皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。
「住宅ローンをようやく完済したのに、銀行から『抵当権の抹消手続きはご自身で行ってください』と書類一式が届いて戸惑っている」——そのようなご相談を、沖縄でも数多くお受けします。
抵当権の登記は、住宅ローンを完済しても自動的には消えません。金融機関から受け取った書類をもとに、ご自身(または司法書士)が法務局へ「抵当権抹消登記」を申請してはじめて、登記簿から抵当権が消えるのです。
実はこの手続き、必要書類さえ揃っていれば、ご自身で申請することも十分可能です。費用の中心は登録免許税で、不動産1個につき1,000円。ご自身で行えば、数千円程度で収まるケースが少なくありません。
本日は、抵当権抹消手続きの流れ・必要書類・費用について、ご自分でやる方法を出し惜しみせずに解説いたします。書類の有効期限や放置した場合のリスク、相続が絡む場合の注意点、沖縄(那覇地方法務局)の管轄まで、この記事1本で全体像がつかめるようにまとめました。
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抵当権抹消手続きとは?完済しても登記は自動では消えない
抵当権とは
抵当権とは、住宅ローンなどの融資をする際に、金融機関が土地や建物を担保として確保しておく権利のことです。万一返済が滞った場合、金融機関はその不動産を競売にかけて、売却代金から優先的に回収できます。
住宅ローンを組んでマイホームを購入すると、ほぼ必ずこの抵当権が設定され、登記簿(登記記録)に記録されます。そして重要なのは、ローンを完済しても、この登記は自動的には消えないという点です。
完済によって抵当権そのものは実体として消滅するのが原則ですが、登記簿の記録を消すには「抵当権抹消登記」という申請を法務局に対して行う必要があります。これが本記事のテーマである抵当権抹消手続きです。
抵当権抹消手続きが必要になるタイミング
抵当権抹消手続きが必要になるのは、主に次のような場面です。
- 住宅ローンを完済したとき:もっとも典型的なケースです
- 不動産を売却するとき:抵当権が付いたままでは、買主は通常購入してくれません
- ローンを借り換えるとき:旧ローンの抵当権を抹消し、新ローンの抵当権を設定します
- 相続した不動産に古い抵当権が残っているとき:完済済みなのに登記だけ残っているケースが少なくありません
なお、これから住宅ローンを組む方・返済中の方は、住宅ローンに潜む3つの罠について解説した記事もあわせてお読みいただくと、完済までの全体像がつかみやすくなります。
抵当権抹消手続きを放置する3つのリスク
「別に困っていないから」と手続きを後回しにする方は多いのですが、放置には次の3つのリスクがあります。
- 書類の紛失・期限切れで手間と費用が増える
- 売却や新たな融資の場面で支障が出る
- 相続の際に手続きが複雑になる
1. 書類の紛失・期限切れで手間と費用が増える
完済時に金融機関から受け取る書類の中には、再発行できないもの(登記済証など)や、作成後3ヶ月以内という期限のあるもの(金融機関の資格証明書)が含まれています。
年月が経つほど書類の所在が分からなくなり、いざ必要になったときに金融機関への再発行依頼や追加の手続きが必要になります。金融機関が合併して名前が変わっていれば、さらに確認の手間が増えます。書類が揃っている完済直後が、もっとも簡単に手続きできるタイミングなのです。
2. 売却や新たな融資の場面で支障が出る
登記簿に抵当権が残ったままだと、外形上は「まだ借金の担保に入っている不動産」に見えます。売却の際には抹消が事実上必須ですし、その不動産を担保に新たな融資を受けたい場面でも支障となります。
売却や融資は時間との勝負になることも多く、「その時になってから慌てて抹消する」のは得策ではありません。
3. 相続の際に手続きが複雑になる
抵当権が残ったまま所有者が亡くなると、相続人が相続登記と抵当権抹消の両方を行うことになります。古い抵当権ほど書類の再取得や金融機関の変遷調査が必要になりやすく、ご家族に負担を残すことになりかねません。
抵当権抹消手続きは自分でできる?
結論:多くのケースで自分でできる手続きです
結論から申し上げますと、住宅ローン完済にともなう抵当権抹消登記は、数ある登記の中でも比較的シンプルで、ご自身で申請しやすい手続きです。
理由は次のとおりです。
- 必要書類のほとんどを金融機関が用意してくれる
- 申請書の様式と記載例が法務局のサイトで公開されている
- 登録免許税が不動産1個につき1,000円と少額で、計算も簡単
司法書士である私どもがこう申し上げるのは変に思われるかもしれませんが、事実は事実としてお伝えするのが当事務所の方針です。時間に余裕があり、書類がきちんと揃っている方は、ぜひご自身での申請に挑戦してみてください。
司法書士への依頼を検討したほうがよいケース
一方で、次のような場合は手続きが一気に複雑になるため、司法書士への相談をおすすめします。
- 所有者(名義人)がすでに亡くなっている:先に相続登記が必要です(後述)
- 登記簿上の住所・氏名が現在と異なる:前提として住所・氏名の変更登記が必要です
- 金融機関が合併・商号変更している:追加の書類確認が必要になる場合があります
- 完済から長期間が経過し、書類を紛失している
- 売却や借り換えと同時に行う:決済日に確実に登記する必要があり、実務上は司法書士が関与するのが通常です
抵当権抹消手続きの必要書類|ローン完済後に銀行から届くもの
金融機関から受け取る書類
住宅ローンを完済すると、金融機関から次のような書類一式が交付されます(名称は金融機関により多少異なります)。
- 登記原因証明情報:「解除証書」「弁済証書」「抵当権解除証書」など、抵当権が消滅したことを証明する書類
- 登記識別情報通知または登記済証(権利証):抵当権を設定したときに金融機関に交付されたもの
- 金融機関の委任状:抹消登記の申請を所有者に委任する内容のもの
- 金融機関の資格証明書(代表者事項証明書など)または会社法人等番号の通知:金融機関の実在と代表者を証明するもの
近年は、資格証明書の代わりに申請書へ金融機関の会社法人等番号を記載することで、証明書の添付を省略できる取り扱いが一般的です。交付された案内文に従えば問題ありません。
要注意:資格証明書の有効期限は作成後3ヶ月
ここで特に注意していただきたいのが書類の期限です。資格証明書(代表者事項証明書など)は、作成後3ヶ月以内のものでなければ登記申請に使えないのが原則です。
完済から3ヶ月を過ぎてしまうと、金融機関に再発行を依頼するか、会社法人等番号の記載による省略で対応することになります。対応方法はありますが、余計な手間と時間がかかりますので、書類を受け取ったら「3ヶ月以内」を目安に申請まで済ませることをおすすめします。
自分で用意するもの
- 登記申請書:法務局サイトの様式をダウンロードして作成します(書き方は次章)
- 認印:申請書への押印に使用します(実印・印鑑証明書は不要です)
- 登記事項証明書(あれば):不動産の表示や抵当権の受付年月日・受付番号を正確に書き写すため、事前に取得しておくと確実です
抵当権抹消手続きの流れ|自分でやる5ステップ
それでは、ご自身で法務局に申請する場合の流れを、ステップごとに解説します。
ステップ1:ローン完済後、金融機関から書類を受け取る
完済すると、金融機関から前章の書類一式が郵送または窓口で交付されます。受け取ったら、まず書類が4点揃っているか、記載内容(不動産の表示・お名前など)に誤りがないかを確認してください。不足や誤りがあれば、この時点で金融機関に連絡します。
ステップ2:管轄の法務局を調べる
登記の申請先は、どこの法務局でもよいわけではなく、不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に限られます。お住まいの近くの法務局ではない点にご注意ください。
管轄は法務局のウェブサイトで確認できます。沖縄県内の管轄については、後の章で詳しくご説明します。
ステップ3:登記申請書を作成する(書き方のポイント)
申請書の様式と記載例は、法務局「不動産登記の申請書様式について」で公開されています。「抵当権の登記の抹消(住宅ローン等を完済した)」の様式を使いましょう。主な記載項目は次のとおりです。
- 登記の目的:「抵当権抹消」と記載します
- 原因:「令和◯年◯月◯日弁済」「令和◯年◯月◯日解除」など。金融機関から届いた解除証書等に記載された日付と文言に合わせます
- 権利者:不動産の所有者(あなた)の住所・氏名
- 義務者:金融機関の本店所在地・名称・代表者名(会社法人等番号もここに記載します)
- 添付情報:登記原因証明情報、登記識別情報(または登記済証)、代理権限証明情報(委任状)など
- 登録免許税:不動産の個数×1,000円の金額を記載し、収入印紙を貼付します
- 不動産の表示:登記事項証明書のとおりに、土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積を正確に書き写します
抵当権を特定するために、抹消したい抵当権の受付年月日と受付番号(登記事項証明書の乙区に記載)を書く欄もあります。転記ミスがもっとも多いポイントですので、登記事項証明書と突き合わせながら丁寧に記入してください。
ステップ4:法務局へ申請する(窓口・郵送・オンライン)
申請書に収入印紙を貼り、金融機関から受け取った書類とともに管轄法務局へ提出します。提出方法は次の3つです。
- 窓口に持参:平日8時30分〜17時15分。不明点をその場で相談できるので初めての方におすすめです
- 郵送:封筒に「不動産登記申請書在中」と明記し、書留郵便等で送付します。返送用封筒を同封しておくと完了書類を郵送で受け取れます
- オンライン申請:登記・供託オンライン申請システム(法務省)から申請できます。ただし専用ソフトの設定やマイナンバーカードによる電子署名が必要で、1回きりの手続きのためにはやや準備の負担が大きいのが実情です
平日に法務局へ行けない会社員の方は、郵送申請が現実的な選択肢になります。
ステップ5:補正対応と完了書類の受け取り
申請後、記載に不備があると法務局から電話などで「補正」の連絡が来ます。指示に従って修正すれば大丈夫ですので、慌てる必要はありません。
審査は通常1〜2週間程度で完了し、「登記完了証」を受け取って手続きは終了です。心配な方は、完了後に登記事項証明書を取得して、抵当権の記録に下線(抹消の印)が引かれていることを確認しておくとより安心です。
抵当権抹消手続きにかかる費用
登録免許税は不動産1個につき1,000円
抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」)。
「1個」の数え方に注意してください。土地は1筆ごと、建物は1棟ごとに数えます。一戸建て(土地1筆+建物1棟)なら2,000円、土地が2筆に分かれていれば3,000円です。マンション(敷地権付き区分建物)の場合は、建物1個に加えて敷地権の目的である土地の筆数分がかかります。登記事項証明書で不動産の個数を確認してから印紙を購入しましょう。
その他の実費
- 登録免許税:不動産1個につき1,000円(一戸建てなら通常2,000円)
- 登記事項証明書:1通600円(窓口請求の場合。オンライン請求は割安)
- 郵送申請の場合の郵便代:書留郵便代+返信用封筒分
合計しても、おおむね3,000円前後で収まるケースが多い手続きです。
司法書士に依頼する場合の報酬
司法書士に依頼する場合の報酬は事務所により異なりますが、住宅ローン完済にともなう標準的な抹消登記であれば、実費とは別におおむね1万円〜2万円程度が一つの目安とされています。住所変更登記や相続登記が前提として必要な場合は、その分の費用が加わるのが一般的です。
「自分のケースではいくらかかるのか」「そもそも自分でできるケースなのか」を知りたい方は、無料相談をご利用いただくのが確実です。当事務所でも、ご相談の結果「これはご自身でできますよ」とお伝えすることが少なくありません。
司法書士に依頼した場合の費用の内訳と、自分でやる場合との比較は「抵当権抹消の司法書士費用」の記事で詳しく解説しています。
要注意:先に別の登記が必要になるケース
所有者が亡くなっている場合は、先に相続登記が必要
抵当権が残ったまま所有者(名義人)が亡くなっている場合、原則として先に相続登記を行い、名義を相続人に移してから抵当権抹消を申請する流れになります。抹消登記の「権利者」は現在の所有者である必要があるためです。
2024年4月からは相続登記の申請が義務化されており、正当な理由なく放置すると過料の対象となる可能性もあります。相続登記にかかる費用や流れは、相続登記の費用について解説した記事で詳しくご説明していますので、あわせてご確認ください。
住所や氏名が変わっている場合
引っ越しや結婚などで、登記簿上の住所・氏名が現在のものと異なる場合は、前提として住所(氏名)変更登記が必要です。抹消登記と同時に申請できますが、住民票の除票や戸籍の附票など追加の書類集めが発生します。転居回数が多く住所のつながりを証明しにくい場合は、司法書士にご相談いただくとスムーズです。
金融機関が合併・商号変更している場合
完済から年月が経っていると、抵当権者である金融機関が合併や商号変更をしていることがあります。この場合、登記簿上の金融機関名と現在の名称をつなぐ確認・手続きが必要になることがあり、ケースによって対応が異なります。古い抵当権の抹消は、無理をせず専門家に相談されることをおすすめします。
沖縄県で抵当権抹消手続きをする場合|那覇地方法務局の管轄
沖縄県内の不動産登記を担当するのは那覇地方法務局です。本局(那覇市)のほか、沖縄支局・名護支局・宮古島支局・石垣支局が置かれており、不動産の所在地ごとに申請先の管轄が分かれています。たとえば那覇市内の不動産と宮古島市内の不動産では申請先が異なりますので、申請前に必ず管轄をご確認ください。
沖縄ならではの事情として、県外や海外にお住まいの方が、沖縄の実家やご両親の不動産の手続きを行うケースが多いことが挙げられます。抵当権抹消登記は郵送でも申請できますので、来県せずに手続きを完結させることも可能です。また、軍用地を担保にしたローンを完済した場合の抹消手続きも、基本的な流れは本記事でご説明したとおりです。
当事務所は沖縄の司法書士法人として、県外・海外在住の方の沖縄の不動産手続きも数多くお手伝いしております。「沖縄に帰らずに済ませたい」という方も、お気軽にご相談ください。
よくある質問
抵当権抹消手続きに期限はありますか?
抵当権抹消登記そのものには、法律上の申請期限や罰則はないのが原則です(相続登記の義務化とは異なります)。
ただし、本文でご説明したとおり、金融機関の資格証明書には作成後3ヶ月という期限があり、放置するほど書類紛失や金融機関の変遷で手間が増えていきます。「期限はないが、完済直後にやるのが一番ラク」とお考えください。
登記識別情報(権利証)をなくしてしまいました。どうすればよいですか?
抵当権設定時の登記識別情報や登記済証は再発行ができません。紛失した場合でも、事前通知という法務局の制度や、司法書士等による本人確認情報の提供といった代替手段で抹消登記を申請できる場合があります。
ただし手続きが複雑になりますので、このケースは司法書士へのご相談をおすすめします。
平日に法務局へ行けません。郵送だけで完結できますか?
可能です。申請書と添付書類を書留郵便等で管轄法務局に送り、返信用封筒を同封しておけば、登記完了証も郵送で受け取れます。法務局に一度も行かずに完結させることができます。
不備があった場合は電話連絡への対応が必要になりますので、申請書には日中つながる電話番号を記載しておきましょう。
マンションの場合、登録免許税はいくらになりますか?
敷地権付き区分建物(一般的な分譲マンション)の場合、建物1個に加えて、敷地権の目的となっている土地の筆数分の登録免許税がかかります。敷地が1筆なら2,000円、2筆なら3,000円という計算です。
敷地が多数の筆に分かれているマンションもありますので、登記事項証明書で敷地権の筆数を確認してから収入印紙を用意してください。
銀行から届いた書類の一部を紛失しました。再発行できますか?
解除証書や委任状、資格証明書は、金融機関に依頼すれば再発行してもらえるのが通常です(時間がかかる場合があります)。一方、登記識別情報・登記済証は再発行できず、代替手段での申請となります。
何を紛失したかによって対応が変わりますので、手元の書類を確認のうえ、金融機関または司法書士にご相談ください。
まとめ
抵当権抹消手続きについて解説してまいりました。要点を整理いたします。
- 住宅ローンを完済しても、抵当権の登記は自動では消えない。法務局への抹消登記申請が必要
- 標準的なケースなら自分で申請できる。必要書類は金融機関がほぼ用意してくれ、様式は法務局サイトで入手できる
- 費用は登録免許税が不動産1個につき1,000円。自分で行えば実費3,000円前後で収まることが多い
- 金融機関の資格証明書は作成後3ヶ月以内。完済直後の書類が揃っているうちに申請するのが一番ラク
- 相続・住所変更・金融機関の合併が絡む場合は前提の手続きが必要。複雑なケースは司法書士へ
- 沖縄県内の申請先は那覇地方法務局(本局・各支局)。郵送申請なら県外・海外からでも完結できる
抵当権抹消は「やればすぐ終わるのに、放置すると厄介になる」典型的な手続きです。この記事を読んで「自分でできそうだ」と思われた方は、ぜひ完済書類が手元にあるうちに申請してしまいましょう。
「自分のケースは複雑かもしれない」「書類を見てもよく分からない」という方は、レスター司法書士法人にご相談ください。当事務所では窓口を一つにしてワンストップで対応しており、相続登記や住所変更登記が絡むケースもまとめてお手伝いできます。初回のご相談は無料で承っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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