皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。
「親の成年後見を申し立てることにしたが、必要書類の多さに驚いた」「診断書を先にもらったら、ほかの書類を集めているうちに期限が切れそうになった」。成年後見の申立ては、書類の種類が多いうえに、集める順番を間違えると二度手間になりやすい手続きです。
しかも、提出を求められる書類や郵便切手の額は家庭裁判所ごとに少しずつ異なります。インターネットで見つけた一覧が、申立先の裁判所の案内と一致しているとは限りません。
本日は、那覇家庭裁判所の「成年後見申立ての手引」のチェック表に沿って、成年後見の申立てに必要な書類と費用、そして書類を集める順番を解説いたします。
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成年後見の申立て書類は大きく4つのグループに分かれます
結論から申し上げますと、成年後見の申立てに必要な書類は、次の4つのグループに整理できます。
- 申立書類と費用:申立書、収入印紙、郵便切手
- 本人についての書類:診断書、本人情報シート、戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書、申立事情説明書、親族関係図、親族の意見書、財産目録・収支予定表
- 本人の財産・収支の資料:通帳のコピー、保険証書、不動産の登記事項証明書、年金や施設費の資料など
- 後見人等候補者についての書類:住民票、後見人等候補者事情説明書
全国共通の概要は、裁判所の後見開始の手続案内に掲載されています。そのうえで、実際の提出物は申立先の家庭裁判所の案内で確認します。沖縄県内にお住まいの方の申立先は那覇家庭裁判所(本庁または支部)ですので、以下は那覇家庭裁判所の成年後見申立ての手引(令和6年10月版)のチェック表をもとに解説します。
那覇家庭裁判所のチェック表で見る必要書類
| 書類 | 取り寄せ先 | 注意点 |
|---|---|---|
| 診断書(成年後見制度用)・診断書付票 | 病院 | かかりつけ医などに作成を依頼。発行後3か月以内 |
| 本人情報シートの写し | 施設等 | 福祉関係者が作成。原本は医師へ、写しを裁判所へ |
| 療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のコピー | - | お持ちの場合のみ |
| 本人の戸籍謄本 | 市町村役場・コンビニ | 発行後3か月以内 |
| 本人の住民票 | 市町村役場・コンビニ | マイナンバーの記載がないもの。戸籍附票でも可。3か月以内 |
| 登記されていないことの証明書 | 那覇地方法務局・東京法務局 | 発行後3か月以内 |
| 申立事情説明書・親族関係図 | - | 書式に記入 |
| 親族の意見書 | - | 本人の推定相続人に記載してもらう |
| 財産目録・相続財産目録・収支予定表 | - | 控えのコピーを手元に保管 |
| 財産・収支の資料 | - | マイナンバーの記載がないもの |
| 候補者の住民票 | 市町村役場・コンビニ | マイナンバーの記載がないもの。3か月以内 |
| 後見人等候補者事情説明書 | - | 書式に記入 |
コンビニで戸籍謄本や住民票を取るにはマイナンバーカードが必要です。また、申立人と本人の関係によっては、戸籍の追加を求められることがあります。
申立てにかかる費用(那覇家庭裁判所の公表手引による)
- 申立手数料(収入印紙):後見・保佐開始のみは800円分。保佐・補助で代理権付与または同意権付与を加えると1,600円分、両方で2,400円分
- 登記手数料(収入印紙):2,600円分
- 郵便切手:手引掲載額は後見3,170円分、保佐・補助4,500円分(券種も指定されています。提出前に申立先の最新案内で確認してください)
- 鑑定費用:鑑定を実施する場合のみ。通常5万〜10万円
手引では、戸籍謄本などの取得費用を含めて1万〜2万円程度かかり、これらは原則として申立人の負担とされています。また、書類の作成を弁護士や司法書士に依頼した報酬は本人の負担にできないと明記されています。費用の全体像と開始後の報酬については、成年後見の費用はいくら?申立時の実費と毎月の報酬を司法書士が解説をご覧ください。
書類を集める順番|本人情報シートから始める
必要書類のうち、診断書、戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書は発行後3か月以内のものが求められます。期限のある書類を先に取ると、ほかの準備に時間がかかったときに取り直しになります。次の順番で進めると無駄が出にくくなります。
- 福祉関係者に本人情報シートの作成を依頼する
- 財産・収支の資料を集め、財産目録と収支予定表の下書きを作る
- 親族関係図を作り、親族の意見書を依頼する
- 本人情報シートの原本を医師に渡し、診断書の作成を依頼する
- 戸籍謄本・住民票・登記されていないことの証明書を取得する
- 申立書・申立事情説明書・候補者事情説明書を仕上げ、チェック表で最終確認する
本人情報シートとは
本人情報シートは、ケアマネジャーや施設・病院の相談員など、日頃から本人を支援している福祉関係者が作成する書類です。本人の生活状況や支援の状況をまとめたもので、医師が判断能力について診断する際の補助資料として使われます。
那覇家庭裁判所の手引では、本人情報シートの原本は診断書を作成する医師に提出し、裁判所には写しを提出するよう案内されています。医師に診断書を依頼する前にシートを用意しておくのが、この順番の理由です。
診断書は「成年後見制度用」を使う
診断書は、通常の診断書ではなく、家庭裁判所が定める成年後見制度用の書式と診断書付票を使います。手引では、後見・保佐・補助のどの申立てをするかは、診断書の「判断能力についての意見」欄を参考にするよう案内されています。類型の選択は診断書を受け取ってから確定させる、と考えておくとよいでしょう。
登記されていないことの証明書は取得場所に注意
本人がすでに後見等を受けていないことを証明する書類です。手引によると、窓口で請求する場合、沖縄県内では那覇地方法務局(那覇市樋川)が唯一の窓口で、支局や出張所では取り扱っていません。郵送で請求する場合は東京法務局の後見登録課が取り扱います。
申請書では、証明事項欄の「成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする記録がない」にチェックを入れます。本人以外の親族が請求する場合は、親族関係を示す戸籍などの添付が必要です。宮古・八重山や本島北部にお住まいの方は、郵送請求の日数も見込んでおきましょう。
財産・収支の資料のそろえ方
手引のチェック表②では、次の資料を求めています。不動産の登記事項証明書のみ原本で、それ以外はすべてコピーを提出します。
- 預貯金:通帳のコピー(最新の残高を記帳し、表紙、表紙の次の見開き、少なくとも過去1年分の記帳ページ)、通帳がなければ残高証明書
- 有価証券:証券会社の取引残高報告書など
- 生命保険など:保険証書(表裏両面)
- 負債:ローン契約書や借用書、返済明細書
- 不動産:不動産の登記事項証明書(原本)
- 収入:給与明細書、年金証書、年金改定の通知書、年金の振込口座の通帳
- 支出:施設利用料・入院費の領収書、健康保険料・介護保険料・固定資産税の納付書、地代・家賃の領収書
コピーはA4用紙を使い、左端に3センチの余白を取ります。通帳のコピーには、表紙の右上に財産目録の番号(「財1-2」など)を書き込むよう案内されています。
提出前に照合しておきたいポイント
- 財産目録の預金残高と、通帳コピーの最終残高が一致しているか
- 財産目録の不動産と、登記事項証明書・固定資産税の納税通知書の地番や家屋番号が一致しているか
- 収支予定表の金額と、年金通知書や施設の領収書の金額が合っているか
- 親族関係図と戸籍の内容が一致しているか
- 本人が亡くなった親族の相続人で、遺産分割が終わっていない財産がある場合は、相続財産目録を作っているか
財産目録と資料の数字が食い違っていると、裁判所から確認を求められ、手続きが長引く原因になります。
書類がそろった後の流れ
書類は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に持参または郵送で提出します。手引では、申立人と候補者の面談(説明聴取)の日程を事前に申立先の家庭裁判所へ問い合わせるよう案内されています。面談の当日は、申立人だけでなく候補者も一緒に出向きます。
申立てから後見人等が決まるまでの期間は、ケースによって異なりますが1〜3か月程度とされています。鑑定や親族への照会がある場合は長くなることもあります。また、申立て後は家庭裁判所の許可がなければ取り下げられず、希望する候補者が選ばれそうにないという理由では原則として取下げは認められません。誰が後見人に選ばれるかについては成年後見人になれる人とは?家族が選ばれるための条件とポイントを司法書士が解説をご覧ください。
司法書士ができるのは「書類作成」の支援です
司法書士は、司法書士法第3条に基づき、裁判所に提出する書類の作成を業務として行えます。申立書や財産目録、収支予定表などの作成と、戸籍などの収集をお手伝いできます。
ここではご家族が申し立てる場合を想定しています。法律上は本人、配偶者、四親等内の親族などに申立資格があり、一定の場合は市町村長も申し立てられます。書類作成を依頼した司法書士が当然に申立人や手続代理人になるわけではなく、申立人が提出する書類の作成を支援する立場です。面談にはご家族と候補者が出向くことになります。相談先の違いは成年後見は誰に相談すべき?司法書士・弁護士・行政書士の違いを司法書士が解説で詳しく整理しています。
県外のご家族が沖縄の親の申立てをするとき
申立先は本人の住所地の家庭裁判所ですので、申立人が県外に住んでいても、沖縄にお住まいの親御さんの申立ては那覇家庭裁判所の本庁または支部に行います。那覇家庭裁判所の成年後見制度のページから、申立書の記載例や財産目録の記載例をダウンロードできます。
県外にいながら準備を進める場合は、本人情報シートと診断書の依頼を先に済ませ、帰省の日程に合わせて通帳の記帳や面談日を組むと効率的です。なお、成年後見制度を見直す改正法が2026年6月に成立しましたが、成年後見に関する部分の施行日は2026年9月時点で決まっていません。今の申立ては現行の書式と手続きで進みます。改正の内容は【2026年成立】成年後見制度の改正で何が変わる?いつから施行かと今の判断を司法書士が解説をご覧ください。
よくある質問
書類の有効期限が切れたらどうなりますか?
那覇家庭裁判所の手引では、診断書、戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書は発行後3か月以内のものを提出するよう求めています。期限を過ぎたものは取り直しが必要になると考えてください。
特に診断書は取り直しに時間と費用がかかります。ほかの書類の準備が整う見通しが立ってから依頼するのが安全です。
親族の意見書は全員から集める必要がありますか?
チェック表では、本人の推定相続人に記載してもらうよう案内されています。反対している親族がいる場合でも申立て自体はできますが、親族間の意見の対立は、専門職が後見人に選ばれる事情になり得ます。事前に方針を共有しておくことが大切です。
本人情報シートを書いてくれる人がいない場合は?
チェック表では、本人を日頃から支援している福祉関係者等がいる場合に作成してもらうとされています。介護サービスを利用していない場合は、まずお住まいの地域の地域包括支援センターに相談してみてください。
家族だけで申立てをすることはできますか?
できます。手引もご家族が自ら準備することを前提に書かれています。ただし、平日に病院・役所・法務局を回る必要があり、財産目録の作成にも時間がかかります。書類作成だけを専門家に依頼する方法もありますので、負担に応じて選んでください。
まとめ
成年後見の申立てに必要な書類について解説してまいりました。要点を整理いたします。
- 書類は「申立書類と費用」「本人の書類」「財産・収支の資料」「候補者の書類」の4グループ。申立先の家庭裁判所のチェック表で確認する
- 那覇家庭裁判所では、印紙800円(後見)+2,600円、切手は後見3,170円・保佐補助4,500円。鑑定は実施時のみ5万〜10万円
- 本人情報シート→財産資料→診断書→戸籍・住民票・証明書の順で集めると、3か月の期限切れを防ぎやすい
- 登記されていないことの証明書は、県内窓口は那覇地方法務局のみ。郵送は東京法務局
- 司法書士は書類作成を支援する立場。那覇家裁の手引では、申立書類の作成を専門家に依頼した報酬は本人の負担にできないとされている
成年後見の申立ては、書類をそろえる段取りで手続きの長さが大きく変わります。どこから手をつければよいか迷われたら、まずは全体の順番を確認するところから始めてみてください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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