し、もし後から問題が発覚した場合にはペナルティを負うという契約です。

この調査の過程で、交渉姿勢はとても重要です。買い手が細かい問題点を次々と指摘して値下げを迫るような交渉スタイルは、売り手の気持ちを離れさせてしまいます。問題点だけでなく良い点もきちんと評価し、誠意ある交渉を心がけることが、M&A全体をうまく進める秘訣です。

売り手にとって、会社は「自分の子供のようなもの」です。「このお客様をもっと大切にしてくれる」「会社がさらに成長してくれる」という安心感があってこそ、売り手は心から協力してくれます。

5. 最終合意・決済

調査で問題がないと確認できたら、最終合意に至り、決済(代金の支払い)が行われます。

支払い方法は一通りではありません。成約時に全額を一括で支払う場合もあれば、引き継ぎ期間中の状況を見ながら半年後に残金を支払う、という分割払いのケースもあります。ビジネスの状況や引き継ぎの進捗に応じて決まります。

6. 引き継ぎ

最後のステップが引き継ぎです。実は、ここが最も大切な段階の一つといっても過言ではありません。

会社が変わるとき、そこで働く従業員の方々やお客様は「何が起きているのか」と不安になります。特に、会社の中核を担うキーマン(マネージャーや重要なスタッフ)への配慮が欠かせません。

何も知らされないままいきなり状況が変わってしまうと、長年一緒に会社を支えてきた方々に「はしごを外された」「創業者だけが得をした」という気持ちを抱かせてしまいます。そうなると、M&A後の会社の雰囲気や業績にも影響が出てきます。

今まで一緒に会社を支えてきた方々への感謝と配慮を忘れないことが、引き継ぎを成功させる大前提です。

なぜ早めの相談が重要なのか

M&Aが時間のかかるプロセスであることは、ここまでの解説でおわかりいただけたかと思います。早くて半年、長ければ数年かかることもあります。

POINT
  • 各ステップには十分な時間と準備が必要
  • 焦って進めると判断ミスや交渉のこじれが生じやすい
  • 「いつかやろう」と思っているうちに、最適なタイミングを逃すことも
  • 「売ると決めていない」段階でも相談することで選択肢が広がる

「まだ売るかどうか決めていない」「ちょっと話を聞いてみたいだけ」という段階でも、専門家への相談はまったく問題ありません。むしろ、そういった早い段階からの相談が、最終的なM&Aの成否を大きく左右します。

当事務所の解決事例|会社分割・合併による組織再編

複数の会社を経営されている方から「業務の効率化と、各社の事業の役割分担を明確にしたい」というご相談を受け、顧問税理士と連携して会社分割・合併による組織再編をお手伝いしました。

会社分割・合併に関する契約書や株主総会議事録等の書類作成、債権者保護手続きの官報公告、商号変更・本店移転・役員就任の登記申請までを担当し、期間は約2ヶ月でした。組織再編は法務と税務が交差する手続きです。会社の将来像が固まった段階で、早めに専門家チームで進めることをおすすめします。

6ステップで見落としやすい3つの局面

先ほどの6ステップをさらに実務目線で見ると、初めての方がつまずきやすい局面が3つあります。

トップ面談と意向表明書(LOI)

基本合意の前には、売り手と買い手の経営者同士が直接会う「トップ面談」が行われます。ここは価格交渉の場ではなく、経営理念や会社の雰囲気、従業員の処遇に対する考え方など「数字に表れない相性」を確かめる場です。面談を経て買い手が「この条件で検討したい」という意向表明書(LOI)を提出し、条件の大枠が揃ってから基本合意に進みます。意向表明書の金額は確定価格ではない、という点は誤解が多いので注意してください。

基本合意書の「拘束力」の範囲

基本合意書は、価格などの取引条件には原則拘束力を持たせず、独占交渉権や秘密保持だけに拘束力を持たせるのが一般的です。「基本合意=売却決定」ではなく、この後の会社調査(デューデリジェンス)の結果次第で条件が見直されることも普通にあります。契約書ごとの役割と拘束力の違いは、以下の記事で詳しく解説しています。

デューデリジェンスで何を見られるのか

買い手側の専門家が、財務(簿外債務はないか)・法務(契約書や許認可、登記は整っているか)・労務(未払い残業代はないか)などを調査します。売り手側で大切なのは、不利な情報ほど先に開示しておくことです。調査で後から発覚すると、価格の減額どころか交渉自体が壊れる原因になります。株主名簿や議事録、登記情報の整備は、日頃からの準備がそのまま会社の評価につながります。

M&A成立後に必要な手続き——登記とPMI

クロージング後の登記手続き

M&Aは最終契約の締結・決済(クロージング)で終わりではありません。株式譲渡の場合、株主が変わったこと自体は登記事項ではありませんが、経営陣の交代に伴う役員変更登記、本店移転や商号変更の登記など、法務局への手続きが発生するのが通常です。役員変更登記には「変更から2週間以内」という期限があり、放置すると過料の対象になります。

PMI(経営統合)が成否を分ける

成約後に行う経営の統合作業をPMI(Post Merger Integration)と呼びます。経理や人事のルール統一、システムの統合、そして何より従業員の不安への向き合い方——M&Aの「成功」と「失敗」を分けるのは、実はこの統合フェーズだと言われています。売り手の経営者にとっても、引き継ぎ期間中の協力姿勢が従業員と会社の未来を左右します。

M&Aにかかる費用の目安

M&Aの費用の中心は、仲介会社・アドバイザーへの手数料です。一般に、依頼時の着手金、基本合意時の中間金、成約時の成功報酬という構成で、成功報酬は取引金額に応じて料率が下がる「レーマン方式」で計算されるのが主流です。会社の規模や依頼先によって、着手金無料・完全成功報酬型の事務所もあれば、着手金だけで数百万円かかる会社もあります。

このほか、デューデリジェンスの専門家費用(買い手側)、契約書レビューの弁護士費用、クロージング後の登記費用(司法書士)などが個別に発生します。依頼前に「どの段階で・何に・いくら支払うのか」を必ず書面で確認してください。

M&Aの流れについてよくある質問

M&Aにはどのくらいの期間がかかりますか?

相手探しから成約まで、一般に半年から1年程度、長いケースでは2年以上かかります。決算内容や株主構成に整理すべき点があると、その分だけ準備期間が延びます。「売りたくなってから」ではなく「売る可能性が出てきたら」相談を始めるのが、結果的に良い条件につながります。

小さな会社でもM&Aはできますか?

できます。近年は後継者不足を背景に、従業員数名規模の会社や個人事業のM&Aも一般的になりました。小規模な案件に対応するマッチングサイトや、公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターなど、相談先の選択肢も広がっています。

親族への承継とM&A、どちらを選ぶべきですか?

後継者候補の有無・株式の分散状況・会社の財務状態によって答えが変わります。沖縄県内の事業承継の選択肢と進め方は、以下の記事で全体像を解説しています。

まとめ

本日はM&Aの流れについて解説しました。要点を整理します。

  • M&Aは初期相談→仲介契約→基本合意→デューデリジェンス→最終合意・決済→引き継ぎという流れで進む
  • 全体で半年〜数年かかることが多く、早めの行動が成功の鍵
  • 仲介会社との契約時は、費用の内訳を最初に確認しておくことが重要
  • デューデリジェンスでは保証(債務保証)など見えにくいリスクのチェックも行われる
  • 引き継ぎ段階では、キーマンや従業員への誠実な対応がM&A後の会社の安定につながる
  • 「まだ売ると決めていない」段階からの気軽な相談が、最終的な成功につながる

ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にレスター司法書士法人にご相談ください。

YouTubeやってます!

本記事の内容は、YouTube動画『【M&Aの流れ】絶対に流れを知っててください!【M&A】』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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