皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。
「不動産の登記を家族や司法書士に任せたいけれど、委任状には何を書けばいいのか」「実印を押して印鑑証明書まで渡して大丈夫なのか」と不安に感じていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。
委任状は一枚の短い書類ですが、そこに書かれた範囲で他人があなたの代わりに登記を申請できるようになります。書き方を誤ると登記が通らないだけでなく、空欄のある委任状が思わぬ使われ方をする心配もあります。
また、「委任状には必ず実印と印鑑証明書が必要」と思われがちですが、実際には登記の種類や立場によって扱いが異なります。
本日は、不動産登記の委任状について、売買そのものの代理との違い、法務局の記載例に沿った書き方、白紙委任状を避けるべき理由、印鑑証明書が必要になる場合と不要な場合まで解説いたします。
レスター司法書士法人の公式LINEでは、相続に役立つチェックリストを無料プレゼントしています!
ほかにも、LINE限定の無料Zoom相談もご用意しておりますので、この機会にぜひご登録ください。
不動産登記の委任状とは|「登記を申請する権限」を渡す書類
結論から申し上げますと、不動産登記の委任状は、登記の申請手続きを代理人に任せることを証明する書類です。売ったり買ったりする判断を任せる書類ではありません。
登記は本人が申請するのが原則ですが、代理人に申請してもらうこともできます。その場合、代理人に権限があることを法務局に示すため、申請書に委任状を添付します。法令上は「代理権限証明情報」と呼ばれ、不動産登記令で添付が求められています。
委任状が要らないのは「本人が自分で申請する」とき
ご自身が申請人として申請書を作成し、申請する場合は委任状は不要です。完成した書類を家族が単に持参する「使者」と、申請・補正を任せる「代理人」は区別してください。一方、次のように代理申請を任せる場面では委任状が必要になります。
- 司法書士に登記申請を依頼する
- 売主が、買主に登記の申請を任せる
- 相続人の一人が、他の相続人を代理して申請する(法定相続分による相続登記を一人が全員のために申請する場合など、代理によらない手続きは別です)
- 平日に法務局へ行けないため、家族に提出や補正を任せる
「登記の委任」と「売買の代理」はまったく別物です
ここは特に誤解が多いところですので、先に整理しておきます。
登記の委任状で任せるのは、すでに決まった権利の変動(売買・相続・贈与など)を登記簿に反映させる手続きです。これに対して、売買の代理とは、代理人が本人に代わって「いくらで、誰に売るか」を決めて契約を結ぶことを指します。任せる内容の重さがまったく違います。
| 項目 | 登記申請の委任状 | 売買契約の代理(委任状) |
|---|---|---|
| 任せる内容 | 決まった権利変動を登記する手続き | 売買価格・相手方・条件を決めて契約する |
| 本人の判断 | 契約や遺産分割などで、すでに本人が決めている | 代理人に判断を委ねる部分がある |
| 典型的な受任者 | 司法書士、買主、家族 | 家族、不動産の代理を引き受けた人 |
| 主なリスク | 記載の誤りによる補正・却下 | 本人の意図と違う契約が成立するおそれ |
民法第108条は、同じ法律行為で当事者双方の代理人になることを原則として禁じていますが、「債務の履行」はその例外とされています(民法)。売買の決済で司法書士が売主と買主の双方から登記の委任を受けられるのは、登記申請が契約で決まったことを実行する手続きだからです。
裏を返せば、登記の委任状を渡しただけで、売却の判断まで任せたことにはなりません。親の不動産を子が代わりに売りたいという場合、必要なのは登記の委任状ではなく、売買そのものについての本人の意思確認です。本人の判断能力が低下している場合は、委任状では解決できず、成年後見など別の制度の検討が必要になります。
委任状の書き方|法務局の記載例に沿って確認する
様式は法律で決まっているわけではありませんが、法務局の「不動産登記の申請書様式について」に登記の種類ごとの記載例が公開されています。売買の記載例(売主が買主に申請を委任する例)では、委任状に次の項目が並んでいます。
- 受任者(代理人)の住所・氏名
- 委任する権限(登記申請書の作成・提出、登記識別情報通知書と登記完了証の受領、取下げ・補正、登録免許税の還付金の受領など)
- 委任状の作成日
- 委任者(本人)の住所・氏名と押印
- 「記」以下に、登記の目的・原因・権利者・義務者・不動産の表示
不動産の表示は登記記録どおりに書く
どの不動産の登記を任せるのかを特定するのが「不動産の表示」です。土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積を、登記事項証明書に記録されているとおりに書きます。住所(住居表示)と地番は異なることが多いため、固定資産税の納税通知書や住所から書き写すのは避けてください。
法務局の記載例では、申請書に不動産番号を書けば所在・地番などの記載を省略できる扱いも示されています。ただ、委任状は本人が内容を確認して押印する書類ですので、どの物件なのかが本人にも読み取れる書き方をお勧めします。
本人の住所・氏名は登記記録と照合する
委任者の住所・氏名は現在の正しい内容で記載し、登記記録と照合します。売買による所有権移転などで売主の登記上の住所が古い場合は、原則として、その前提となる住所変更登記も必要です。古い住所をそのまま委任状に書けばよいわけではありません。委任状を書く前に、登記事項証明書と印鑑証明書(または住民票)を並べて、次の点を照合しておくと安心です。
- 住所の番地・号の表記(「2丁目12番地」と「2-12」の違いなど)
- 氏名の漢字(旧字体・異体字)
- 共有の場合の持分の記載
- 土地と建物、敷地権付きマンションの専有部分など、登記すべき不動産の漏れ
白紙委任状を避けるべき理由
受任者の名前や不動産の表示、登記の目的が空欄のまま実印を押した委任状は、いわゆる白紙委任状です。「あとで埋めておきます」と言われても、応じないのが原則です。
空欄があると、誰がどの不動産について何の登記をするのかが本人の手を離れてしまいます。本来予定していなかった物件や、予定していなかった種類の登記に使われても、委任状の外形からは見分けがつきません。捨印も同様で、訂正できる範囲が本人の想定を超えるおそれがあります。
- 受任者の住所・氏名が書かれているか
- 登記の目的・原因(「所有権移転」「令和◯年◯月◯日売買」など)が書かれているか
- 不動産の表示が登記記録と一致し、対象外の物件が入っていないか
- 空欄の行や、意味の分からない権限が書かれていないか
司法書士に依頼する場合でも、委任状の内容を説明し、本人の意思を確認したうえで押印していただくのが通常の流れです。内容の説明がないまま押印を求められたときは、遠慮なく質問してください。
印鑑証明書は常に必要とは限りません
不動産登記令第18条は、代理人によって申請する場合、本人が委任状に記名押印し、印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)を添付することを原則としています。ただし、不動産登記規則第49条・第48条・第47条で例外が定められており、実務では「所有権の登記名義人が、自分の権利を手放す側(登記義務者)として申請するかどうか」が大きな分かれ目になります。
| 場面 | 委任状の押印 | 印鑑証明書 |
|---|---|---|
| 売買の売主(所有権の登記名義人・義務者) | 実印 | 必要(作成後3か月以内) |
| 贈与する側(所有権の登記名義人・義務者) | 実印 | 必要(作成後3か月以内) |
| 売買・贈与で取得する側(権利者) | 認印で足りるのが通常 | 委任状には不要 |
| 相続登記を申請する相続人 | 認印で足りるのが通常 | 委任状には不要 |
| 自分の住所・氏名の変更登記 | 認印で足りるのが通常 | 委任状には不要 |
表は代表的な場面を整理したもので、個別の事情によって扱いが異なる場合があります。たとえば相続登記の委任状に印鑑証明書が不要でも、遺産分割協議書には相続人全員の実印と印鑑証明書を添付するのが一般的です。「委任状のための印鑑証明書」と「別の添付書類のための印鑑証明書」を混同しないようご注意ください。
なお、法人が申請人となる場合、登記所に印鑑を届け出ている代表者が記名押印し、会社法人等番号を申請情報に記載すれば、代表者の印鑑証明書の添付を省略できる扱いがあります。
誰を受任者にするか|家族か司法書士か
法務局の記載例が、売主が買主に申請を任せる形になっているとおり、受任者は資格者に限られるわけではありません。ご家族に提出や補正を任せることも考えられます。
一方、他人の依頼を受けて登記の申請を代理することを業として行えるのは、原則として司法書士(および弁護士)です(司法書士法第3条・第73条)。また、法務局の登記手続案内は、原則として本人が申請人として手続きをする方を対象にしています。
家族に任せるか専門家に任せるかは、次の観点で判断されるとよいと思います。
- 補正の連絡に平日の日中に対応できるか
- 登記記録と書類の照合を自分たちでできるか
- 売主と買主のように利害が向かい合う当事者がいるか
- 決済日など、登記が遅れると困る期日があるか
売買のように代金の支払いと登記が同時に進む取引では、本人確認と意思確認を第三者の立場で行う意味が大きくなります。個人間売買の流れと司法書士の役割は、不動産の個人売買の解説記事で詳しく整理しています。
委任した後に本人が亡くなった場合
委任状を渡した後、申請前に本人が亡くなることもあり得ます。不動産登記法第17条は、登記の申請についての委任による代理権は本人の死亡によって消滅しないと定めています(不動産登記法)。売主が決済後に亡くなった場合でも、生前に受けた委任にもとづいて登記を申請できるということです。
ただし、個別の事情で取扱いが変わる余地もありますので、このような事態が生じたときは早めに専門家へご相談ください。
2026年10月5日以降の申請で確認しておきたいこと
所有権の保存や移転の登記では、新たに所有者となる方の検索用情報(氏名のふりがな、生年月日、メールアドレスなど)の申出が必要とされています。法務省の案内では、令和8年(2026年)10月5日以降、これに「国籍等」が加わると説明されています。
法務局の記載例も、10月5日以降に申請する場合の様式が別に公開されています。代理人に申請を任せる場合は、これらの情報を代理人に正確に伝える必要がありますので、委任状とあわせて準備しておくとスムーズです。
沖縄で委任状を使うときの実務ポイント
申請先は不動産の所在地で決まる
不動産登記の申請先は、依頼者の住所ではなく不動産の所在地を管轄する法務局です。那覇地方法務局の管轄区域一覧では、不動産登記は本局と沖縄・名護・宮古島・石垣の各支局、宜野湾出張所がそれぞれの地域を担当しています。本島中部の宜野湾市・浦添市・中頭郡の多くは宜野湾出張所の管轄です。
県外・海外にいる相続人や売主がいる場合
沖縄では、相続人や共有者が県外・海外にお住まいのケースが少なくありません。委任状は郵送でやり取りできますが、印鑑証明書が必要な立場の方が海外在住の場合は、印鑑証明書に代わるサイン証明(署名証明)を用意することになります。取得方法はサイン証明書の解説記事をご覧ください。
軍用地など筆数の多い土地
軍用地や代々受け継いだ土地は、筆数が多く、地番が細かく分かれていることがあります。不動産の表示を一筆ずつ登記事項証明書と照合し、漏れや重複がないかを確認することが大切です。一筆でも漏れると、その土地だけ名義が変わらないまま残ってしまいます。
よくある質問
委任状に有効期限はありますか?
委任状そのものについて、法令で有効期限が定められているわけではありません。ただし、委任状に添付する印鑑証明書は作成後3か月以内のものが必要です。作成から時間が経った委任状は、内容が現在の状況と合っているかを確認してから使うのが安全です。
委任状は原本を返してもらえますか?
不動産登記規則第55条により、その申請のためだけに作成された委任状や、委任状に添付した印鑑証明書は原本の還付を受けられません。法務局の案内でも、登記申請用に作成された委任状や印鑑証明書は原本還付ができないとして注意を促しています。取引ごと・登記ごとに作成するものとお考えください。
複数の不動産を1枚の委任状にまとめられますか?
同じ登記の目的・原因で、同じ管轄の法務局に申請するものであれば、1枚の委任状に複数の不動産を記載することが可能です。管轄が異なる場合や登記の種類が異なる場合は、申請ごとに委任状を分けるのが一般的です。
抵当権抹消で金融機関から届いた委任状は、自分で書き直す必要がありますか?
抵当権抹消では、金融機関から所有者あてに委任状が届くのが一般的です。受任者欄などの空欄をどう埋めるかは書類によって異なりますので、書き方は抵当権抹消登記申請書の書き方もあわせてご確認ください。
まとめ
不動産登記の委任状について解説してまいりました。要点を整理いたします。
- 登記の委任状は「登記申請の手続き」を任せる書類で、売買の判断を任せる書類ではない
- 様式は自由だが、法務局の記載例に沿って受任者・権限・登記の目的・原因・不動産の表示を具体的に書く
- 不動産の表示と本人の住所・氏名は、登記記録と一字一句照合する
- 空欄のある白紙委任状には押印しない
- 印鑑証明書が必要なのは、主に所有権の登記名義人が登記義務者となる場合。取得する側や相続登記の委任状では不要なのが通常
- 2026年10月5日以降の所有権の登記では、国籍等を含む検索用情報の申出が必要になる
委任状は短い書類ですが、何を誰に任せるのかを本人が理解したうえで押印することが何より大切です。相続登記の書類全体の流れは相続登記の必要書類の解説記事でもまとめています。
レスター司法書士法人では、窓口を一つにしてワンストップで対応しております。初回のご相談は無料で承っておりますので、委任状の書き方や登記の進め方でご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Contact
まずは、話してみてください。
初回相談は無料です。どんな小さなことでもお気軽にお声がけください。
フォームが表示されない場合は こちらから別画面で開いてください。
Quick Call
098-987-1628Office Hours
平日 8:30 – 17:30


コメント