皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。
「親から実家を買い取りたい」「知人に土地を譲りたいが、不動産業者に頼むほどの取引ではない」——そのようなご相談を、当事務所でも数多くいただきます。
売買のお相手がすでに決まっているのであれば、不動産業者に仲介を依頼せず、当事者同士で直接取引する「不動産の個人売買(個人間売買)」という選択肢があります。仲介手数料がかからない一方で、契約書の不備や税金面の思わぬ落とし穴など、注意すべきリスクがあるのも事実です。
本日は、不動産の個人売買の流れ、必要書類、契約書や登記の実務、司法書士に依頼できる範囲と費用感、そして「個人売買を選ばないほうがよいケース」まで含めて解説いたします。
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不動産の個人売買は可能?仲介業者なしでも取引できます
結論から申し上げますと、不動産の個人売買は法律上可能です。
宅地建物取引業法が規制しているのは、不特定多数を相手に反復継続して「業として」売買や仲介を行う場合です。ご自身が所有する不動産を、親族や知人など特定の相手に一度売却するだけであれば、免許は不要で、当事者同士で自由に取引できるのが原則です。
個人売買が向いているのは「相手が決まっている」ケース
個人売買が現実的な選択肢になるのは、次のようなケースです。
- 親族間の売買:親から子へ実家を売る、兄弟間で相続した土地を買い取るなど
- 知人間の売買:隣地の所有者や長年の知人など、信頼関係のある相手との取引
- 隣接地の売買:庭の一部や通路部分など、買い手が事実上その隣人に限られる土地
逆に、買主をこれから探さなければならない場合は、物件の広告・案内・条件交渉といった仲介業者の役割が大きいため、不動産業者への依頼を検討した方がよいでしょう。
最大のメリットは仲介手数料がかからないこと
不動産業者に仲介を依頼した場合の仲介手数料は、売買価格400万円超の取引では「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限額の目安です。例えば売買価格1,000万円なら約39万6,000円(税込)となり、売主・買主の双方が支払えば合計約80万円にもなります。
個人売買であれば、この仲介手数料が売主・買主ともに一切かかりません。すでにお相手が決まっている取引では、これが最大のメリットです。
不動産の個人売買の流れ|4つのステップ
個人売買は、大きく次の4つのステップで進みます。
- 売買価格の合意(相場の調査)
- 売買契約書の作成・締結
- 決済(代金の支払い)
- 所有権移転登記
ステップ1:売買価格の合意
まず、いくらで売買するかを当事者間で決めます。このとき重要なのは、時価(適正な相場)からかけ離れた価格にしないことです。後述するとおり、時価より著しく低い価格での売買は、税務上「贈与」とみなされるリスクがあるためです。
相場の目安になる指標は複数あり、それぞれ目的が異なります。どれか一つだけを見て決めるのではなく、何のための数字かを理解して組み合わせるのが実務的です。
- 固定資産税評価額:登録免許税の計算根拠になるため必ず使いますが、公示価格の7割程度を目途に評定されており、そのまま売買価格にすると実勢より低くなりがちです
- 相続税路線価:相続税・贈与税の計算に使う土地1㎡あたりの価格。公示価格の8割程度が目安で、税務上いくらと見られているかの手がかりになります
- 近隣の取引事例:国土交通省の不動産情報ライブラリで実際の成約価格を検索できます。実勢価格に最も近い客観資料です
- 不動産会社の査定・不動産鑑定士の鑑定評価:査定は無料のことが多く、鑑定評価書は費用がかかる分第三者に示せる最も説得力のある根拠になります
押さえていただきたいのは、後述する「みなし贈与」との接続です。税務署に説明を求められるのは「なぜこの金額にしたのか」という根拠であり、固定資産税評価額だけを拠り所に安い価格を付けると、実勢価格との差額が贈与とみなされる余地を残します。取引事例や査定など実勢に近い資料を1つは取って保管しておくことをお勧めします(金額の妥当性そのものの判断は税理士にご確認ください)。
ステップ2:売買契約書の作成・締結
価格が決まったら、売買契約書を作成します。個人売買でも契約書の作成は事実上必須と考えてください。口約束のままでは、代金の支払時期、引渡しの条件、契約後に欠陥が見つかった場合の責任(契約不適合責任)などをめぐってトラブルになりかねません。
契約書には、物件の表示(登記記録どおりの正確な記載)、売買代金と支払方法、引渡しと登記の時期、固定資産税の精算、契約不適合責任の取り決めなどを盛り込むのが一般的です。また、不動産の売買契約書は印紙税の課税文書ですので、記載金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。
ステップ3:決済(代金の支払い)
契約内容に従って、買主から売主へ売買代金を支払います。このとき大切なのは、代金の支払いと登記に必要な書類の授受を同時に行うことです。
「代金を払ったのに名義を変えてもらえない」「名義を変えたのに代金が支払われない」という事態を防ぐため、通常の不動産取引では、司法書士が決済の場に立ち会って書類の不備がないことを確認したうえで代金を授受し、その日のうちに登記申請を行います。個人売買でも、この決済立会いの仕組みを利用することで、取引の安全性を大きく高めることができます。
ステップ4:所有権移転登記
決済が済んだら、法務局へ所有権移転登記を申請し、不動産の名義を売主から買主へ変更します。登記手続きの概要は法務局「不動産登記申請手続」で案内されていますが、売買による移転登記は売主・買主の共同申請が原則で、必要書類も多岐にわたります。
書類に一つでも不備があると登記が完了せず、代金を払ったのに名義が変わらない状態が続いてしまうため、この登記部分こそ司法書士の専門領域といえます。
個人売買の必要書類一覧|売主側・買主側
売買による所有権移転登記で一般的に必要になる書類は、次のとおりです。物件や権利関係によって追加の書類が生じることもありますので、基本形としてご覧ください。
【売主側】
- 登記識別情報通知(登記済権利証):売主がその不動産を取得したときに法務局から交付された書類
- 印鑑証明書:作成後3か月以内のものが必要。早く取りすぎると期限切れになるため、決済日程が固まってから取得します
- 実印:登記申請の委任状に押印します
- 固定資産評価証明書:登録免許税の計算に使います。申請する年度のものを市町村で取得します
- 本人確認書類:運転免許証・マイナンバーカードなど顔写真付きのもの
- 住民票・戸籍の附票など:登記記録上の住所・氏名が現在と異なる場合に必要。この場合、売買の前提として登記名義人住所(氏名)変更登記も必要になります
【買主側】
- 住民票:新しい所有者の住所を証明する書類
- 本人確認書類:売主と同様、顔写真付きのものが基本です
- 認印:買主側は委任状に実印までは求められないのが通常です
このほか、売主の住宅ローンが残っていれば金融機関が用意する抵当権抹消の書類、農地であれば農業委員会の許可書等が加わります。なお権利証を紛失している場合でも売買はできますが、法務局からの事前通知に返送する方法か、司法書士が面談して本人確認情報を作成する方法によることになり、通常より日数と費用がかかります。見当たらない段階で早めにご相談ください。
▶ あわせて確認:不動産登記の費用はいくら?種類別の登録免許税と自分でできるかを司法書士が解説/住所変更登記の義務化はいつから?期限・過料5万円・スマート変更登記まで司法書士が解説
個人売買の4つのリスク|正直にお伝えします
仲介手数料がかからない一方で、個人売買には次のようなリスクがあります。メリットだけを見て進める前に、必ず確認しておいてください。
リスク1:住宅ローンが通りにくい
買主が住宅ローンを利用したい場合、個人売買は大きなハードルになります。金融機関の多くは、融資審査にあたって宅地建物取引士が作成する重要事項説明書の提出を求めますが、仲介業者を入れない個人売買ではこの書類が存在しないためです。
特に親族間の売買は、贈与や借金の返済目的といった不自然な取引でないかを厳しく見られるため、住宅ローンの審査はさらに通りにくい傾向があります。買主が融資を前提とする場合は、事前に金融機関へ相談し、必要に応じて仲介業者を入れる方法も含めて検討することをお勧めします。
リスク2:契約書の不備がトラブルに直結する
インターネット上のひな形をそのまま使った契約書には、その物件・その取引に必要な条項が抜けていることが少なくありません。例えば、契約不適合責任(引渡し後に雨漏りやシロアリ被害が見つかった場合の責任)の取り決めがないと、親しい間柄であっても深刻な争いに発展することがあります。
個人売買では「知り合い同士だから大丈夫」と契約書を簡略化しがちですが、むしろ仲介業者のチェックが入らない分、契約書だけが取引の拠り所になります。専門家の関与のもと、実情に合った契約書を作成することが重要です。
リスク3:安すぎる価格は「みなし贈与」の対象になり得る
親族間売買で特に注意が必要なのが、税務上の「みなし贈与」です。時価より著しく低い価額で財産を譲り受けた場合、時価と支払った対価との差額は贈与とみなされ、買主に贈与税が課される場合があります(国税庁タックスアンサーNo.4423「著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」)。
「身内だから安くしてあげたい」という気持ちが、かえって買主に思わぬ税負担を生むことがあるのです。どの程度の価格なら問題ないかは物件や取引の個別事情により異なりますので、価格設定にあたっては税理士や税務署への確認をお勧めします。そもそも「安く売る」のではなく生前贈与として名義を移す選択肢もあり、どちらが適しているかは早い段階で比較しておくと安心です。
▶ あわせて確認:親から子へ不動産の名義変更|生前贈与の費用・税金と800万円課税された実例/実家の売却はいつがベスト?生前と相続後の税金差と600万円増えた実例を司法書士が解説
リスク4:境界・権利関係の確認漏れ
プロの仲介業者が入らない個人売買では、取引の前提となる調査が漏れがちです。
- 境界が確定していない:隣地との境界標がなく、後日境界争いになる
- 抵当権が残っている:売主の住宅ローンの抵当権が抹消されないまま引き渡されてしまう
- 農地である:農地の売買には農業委員会の許可等が必要で、無許可の売買は効力が生じないのが原則
- 私道・持分の見落とし:前面道路の持分が売買対象から漏れる
これらは登記記録や公図、現地の確認である程度把握できます。当事務所でも、ご依頼いただいた際は登記記録の権利関係を確認したうえで手続きを進めています。
補足:契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)の免責特約
2020年4月施行の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に整理されました。引き渡された不動産が契約の内容に適合していなければ、買主は追完・代金減額・損害賠償・契約解除を求めることができます。売主が宅地建物取引業者ではない個人売買では、「売主は契約不適合責任を負わない」という免責特約を入れること自体は有効で、古い建物を現況有姿で引き渡す取引では実務上よく用いられます。
ただし落とし穴があります。民法上、売主が知りながら買主に告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れることができないとされています。「雨漏りに気づいていたが黙っていた」という場合です。そこで実務では、免責特約とセットで、売主が把握している不具合を物件状況報告書などの書面に残して買主に伝え、承知のうえで買うという合意にしておきます。なお、すでに不具合をめぐって争いが生じている場合の交渉は弁護士の領域です。
個人売買が向かないケース|仲介や買取のほうがよい場面
司法書士として正直に申し上げると、個人売買が適していない場面もはっきりあります。次のいずれかに当てはまる場合は、仲介や買取のほうが結果的に安全で早いことが少なくありません。
- 買主がまだ決まっていない:広告・内覧対応・条件交渉をすべて自力で担うことになり、売却まで何年もかかったり不利な条件で妥協したりしがちです。仲介か、価格は下がるものの期間の読める買取と比較検討したほうが合理的です
- 買主が住宅ローンを使う:重要事項説明書がないため審査が通らない、取扱い自体を断られることがあります。決済直前に融資が下りないと双方が大きな時間を失うため、手数料を払ってでも仲介業者を入れるほうが成立率は上がります
- 相手と利害が対立している:条件をめぐってすでに意見が割れているなら、中立の第三者が入るほうが前に進みます。法的な争いになっていれば弁護士が代理人として交渉する領域で、司法書士が一方の代理人として交渉することはできません
逆に、「相手が決まっている・話がまとまっている・自己資金で決済できる」の3条件がそろえば、個人売買は非常に相性のよい選択肢です。まずはこの見極めからご相談いただくのがよいと考えています。
本人確認・意思確認をどう担保するか|個人売買での司法書士の役割
個人売買は「仲介手数料が浮く」という話が中心になりがちですが、当事務所が最も価値があると考えているのは本人確認と登記意思の確認です。
司法書士が登記申請の代理を受けるときは、依頼者が登記名義人本人であることと、その登記を申請する意思が本当にあることを、本人確認書類・面談での聞き取り・権利証など本人しか持ち得ない資料の確認を組み合わせて確かめます。仲介業者が入る取引では業者が事前に当事者の素性を確認しますが、個人売買にはこの層がありません。だからこそ、決済・登記の場面での確認の意味が通常の取引よりむしろ大きくなります。
この確認が守っているのは、大きく2つのリスクです。
- なりすまし(買主を守る):所有者になりすました人物との売買では、代金を支払っても買主は所有権を取得できません。本人確認は、買主の代金を守る手続きでもあります
- 後からの無効主張(双方を守る):高齢の親から子への売買などで、後日ほかの親族から「あの時点で判断能力がなかったのでは」と争われることがあります。第三者である司法書士が面談し、意思を確認したうえで登記したという事実は、その備えになります
親族間の売買ほど、その場にいなかった親族から後になって問題が表面化します。判断能力に不安のある方が当事者になる場合は、成年後見制度の利用を検討すべきかという判断も必要になりますので、事前にご相談ください。
個人売買で司法書士に依頼できる範囲と費用の目安
「仲介業者を入れないなら、誰に何を頼めばいいのか」——個人売買で司法書士がお手伝いできるのは、主に次の3つです。
- 売買契約書の作成:取引の実情に合わせた契約書の作成
- 決済の立会い:代金支払いと書類授受の同時履行の確認
- 所有権移転登記:法務局への登記申請(司法書士の専門業務)
つまり、「買主を探す」以外の、取引の安全に関わる部分を一括してサポートできるということです。なお、売買の条件をめぐって当事者間にすでに争いがある場合の交渉や解決は弁護士の領域となりますので、その際は弁護士をご紹介するなど適切な窓口へおつなぎします。
必ずかかる実費(法定費用)
誰に依頼するかにかかわらず、個人売買では次の実費がかかります。
- 登録免許税:売買による所有権移転登記では、固定資産税評価額の1,000分の20(2%)が原則です。土地の売買については時限的な軽減税率が設けられてきた経緯があり、適用期限が定められているため、最新の税率は国税庁タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」でご確認ください
- 印紙税:売買契約書に貼付する収入印紙。記載金額により異なり、例えば1,000万円超5,000万円以下の契約書は本則2万円です(不動産譲渡契約書には期限付きの軽減措置があります。金額は国税庁タックスアンサーNo.7140「印紙税額の一覧表」参照)
- 証明書等の取得費用:印鑑証明書・住民票・固定資産評価証明書・登記事項証明書などの発行手数料
司法書士の報酬はどのくらい?
司法書士の報酬は自由化されており、事務所により異なります。あくまで一般的な相場観としては、所有権移転登記のみの依頼で数万円台から、契約書の作成や決済立会いまで含めた個人売買のトータルサポートでは10万円前後からが一つの目安とされていますが、物件の数や権利関係の複雑さによって変わります。
それでも、売主・買主双方で数十万円規模になる仲介手数料と比べれば、費用を大きく抑えられるケースが多いといえます。当事務所では初回のご相談は無料で承っておりますので、お見積りを含めてお気軽にお問い合わせください。
相談のタイミングは「契約書を作る前」がおすすめ
ご相談で多いのは「契約書にサインしたので登記をお願いしたい」という段階ですが、本来は契約書を作る前のほうが選択肢が残ります。理由は、①抵当権・差押え・相続登記の未了といった事情は、契約前にわかっていれば契約条件に織り込めるが、契約後の判明では作り直しになる、②みなし贈与や譲渡所得の問題は価格が決まる前でなければ手の打ちようがない、③権利証の紛失や登記上の住所の相違など、決済日から逆算して段取りが要る事項がある——の3点です。「まだ売ると決めていない」という段階でも構いません。
個人売買の税金|売主の譲渡所得にも注意
買主側の「みなし贈与」のリスクは先ほど触れましたが、売主側にも税金の問題があります。
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、売主には所得税・住民税がかかります。譲渡所得は「収入金額-(取得費+譲渡費用)」で計算されるのが原則です(国税庁タックスアンサーNo.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」)。
ここで注意したいのが、マイホームを売ったときの3,000万円特別控除です。この特例は、配偶者や親子など「特別の関係がある人」への売却には適用されないのが原則です。「親子間だから税金も安く済むだろう」と考えていると、想定外の税負担が生じることがあります。
税額の具体的な計算や特例の適用可否の判断は税理士の専門領域です。当事務所では提携する税理士と連携して対応しておりますので、税金面のご不安がある方もまとめてご相談いただけます。
売買契約書に貼る印紙税
不動産の売買契約書は印紙税の課税文書で、税額は契約書に記載された売買金額に応じて変わります。期限付きの軽減措置が設けられている期間もあるため、作成時点の最新の一覧表で確認するのが確実です。個人売買で見落とされやすいのは、契約書を2通作れば2通とも課税文書になる点です。原本を1通だけ作り他方は写しを保有して費用を抑える方法もありますが、写しは証拠としての力が劣ります。
なお、印紙を貼らなくても契約が無効になるわけではありませんが、貼り忘れが判明すると本来の印紙税額に加えて過怠税が課される取扱いです(自主的に申し出た場合は軽減されます。国税庁タックスアンサーNo.7131「印紙税を納めなかったとき」)。
個人間の不動産売買に消費税はかかる?
個人の方がご自宅などの居住用不動産を売る場合、売買代金に消費税はかかりません。消費税は事業として行われる取引に課されるもので、個人が生活の用に供していた資産の売却はこれに当たらないためです。また、土地の譲渡はそもそも非課税とされています(国税庁タックスアンサーNo.6201「非課税となる取引」)。
一方で、事業者が事業用の不動産を売る場合は、建物部分に消費税がかかり得ます。アパートや店舗などの収益物件が典型で、契約書で土地と建物の代金を区分する必要も出てきます。課税事業者に当たるかどうかを含め、税理士にご確認ください。
沖縄で多い個人売買|親族間の実家・軍用地
沖縄県内で当事務所がご相談を受ける個人売買には、地域ならではの傾向があります。
親族間での実家・相続不動産の売買
沖縄では、先祖代々の土地や実家を「他人に売りたくない」というお気持ちから、親族間で買い取る形を選ばれる方が少なくありません。例えば、実家を相続した長男が県外に住んでおり、地元に残る弟妹が実家を買い取るといったケースです。こうした親族間売買では、前述のみなし贈与のリスクや住宅ローンの通りにくさが特に問題になりやすいため、価格設定の段階からご相談いただくのが安心です。
また、売買の前提として相続登記が済んでいないことも実務ではよくあります。名義がお父様やお祖父様のままの不動産は、そのままでは買主に名義を移せません。売買の話が出た段階で登記記録を確認しておくことをお勧めします。
なお、相続した実家については、そもそも「売るなら相続の前か後か」というタイミングの問題もあります。詳しくは、相続前と相続後の実家売却の判断ポイントを解説した記事をあわせてご覧ください。

▶ あわせて確認:相続の実家じまいタイミングは?司法書士が解説する5つのステップ/相続登記の費用相場|登録免許税・司法書士報酬・実費を計算例で解説【沖縄】
軍用地の個人売買
沖縄特有の取引として、軍用地(米軍基地等に提供されている土地)の売買があります。軍用地は年間の軍用地料に一定の倍率を掛けて取引価格の目安とする独特の慣行があり、投資対象として親族間・知人間で直接売買されることもあります。
軍用地であっても、所有権移転登記が必要であることは通常の土地と変わりません。加えて、地主会への届出や軍用地料の振込先変更といった固有の手続きが伴い、返還予定の有無など確認すべき事情もあります。県内の登記実務に慣れた専門家への相談をお勧めします。
▶ あわせて確認:沖縄の軍用地を相続したら?評価・名義変更・分割の手続きを司法書士が解説
すでに売買のお相手が決まっている方から、「仲介業者を入れずに不動産を売買したい」というご相談をいただいたケースです。当事務所で売買契約書の作成から決済の立会い、所有権移転登記の申請までを一括してサポートし、無事にお引渡しまで完了しました。
仲介手数料をかけずに、契約・決済・登記という取引の安全に関わる部分だけを専門家が確認する——個人間売買では、このような進め方が可能です。売主様・買主様の双方に手続きの流れと必要書類をご案内しながら進めますので、「何から手をつければよいかわからない」という段階からでもご相談いただけます。
よくある質問
不動産の個人売買は違法ではありませんか?
違法ではありません。宅地建物取引業法の免許が必要になるのは、不特定多数を相手に反復継続して「業として」売買等を行う場合です。ご自身の不動産を特定の相手に売却する通常の個人売買は、免許がなくても行えるのが原則です。
ただし、複数の物件を繰り返し売買するような場合には「業として」に該当しないかの検討が必要になることもあります。ご不安な場合は事前にご相談ください。
契約書は自分たちで作成してもよいですか?
法律上は、当事者同士で作成した契約書でも契約は有効に成立します。しかし、ひな形の流用では契約不適合責任や引渡し条件など、その取引に必要な条項が漏れやすく、トラブルの原因になりがちです。
個人売買では仲介業者のチェックが入らない分、契約書が取引の唯一の拠り所になります。金額の大きな取引ですので、専門家の関与のもとで作成されることをお勧めします。
司法書士費用は売主と買主のどちらが負担しますか?
法律で決まっているわけではなく、当事者間の合意で自由に決められます。実務上は、所有権移転登記の費用(登録免許税・司法書士報酬)は登記によって利益を受ける買主が負担し、売主の住所変更登記や抵当権抹消登記の費用は売主が負担する、という分け方が一般的です。
契約書作成や決済立会いの費用を折半とするケースもあります。後日の行き違いを防ぐため、費用負担も契約書に明記しておくと安心です。
親族間売買の価格はどのように決めればよいですか?
時価とかけ離れない価格にすることが大原則です。固定資産税評価額や相続税路線価、近隣の取引事例などを参考に、第三者に説明できる根拠を持って決めることをお勧めします。
時価より著しく低い価格にすると、差額に贈与税が課されるリスクがあります。どの程度なら問題ないかは個別事情により異なるため、価格の妥当性については税理士や税務署への確認をあわせてご検討ください。
親子間の売買でも司法書士に依頼する必要はありますか?
依頼が法律上の義務というわけではありませんが、親子間だからこそご依頼いただく意味は大きいと考えています。価格がみなし贈与とみなされないか、特例が使えるか、住宅ローンが通るかといった論点が集中するうえ、第三者である司法書士が本人確認と登記意思の確認を行った記録が残ることは、後日ほかのご親族から取引の有効性を指摘されたときの備えになるためです。
買主が住宅ローンを使えないとき、資金はどう用意すればよいですか?
実務でよく取られるのは、自己資金で賄う、残代金の分割払いを契約書に定める、親族から借り入れる、といった方法です。ただし分割払いでは、完済前に名義だけ移すと売主が代金を回収できなくなるため、抵当権の設定など担保の取り決めが必要です。親族からの借入れも、借用書と実際の返済記録がないと贈与とみなされることがあります。どうしても融資が必要なら、仲介業者を入れる選択肢も含めて比較されることをお勧めします。
登記だけ自分ですることはできますか?
所有権移転登記をご本人で申請すること自体は可能で、売主・買主が共同で法務局へ申請します。ただし売買の登記でお勧めしにくいのは、代金の支払いと名義の移転を同時に行う仕組みが作れないためです。登記は申請から完了まで日数がかかるため、「代金を払ったが登記が通らなかった」「名義は移ったが代金を回収できない」という事態が起きると、当事者だけでは修復が困難です。金額の大きな取引では、この部分だけでもお任せいただくほうが安全です。
▶ あわせて確認:沖縄で司法書士に相談・依頼する完全ガイド|費用相場と失敗しない選び方/不動産登記の費用はいくら?種類別の登録免許税と自分でできるかを司法書士が解説
まとめ
不動産の個人売買について解説してまいりました。要点を整理いたします。
- 不動産の個人売買は法律上可能。親族間・知人間など相手が決まっている取引では、仲介手数料を抑えられる有効な選択肢
- 流れは「価格合意→売買契約書→決済→所有権移転登記」の4ステップ
- 必要書類は売主が権利証・印鑑証明書(3か月以内)・実印・固定資産評価証明書・本人確認書類、買主が住民票・本人確認書類が基本
- 価格は固定資産税評価額・相続税路線価・取引事例・査定を目的別に使い分け、実勢に近い根拠資料を残す
- リスクは住宅ローン・契約書の不備・みなし贈与・境界や権利関係の確認漏れの4つ。契約不適合責任は免責特約が通例だが、知りながら告げなかった事実には免責が及ばない
- 買主が未定・住宅ローンを使う・相手と揉めている場合は、仲介や買取のほうが安全で早い
- 司法書士には契約書作成・決済立会い・登記申請を一括で依頼できる。相談は契約書を作る前が理想で、本人確認・登記意思の確認がなりすましと後日の無効主張への防波堤になる
- 税金(みなし贈与・譲渡所得・印紙税・消費税・特例の適用可否)は個別事情により異なるため、税理士・税務署への確認を
- 沖縄では親族間の実家売買や軍用地の売買など、地域特有の個人売買も多い
個人売買は「仲介手数料を節約できる」という入口で語られがちですが、本当に大切なのは、数百万円・数千万円という大きな財産のやり取りを安全に完了させることです。まずはご自身のケースで個人売買が適しているのかどうか、その見極めからお手伝いいたします。
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