家族信託の費用はいくら?内訳と相場・銀行に頼む場合との違いを司法書士が解説

家族信託の費用

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「親が元気なうちに家族信託を考えたいけれど、費用がいくらかかるのか分からない」「専門家に見積もりを取ったら、思ったより高くて驚いた」というご相談を、沖縄でも多くいただくようになりました。

家族信託は、認知症による「資産凍結」への備えとして注目されている制度ですが、初期費用がまとまった金額になります。だからこそ、「何にいくらかかるのか」「その費用を払う価値が本当にあるのか」を納得してから進めることが大切です。

また、「銀行の家族信託サービスと、司法書士に頼む場合はどう違うの?」というご質問もよくいただきます。

本日は、家族信託の費用の内訳と相場、銀行の信託商品との違い、そして正直に申し上げて「費用倒れ」になりやすいケースについて解説いたします。

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目次

家族信託とは?費用を見る前に押さえておきたい仕組み

家族信託(民事信託)とは、信託法にもとづいて、財産を持つ方(委託者)が、信頼できるご家族(受託者)に財産の管理や処分を任せる契約のことです。

認知症などで判断能力が低下すると、ご本人名義の預金の引き出しや不動産の売却が難しくなります。いわゆる「資産凍結」の状態です。あらかじめ家族信託を組んでおけば、判断能力が低下した後も、受託者であるご家族が財産の管理を続けることができます。

費用の話に入る前に、まず全体像をお伝えします。家族信託の費用は、大きく分けると次の2階建てになっています。

  • 専門家に支払う報酬:事務所により異なる(コンサルティング報酬・契約書作成・登記の報酬など)
  • 法令で決まっている実費:誰に頼んでも同じ(公証人手数料・登録免許税など)

この区別を知っておくと、見積書を見たときに「どこが事務所ごとの差で、どこが必ずかかるお金なのか」を冷静に判断できます。

契約までの手続き全体の流れは「家族信託の手続き6ステップ」で解説しています。

家族信託の費用の内訳【4つに分解して解説】

家族信託の初期費用は、主に次の4つに分解できます。

  1. コンサルティング報酬(信託の設計料)
  2. 信託契約書の作成費用
  3. 公正証書化の公証人手数料
  4. 信託登記の登録免許税と司法書士報酬(不動産がある場合)

それぞれ見ていきましょう。

1. コンサルティング報酬(信託の設計料)

家族信託の費用の中で最も大きな割合を占めるのが、専門家のコンサルティング報酬です。

一般的な相場としては、信託する財産の評価額の1%前後(最低額30万円程度〜)という料金体系にしている事務所が多いようです。ただし、定額制の事務所もあり、金額は事務所により大きく異なります。

「設計料」と聞くと高く感じるかもしれませんが、家族信託の本質は契約書という書面ではなく、その前段階の設計にあります。ご家族の構成、財産の内容、将来の希望を伺いながら、「誰を受託者にするか」「どの財産を信託に入れるか」「信託が終わったとき財産を誰に帰属させるか」を一つひとつ決めていく作業です。ここに不備があると、せっかく契約しても実際の場面で使えない信託になってしまいます。

見積もりを取る際は、金額だけでなく「家族会議への同席」「金融機関との調整」「公証役場とのやり取り」がどこまで含まれるかを確認することをお勧めします。

2. 信託契約書の作成費用

設計した内容を信託契約書という形にする費用です。相場としては10万円〜15万円程度が目安ですが、コンサルティング報酬に含めている事務所も多くあります。

インターネット上のひな形を流用して自分で作成することも制度上は可能です。しかし、信託契約書は「登記ができる内容か」「金融機関が口座開設に応じる内容か」という実務のチェックポイントが多く、ひな形の流用では対応しきれないのが実情です。

3. 公正証書化の公証人手数料

信託契約書は、公証役場で公正証書にするのが実務上の原則です。法律上の義務ではありませんが、後日の紛争予防に役立つことに加え、金融機関が信託口口座の開設条件として公正証書を求めることが多いためです。

公証人に支払う手数料は、公証人手数料令という政令で定められた法定費用です。信託財産の価額(目的価額)に応じて決まり、たとえば目的価額が3,000万円超5,000万円以下なら29,000円、5,000万円超1億円以下なら43,000円です。実際には契約内容に応じた加算がありますが、おおむね3万円〜10万円程度に収まるケースが多いでしょう。

4. 信託登記の登録免許税と司法書士報酬(不動産がある場合)

自宅や収益物件などの不動産を信託財産に入れる場合は、名義を委託者から受託者に移す「所有権移転及び信託」の登記が必要です。このとき国に納める登録免許税がかかります。

信託の登記の登録免許税は、固定資産税評価額の0.3%〜0.4%です。建物は0.4%、土地は租税特別措置法の軽減措置により0.3%とされています(軽減措置には適用期限があり、延長されることもあるため、最新の税率は国税庁の登録免許税の税額表でご確認ください)。

たとえば固定資産税評価額2,000万円の土地なら、登録免許税は6万円という計算になります。相続登記(相続による所有権移転は評価額の0.4%)と比べても、極端に高い税金ではありません。

このほか、信託登記を司法書士に依頼する場合の報酬として10万円〜15万円程度が一般的な目安です(物件数や内容により異なります)。信託登記は通常の相続登記より記載事項が複雑なため、登記の専門家である司法書士が関与するのが一般的です。

そのほかの実費

細かいところでは、次のような実費もかかります。

  • 戸籍謄本・印鑑証明書・固定資産評価証明書などの取得費用:合計1万円程度
  • 信託口口座の開設手数料:金融機関により無料〜数万円程度

費用総額の目安【モデルケース】

内訳を踏まえて、総額のイメージをモデルケースでお示しします。あくまで一般的な相場観にもとづく概算であり、実際の金額は事務所や事案により異なります。

家族信託の費用モデルケース(概算)
  • ケース①:金銭2,000万円のみを信託
    専門家報酬(設計+契約書)30万〜50万円+公証人手数料 約2万〜3万円+実費 = 総額35万〜55万円程度
  • ケース②:自宅(評価額2,000万円)+金銭1,000万円を信託
    専門家報酬(設計+契約書)40万〜60万円+公証人手数料 約3万円+登録免許税 6万〜8万円+信託登記報酬 10万〜15万円+実費 = 総額60万〜90万円程度

「高い」と感じられるかもしれません。ただ、比較対象として知っておいていただきたいのが成年後見制度です。判断能力が低下してから成年後見制度を利用し、専門職が後見人に選任された場合、月額数万円程度の後見人報酬がご本人が亡くなるまで続くことがあります。10年続けば総額は数百万円規模です。

家族信託は初期費用こそまとまった金額ですが、契約後のランニングコストは原則かかりません。「初期に一度払うか、毎月払い続けるか」という時間軸で比較することが大切です。

銀行の信託商品と司法書士に依頼する家族信託の違い

「家族信託 銀行」と検索される方が多いように、銀行・信託銀行でも「家族信託」という名前のついたサービスが提供されています。司法書士などの専門家に依頼する家族信託とは仕組みが異なるため、中立の立場で違いを整理します。

銀行・信託銀行の信託商品のしくみと手数料

銀行や信託銀行が提供するのは、遺言代用信託や認知症対策型の金銭信託など、あらかじめ設計されたパッケージ型の商品です。銀行自身が受託者となってお金を預かり、あらかじめ決めたルールで支払う仕組みが中心です。

特徴は次のとおりです。

  • 対象は金銭のみが中心で、不動産は対象外の商品が一般的
  • 手数料は各銀行所定(設定時手数料や管理報酬など。商品によって無料のものから信託財産に対する割合型まで様々)
  • プロが受託者になるため、家族に受託者を頼めない場合でも利用できる
  • 設計の自由度は限定的(商品の枠内でしか設定できない)

司法書士など専門家と組成する家族信託

一方、司法書士などの専門家に依頼する家族信託は、ご家族が受託者となるオーダーメイドの契約です。

  • 不動産(自宅・収益物件・軍用地など)や自社株も信託財産にできる
  • 支払いルールや財産の帰属先を、ご家族の事情に合わせて自由に設計できる
  • 初期費用はまとまった金額になるが、契約後の継続費用は原則かからない
  • 受託者を務めるご家族の理解と協力が前提になる

なお、司法書士は信託登記の専門家ですので、不動産を信託財産に入れる場合は設計から登記までを一貫して進められるのが強みです。ご家族間にすでに争いがある場合の交渉や訴訟対応は弁護士の領域ですので、その場合は弁護士と連携して進めることになります。

どちらが向いているか

どちらが優れているというものではなく、目的によって向き不向きがあります。

  • 金銭だけをシンプルに備えたい・受託者を頼める家族がいない → 銀行の信託商品が選択肢になります
  • 不動産を含めて管理を任せたい・家族の事情に合わせた設計をしたい → 専門家と組成する家族信託が向いています

正直にお伝えします。「費用倒れ」になりやすいケース

司法書士の立場としては家族信託をお勧めしたいところですが、正直に申し上げると、すべての方に家族信託が必要なわけではありません。費用に見合う効果が出にくい、いわば「費用倒れ」になりやすいのは次のようなケースです。

  • 信託する財産が金銭数百万円程度で、不動産がない:初期費用数十万円の割合が大きくなりすぎます。金融機関の代理人制度や任意後見など、より低コストの選択肢との比較が必要です
  • 目的が「亡くなった後の分け方の指定」だけ:それは遺言書で実現できることが多く、費用も家族信託よりずっと抑えられます
  • 受託者を任せられる家族がいない:家族信託は受託者となるご家族の存在が大前提です
  • すでに判断能力がかなり低下している:信託契約は委託者本人の判断能力があるうちにしか結べません。この場合は成年後見制度の検討が現実的です

たとえば「分け方の指定だけなら遺言で足りる」ケースについて、遺言書の費用は自筆証書遺言なら数千円〜、公正証書遺言でも数万円台からと、家族信託より大幅に安く済みます。詳しくは遺言書の作成費用の解説記事をご覧ください。

当法人でも、ご相談の結果「家族信託ではなく遺言と任意後見の組み合わせで十分です」とご案内することがあります。まず目的を整理し、最も費用対効果の高い手段を選ぶことが大切です。

沖縄で家族信託をする場合に知っておきたい実務事情

ここからは、沖縄で家族信託を検討する方に特有の実務事情をお伝えします。

沖縄の金融機関の「信託口口座」事情

信託した金銭は、受託者個人の財産と分けて管理するために「信託口口座」という専用口座で管理するのが原則です。

ただし、信託口口座はどの銀行でも開設できるわけではありません。取り扱いの有無や条件(信託契約書の公正証書化、専門家の関与、最低預入額など)は金融機関ごとに異なり、県内の金融機関でも対応状況に差があります。信託契約を結ぶ前に、口座を開設できる金融機関を確認しておくことが、沖縄での家族信託の重要な実務ポイントです。

この確認を後回しにして契約書を先に作ってしまうと、「口座が開けずに信託がスタートできない」という事態になりかねません。専門家に依頼する場合は、金融機関との事前調整まで対応してもらえるかを確認しましょう。

軍用地など沖縄特有の不動産を信託する場合

沖縄ならではのご相談として多いのが、軍用地を信託財産に入れるケースです。

軍用地は毎年の軍用地料収入がある大切な資産ですが、所有者であるお父様・お母様が認知症になると、契約手続きや売却、地料の管理に支障が出るおそれがあります。家族信託で受託者に管理を任せておけば、地料の受領・管理を途切れさせずに続けることができます。

費用面では、信託登記の登録免許税が固定資産税評価額ベースで計算される点がポイントです。評価額と取引相場の関係は物件によって異なるため一概には言えませんが、登記にかかるコストは事前に評価証明書で正確に見積もることができます。登記の申請先は、沖縄県内の不動産であれば那覇地方法務局(本局・支局・出張所)です。

また、沖縄では先祖代々の土地やトートーメーの承継と財産管理が結びついているご家庭も多く、「誰に管理を任せ、最終的に誰に承継させるか」を家族信託の設計に織り込めることは、沖縄のご家族にとって大きな意味があります。沖縄県内の相続・生前対策の相談先については、沖縄の相続相談先のまとめ記事も参考にしてください。

家族信託の税金について

費用と合わせて気になるのが税金です。基本だけお伝えすると、委託者と受益者(利益を受ける人)が同じ人である一般的な家族信託(自益信託)では、信託を設定した時点で贈与税は原則かかりません。財産から利益を受ける人が変わっていないためです。

ただし、受益者を委託者以外の方に設定した場合は贈与税の対象となり得るほか、収益不動産を信託した場合の損益通算の制限など、税務上の論点がいくつかあります。具体的な税額の計算や申告については税理士の専門領域ですので、税理士または所轄の税務署へご確認ください。当法人では、必要に応じて税理士と連携してお手伝いしています。

よくある質問

家族信託の費用は誰が払うのですか?

財産を託す委託者(親御様)の財産から支払うのが一般的です。家族信託は委託者の財産を守るための仕組みですので、その費用は委託者が負担するという考え方が自然だからです。

ただし、ご家族で分担されるケースもあります。誰が負担するかに法律上の決まりはありませんので、ご家族で話し合って決めていただいて差し支えありません。

家族信託は自分でやれば費用を節約できますか?

制度上は、ご自身で信託契約書を作成することも可能です。専門家報酬の分だけ費用を抑えられるのは事実です。

ただし実務上は、契約書の内容に不備があると信託登記ができなかったり、金融機関が信託口口座の開設に応じなかったりするリスクがあります。金融機関の多くは専門家が関与した公正証書による契約書を口座開設の条件としています。長期にわたって使い続ける契約ですので、費用を抑える目的で自作した結果、いざという時に機能しないのが最も大きな損失になります。

契約後に毎年かかる費用はありますか?

ご家族が受託者を務める一般的な家族信託では、契約後の継続費用は原則かかりません。この点が、後見人報酬が継続する成年後見制度との大きな違いです。

例外として、信託監督人などを専門家に依頼して置く場合はその報酬(月額制が一般的)がかかります。また、月額課金型の民間サポートサービスを利用する場合は、契約期間全体での総額を確認してから判断することをお勧めします。なお、信託した不動産の固定資産税は、信託後も引き続きかかります。

親が認知症と診断されたら、もう家族信託は組めませんか?

信託契約を結ぶには、委託者ご本人に契約内容を理解できる判断能力が必要です。ただし、認知症の診断イコール契約不可というわけではなく、症状の程度によります。公正証書を作成する際には公証人がご本人の意思を確認します。

判断能力がすでに失われている場合、家族信託は利用できず、成年後見制度が選択肢となります。「まだ大丈夫」と思えるうちが、実は最後のタイミングかもしれません。迷われている段階でも、早めにご相談いただくことをお勧めします。

まとめ

家族信託の費用について解説してまいりました。要点を整理いたします。

  • 費用は「専門家報酬」と「法定の実費」の2階建て。内訳はコンサルティング報酬・契約書作成・公証人手数料・登録免許税の4つに分解できる
  • 公証人手数料は公証人手数料令、登録免許税は固定資産税評価額の0.3〜0.4%と法令で決まっており、誰に頼んでも同じ
  • 総額の目安は、金銭のみなら35万〜55万円程度、自宅+金銭なら60万〜90万円程度(事務所・事案により異なる)
  • 銀行の信託商品は金銭中心のパッケージ型、専門家との家族信託は不動産も扱えるオーダーメイド型。目的によって向き不向きがある
  • 財産構成や目的によっては「費用倒れ」になることもある。遺言や任意後見で足りるケースも多く、手段ありきではなく目的から選ぶことが大切
  • 沖縄では信託口口座の事前確認と、軍用地を含む不動産の設計が実務のポイント

家族信託は、費用の絶対額だけを見ると決して安い手続きではありません。しかし、「何のために、どの財産を、誰に任せるのか」が明確になれば、その費用が妥当かどうかはご自身で判断できるようになります。

レスター司法書士法人では、窓口を一つにしてワンストップで対応しております。家族信託が本当に必要かどうかの整理段階からご相談いただけます。初回のご相談は無料で承っておりますので、ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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