家族信託の手続き6ステップを司法書士が解説|自分でやる限界と依頼先の選び方

家族信託の手続き

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「親も高齢になってきたので、認知症になる前に家族信託を考えたい。でも、手続きはどこから始めて、どう進めればいいのだろう」とお悩みの方が多いのではないでしょうか。

家族信託は、契約書を作って終わりではありません。家族での話し合いから始まり、信託の設計、契約書の作成、公正証書化、信託口口座の開設、そして不動産の信託登記まで、複数の手続きが連続して進んでいきます。しかも、それぞれの段階に「知らないと後で困る」落とし穴があります。

インターネットで調べると「自分でもできる」という情報と「専門家に頼むべき」という情報が混在していて、かえって迷ってしまった方もいらっしゃるでしょう。

本日は、家族信託の手続きの全体像を6つのステップに分けて解説し、自分でやる場合の限界、司法書士・弁護士・銀行という依頼先の使い分け、そして「いつまでに組むべきか」というタイミングの問題まで、実務の実情を正直にお伝えいたします。

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目次

家族信託の手続きの全体像【6つのステップ】

結論から申し上げますと、家族信託の手続きは次の6つのステップで進みます。準備を始めてから信託がスタートするまで、おおむね1〜3ヶ月程度が一つの目安です。

  1. 家族会議で目的と方針を決める
  2. 信託の内容を設計する(誰が・何を・いつまで)
  3. 信託契約書の案文を作成する
  4. 公証役場で公正証書にする
  5. 金融機関で信託口口座を開設する
  6. 不動産の信託登記を申請する

それぞれのステップで何をするのか、順番に見ていきましょう。

ステップ1. 家族会議で目的と方針を決める

家族信託の手続きで最も大切なのは、実は契約書の作成ではなく、この最初の家族会議です。

「親の認知症に備えて実家と預金を管理したい」「アパートの管理を子に任せたい」「障がいのある子の生活を長期的に支えたい」など、何のために信託を組むのかという目的をまず明確にします。目的が曖昧なまま進めると、信託する財産の範囲や条項の設計がぶれてしまいます。

また、財産を託される受託者だけでなく、将来相続人になる予定のご家族全員に内容を共有しておくことを強くお勧めします。家族信託そのものは委託者と受託者の契約で成立しますが、「知らないところで兄が親の財産を管理していた」という状態は、後々の相続トラブルの火種になりやすいためです。

ステップ2. 信託の内容を設計する(誰が・何を・いつまで)

目的が決まったら、信託の中身を具体的に設計していきます。決めるべき主な項目は次のとおりです。

  • 委託者・受託者・受益者:財産を託す人、管理する人、利益を受ける人を決める
  • 信託財産の範囲:どの不動産・いくらの金銭を信託に入れるか
  • 受託者の権限:管理だけか、売却・建て替えまで認めるか
  • 信託の終了事由と帰属先:いつ信託を終え、残った財産を誰が引き継ぐか

注意したいのは、すべての財産を信託に入れられるわけではないという点です。農地は原則として信託できず、住宅ローンなどの抵当権が付いた不動産は金融機関の承諾が必要です。年金の受給権も信託には入れられません。

信託に入れなかった財産の承継は遺言書でカバーするのが実務の定石です。家族信託と遺言書は対立するものではなく、併用することで初めて財産全体を漏れなくカバーできます。遺言書の作成手順や費用については遺言書の作成費用はいくら?自筆証書と公正証書の手順・相場を司法書士が解説で詳しく解説しています。

ステップ3. 信託契約書の案文を作成する

設計が固まったら、その内容を信託契約書の案文に落とし込みます。

信託契約書は、信託法という法律に適合していることはもちろん、後述する公証人のチェックと金融機関の審査に耐えられる内容である必要があります。受託者が先に亡くなった場合の後継受託者、追加で金銭を信託する場合の条項、信託の変更・終了の手続きなど、「今」ではなく「10年後・20年後」に起こり得る事態を想定して条項を組み立てるのが専門家の仕事です。

ステップ4. 公証役場で公正証書にする

信託契約は、法律上は私文書でも成立し得ます。しかし実務では、公正証書で作成することがほぼ必須と考えてください。

理由は2つあります。第一に、後述する信託口口座の開設にあたり、多くの金融機関が公正証書による契約書を条件としているためです。第二に、公証人がご本人の意思を直接確認して作成するため、「あのとき親には判断能力がなかったのではないか」という将来の紛争を予防できるためです。

公正証書の作成手数料は、信託財産の価額に応じて公証人手数料令で定められています(例えば目的価額が5,000万円超1億円以下の場合で43,000円)。詳しくは日本公証人連合会の手数料の案内をご確認ください。事前に案文を公証役場へ提出し、公証人のチェックを受けてから作成日を予約する流れになります。

ステップ5. 金融機関で信託口口座を開設する

金銭を信託する場合は、受託者が信託財産を管理するための専用口座「信託口口座(しんたくぐちこうざ)」を開設します。

受託者には、自分の財産と信託財産を分けて管理する義務(分別管理義務)があります。信託口口座は受託者個人の口座とは別の扱いになるため、万一受託者が先に亡くなっても口座が凍結されず、差し押さえのリスクからも信託財産を守れます。

ただし、信託口口座はすべての金融機関で開設できるわけではありません。取扱いのある金融機関でも事前審査があり、契約書の案文段階で提出を求められるのが通常です。口座開設の審査は公正証書の作成前から並行して進めるのが、手続きを止めないコツです。

ステップ6. 不動産の信託登記を申請する

不動産を信託した場合は、法務局で「所有権移転及び信託」の登記を申請します。名義が委託者から受託者へ移り、登記簿に信託の内容(信託目録)が記録されます。この登記は法律上の義務であり、省略することはできません。

登記の際には登録免許税がかかります。信託の登記の税率は原則として固定資産税評価額の0.4%(土地については軽減措置が設けられてきました)です。税率や軽減措置の適用期限は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁「登録免許税の税額表」でご確認ください。申請書の様式は法務局の「不動産登記の申請書様式について」で公開されています。

登記が完了し、信託口口座へ金銭を送金すれば、受託者による財産管理がスタートします。

家族信託の手続きは自分でできる?やり方と限界を正直に解説

「家族信託 手続き 自分で」と検索される方が多いように、専門家に頼まず自分で進められないかと考えるのは自然なことです。ここは正直にお伝えします。

法律上は自分でも可能。報酬分の節約にもなる

家族信託の契約手続きを本人たちだけで行うこと自体は、法律上可能です。書籍やインターネットにはひな形も出回っており、専門家報酬(後述のとおり数十万円規模)を節約できるのは事実です。

信託する財産が金銭のみで金額も小さく、家族関係もシンプルなケースであれば、ご自身で組むという選択肢が絶対に間違いだとは申しません。

ただし、実務の現場から見ると、次の2つの壁があることは知っておいていただきたいのです。

壁1. 契約書の瑕疵は「10年後」に発覚する

家族信託の契約書の不備は、作った時点では表面化しません。問題が起きるのは、受託者が先に亡くなったとき、不動産を売却しようとしたとき、信託を終了するとき――つまり何年も経ってからです。

例えば、後継受託者の定めがなければ、受託者が欠けたまま1年が経過すると信託自体が終了してしまいます。売却権限の記載が不明確だと、いざ実家を売ろうとしたときに買主側や登記の場面で支障が出ます。帰属権利者の定めが曖昧だと、信託の終了時に相続争いを誘発しかねません。

ここで誤解が多いのですが、公証人は本人の意思確認と文書の適法性をチェックする立場であって、その設計がご家族にとって最適かどうかまで保証してくれるわけではありません。ひな形どおりの契約書が、あなたの家族の10年後に合っているかどうかは、別の問題なのです。

壁2. 自作の契約書では銀行が信託口口座を開いてくれない

もう一つの壁は、金融機関の実務です。信託口口座の開設には各金融機関の審査があり、多くの金融機関は専門家が作成に関与した公正証書による契約書であることを事実上の条件としています。

ご自身で作成した契約書を持ち込んでも審査に通らず、結局専門家に依頼し直す――時間も費用も二重にかかってしまったというご相談は、実際にあります。

「それなら受託者個人の普通口座で管理すればいい」と考えるのは危険です。個人口座は受託者が亡くなると凍結され、受託者個人の債務で差し押さえられるリスクもあり、分別管理義務の観点からも問題が残ります。信託の安全性を支えているのは信託口口座だと考えてください。

家族信託の手続きはどこで頼む?司法書士・弁護士・銀行の使い分け

「家族信託 手続き どこで」という疑問には、依頼先ごとの得意分野からお答えするのが正確です。

司法書士:不動産があるなら登記まで一貫して任せられる

不動産を信託財産に入れる場合、最後は必ず信託登記が必要になります。登記の専門家である司法書士であれば、信託の設計支援から契約書案の作成、公証役場・金融機関との調整、信託登記まで一つの窓口で完結できます。実務上、家族信託の組成で最も多く選ばれているのが司法書士です。

弁護士:家族間に対立・紛争の火種があるケース

推定相続人の間で既に意見の対立がある、信託の内容に反対している家族がいる、といった紛争性のあるケースでは、交渉や紛争解決の代理ができるのは弁護士だけです。争いの気配があるなら、初めから弁護士に相談するのが適切です。

銀行・信託銀行:金銭中心のパッケージ型商品

信託銀行の「家族向け信託商品」は、金銭を対象としたパッケージ型が中心です。手続きの手軽さは魅力ですが、実家やアパートといった不動産を組み込む設計は基本的にできません。銀行が皆様の家族信託契約そのものを設計・代理してくれるわけではない点にご注意ください。

なお、信託の設計によっては贈与税や不動産所得の損益通算など税務上の論点が生じます。税額への影響が気になる設計になった場合は、税理士や税務署への確認を併せて行うことをお勧めします。相続に関する相談先の選び方全般は相続の相談先はどこがいい?悩み別に司法書士が正直に解説【無料相談も】でも詳しく解説しています。

家族信託の手続きにかかる費用の目安

費用は「必ずかかる法定費用・実費」と「専門家報酬」に分けて考えると整理しやすくなります。

  • 公正証書の作成手数料:信託財産の価額に応じて数万円程度(前述の公証人手数料令による)
  • 登録免許税:不動産の信託登記にかかる税金。原則として固定資産税評価額の0.4%(土地は軽減措置の適用期間あり)
  • その他実費:戸籍や登記事項証明書の取得費、郵送費など数千円〜1万円程度

専門家報酬は事務所により異なりますが、信託財産の評価額の1%前後(最低30万円程度〜)が一般的な相場観です。財産の内容や設計の複雑さで変わるため、見積りを取って比較されることをお勧めします。当事務所でも、初回の無料相談でご事情を伺ったうえで、費用の総額を事前にご提示しています。

費用の詳しい内訳とモデルケース別の総額は「家族信託の費用はいくら?」をご覧ください。

タイミングがすべて――認知症発症後は原則組めない

家族信託の手続きで最もお伝えしたいのが、このタイミングの問題です。

家族信託は「契約」ですから、財産を託すご本人(委託者)に契約内容を理解する意思能力があることが大前提です。認知症が進行して意思能力が失われた後では、原則として家族信託は組めません

認知症の診断を受けていても、症状が軽度で、公証人や金融機関との面談でご本人が内容を理解・判断できると認められれば、契約できる場合はあります。ただしそれはあくまで個別判断であり、「診断が付いたらもう無理かもしれない」瀬戸際の状態だとお考えください。

組めなくなった後の選択肢は、家庭裁判所が関与する成年後見制度が中心になります。成年後見は本人の財産を守る制度であるため、実家の売却や資産の組み替えといった柔軟な財産活用は難しくなります。「まだ元気だから」と先送りしているうちに選択肢がなくなるのが、私たちが現場で最も多く目にする失敗です。

沖縄で家族信託の手続きを行う場合の実務

ここからは、沖縄県内の不動産・ご家族に特有の実務についてお伝えします。

沖縄県内の不動産の信託登記は那覇地方法務局の管轄

沖縄県内の不動産の信託登記は、那覇地方法務局(本局および各支局・出張所)に申請します。不動産の所在地によって担当庁が分かれるため、複数の市町村に不動産をお持ちの場合は申請先も複数になることがあります。

県外在住でも、沖縄の実家や軍用地を信託できます

当事務所へのご相談で増えているのが、「親が県外に住んでいるが、相続で取得した沖縄の実家や軍用地を持っている」「親は沖縄、子は県外」という、家族が沖縄と県外に分かれているケースです。

この場合でも家族信託は問題なく組めます。公正証書はご本人のお住まいの地域の公証役場で作成でき、信託登記は郵送やオンラインでの申請が可能なため、登記のためにご本人が沖縄へ来る必要はありません。沖縄側の不動産調査や法務局対応は、地元の司法書士が担う形で連携できます。

特に軍用地は、毎年の軍用地料収入がある沖縄特有の資産です。所有者が認知症になると軍用地料の管理や売却・活用の判断が止まってしまうため、信託財産に組み入れて管理を子に任せる設計は有力な選択肢になります。賃借料の受け取り口座の切り替えなど固有の実務があるため、軍用地の取り扱い経験がある事務所に相談されると安心です。

また、信託口口座に対応している金融機関は県内でも限られます。どの金融機関でどのような条件なら開設できるかは案件ごとに異なるため、設計の早い段階で確認しておくことが、手続きを止めないポイントです。

よくある質問

家族信託の手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?

準備を始めてから信託がスタートするまで、1〜3ヶ月程度が目安です。

期間を左右するのは、家族間の合意形成と、金融機関の信託口口座の審査です。ご家族の意見がまとまっていて必要書類も揃っていれば1ヶ月台で完了することもありますが、関係者が多い場合や金融機関の審査に時間がかかる場合は3ヶ月を超えることもあります。ご本人の判断能力の問題がある場合は、時間との勝負になることもあるため、早めの着手をお勧めします。

家族信託の手続きに必要な書類は何ですか?

一般的には、次のような書類が必要になります。

  • 委託者・受託者の印鑑登録証明書、実印、本人確認書類
  • 戸籍謄本・住民票(親子関係や住所の確認のため)
  • 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)・固定資産評価証明書
  • 信託する預貯金の通帳など財産内容が分かる資料

案件によって追加の書類が必要になることもあります。専門家に依頼する場合は、取得の代行や案内を受けられるため、書類集めの負担はかなり軽くなります。

親が認知症と診断されました。もう家族信託はできませんか?

診断名だけで直ちに不可能と決まるわけではありません。重要なのは、契約時点でご本人に契約内容を理解する意思能力があるかどうかです。

軽度であれば、公証人の面談でご本人の理解が確認できて契約に至るケースもあります。ただし判断は個別で、進行すれば確実に組めなくなります。迷っている時間が最大のリスクですので、まずは現状のまま一度専門家にご相談ください。組めない場合の代替策(成年後見制度など)も含めてご案内できます。

家族信託と遺言書はどちらを先に作るべきですか?

役割が違うため、「どちらか」ではなく併用をご検討ください。

家族信託は生前の財産管理と、信託財産の承継先の指定までカバーできますが、信託に入れていない財産には効力が及びません。一方、遺言書は亡くなった後の財産承継のみを定めるものです。実務では、家族信託でメインの財産(実家・管理用の金銭など)をカバーし、それ以外の財産を遺言書で手当てする形が定石です。順番としては、意思能力が必要な家族信託を先に、または同時に進めるのが安全です。

まとめ

家族信託の手続きについて解説してまいりました。要点を整理いたします。

  • 手続きは6ステップ:家族会議→設計→契約書案→公正証書→信託口口座→信託登記。期間は1〜3ヶ月が目安
  • 自分で組むことは法律上可能だが、契約書の瑕疵は10年後に発覚し、自作の契約書では信託口口座の審査に通らないことが多いという2つの壁がある
  • 依頼先の使い分け:不動産があるなら登記まで一貫できる司法書士、紛争性があるなら弁護士、金銭中心のパッケージなら信託銀行。税務の論点は税理士へ
  • 認知症発症後は原則組めない。軽度なら可能な場合もあるが個別判断。タイミングを逃すと選択肢は成年後見制度に限られる
  • 沖縄の不動産の信託登記は那覇地方法務局の管轄。県外在住でも沖縄の実家や軍用地の信託は可能で、来沖不要で進められる

家族信託は、組んだ後の何十年かを支える仕組みだからこそ、最初の設計と手続きの正確さが問われます。そして何より、ご本人がお元気なうちにしか組めない制度です。

レスター司法書士法人では、窓口を一つにしてワンストップで、家族信託の設計から公正証書化・信託登記までサポートしております。初回のご相談は無料で承っておりますので、「うちの場合は信託が必要なのか」という段階のご相談でも、どうぞお気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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