遺産分割協議書はなぜ必要?基本構成から書き方、NG例まで司法書士が解説

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

遺産分割協議書(相続人全員で遺産の分け方を話し合い、その合意内容をまとめた書類)は、ネットで検索すればサンプルがいくらでも出てきますし、比較的自分でも作れる書類です。

実際に自分で作成して手続きを進めている方も少なくありません。

特に不動産が含まれる場合は注意が必要です。

不動産の手続き先である法務局(不動産登記などを管轄する国の役所)は、書き方にわずかな誤りがあっても「この書き方ではダメですね」と平然と申請を却下してくる、非常に融通の利かない役所です。

裁判所の判決書を持参しても、記載方法に問題があれば受け付けてもらえないほど。

さらに、遺産分割協議をやり直すことになると、贈与税の問題が発生する可能性があります。

相続税では基礎控除が大きく設定されていますが、贈与税の基礎控除は年間110万円しかありません。

間違えてやり直した場合、何千万円もの税負担が生じるケースもあるのです。遺産分割協議書の書き方ひとつが、将来の税金に大きく影響します。

本日は、遺産分割協議書の基本構成から、よくあるNGの事例、そして正しい書き方までをくわしく解説いたします。ぜひ最後までお読みください。

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目次

遺産分割協議書の基本構成を理解しよう

まず、遺産分割協議書がどのような要素で成り立っているかを押さえておきましょう。必要な記載項目は以下の6つです。

  1. タイトル
  2. 被相続人の情報
  3. 前置き文(協議の実施日・相続人全員の氏名)
  4. 財産ごとの記載
  5. 後日判明した財産の取り扱い
  6. 保管の表記(署名・実印)

それぞれ順番に見ていきましょう。

1. タイトル

「遺産分割協議書」と記載するだけです。シンプルですが、必ず明記してください。

2. 被相続人の情報

被相続人(亡くなった方のこと。「被」は「こうむる=亡くなった」という意味で使われます)の情報として、以下を記載します。

  • 氏名(戸籍謄本のとおりに記載)
  • 死亡年月日(死亡診断書に記載された日付)
  • 最後の住所(住民票に記載されているもの。施設に住所を移していた方もいるため、必ずしも実家とは限りません)
  • 本籍(戸籍謄本に記載されているもの)

ここで注意したいのが、本籍と住所は別物だということです。同じ場所の方もいますが、異なる場合も多いので、混同しないように気をつけてください。

3. 前置き文(協議の実施日・相続人全員の氏名)

いつ、誰が協議を行ったかを記載します。相続人全員の氏名を漏れなく記載することが重要です。

4. 財産ごとの記載

不動産・預貯金・株式など、財産の種類ごとに正確に特定して記載します。この部分が最も間違いやすく、後述するNGポイントも集中しています。

5. 後日判明した財産の取り扱い

すべての財産を把握できていない場合に備えて、「後から判明した財産は誰が取得する」という内容をあらかじめ記載しておくと安心です。財産の漏れを防ぐための重要な一文です。

6. 保管の表記(署名・実印)

相続人全員が署名し、実印(市区町村に届け出ている印鑑)を押します。これで遺産分割協議書として有効な書類となります。


不動産の記載でよくあるNGと正しい書き方

不動産の特定は、遺産分割協議書の中でも特に間違いが多い箇所です。法務局への申請に直結するため、一字一句正確に記載する必要があります。

不動産の正しい記載方法には以下の3つのポイントがあります。

  1. 土地は「所在・地番・地目・地積」の4項目を記載する
  2. 建物は「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を記載する
  3. 記載の根拠は必ず「登記事項証明書」を使う

それぞれ解説します。

1. 土地は「所在・地番・地目・地積」の4項目を記載する

土地については、所在・地番・地目・地積の4つが登記簿に記載されています。これをそのまま書き写すのが基本です。

数字の表記にも注意が必要で、登記簿で縦位置の数字(漢数字など)が使われている場合は、それに合わせて記載します。

2. 建物は「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を記載する

建物には法務局が管理する家屋番号(お家ごとに付けられた番号)があります。種類・構造・床面積とあわせて、登記簿どおりに記載してください。

3. 記載の根拠は必ず「登記事項証明書」を使う

最も重要な注意点として、記載の根拠は必ず「登記事項証明書」を取得して使うことが大切です。

固定資産税の納税通知書に記載されている情報で代用したくなりますが、登記簿の情報と若干ずれることがあります。固定資産税通知書のみで作成するのは避けてください。

特に多い間違い:「住所」と「地番」の混同
  • 住所:郵便や宅配便が届く、普段使っている住所
  • 地番:法務局が不動産を管理するための番号(登記に使う)
  • この2つは別物です。普段使っている住所を書いてしまうと「特定されない」として登記ができません

登記事項証明書は法務局の窓口やオンラインで取得できます。面倒でも必ず取得して、その記載どおりに書くことが大切です。


金融資産・株式の記載でよくあるNGと正しい書き方

不動産の次に多いのが、預貯金や株式などの金融資産に関する記載ミスです。必要な記載事項は以下の3つのポイントに整理できます。

  1. 預貯金は4項目を正確に記載する
  2. 株式・投資信託は証券口座の情報を記載する
  3. 「その他一切の金融資産」の一文で漏れを防ぐ

それぞれ解説します。

1. 預貯金は4項目を正確に記載する

銀行口座については以下の4項目を記載します。

  • 銀行名
  • 支店名
  • 口座の種類(普通・定期など)
  • 口座番号

残高の記載は必須ではありません。残高は時期によって変わるものなので、口座を特定するためのこの4項目をきちんと書けば問題ありません。

2. 株式・投資信託は証券口座の情報を記載する

株式や投資信託については、証券会社名・支店名・口座番号を記載します。外国株を保有している場合は、その情報も正確に記載するようにしてください。

3. 「その他一切の金融資産」の一文で漏れを防ぐ

すべての財産を完全に把握しきれないケースもあります。後から預金口座や株が見つかることも珍しくありません。そのような場合に備えて、

「その他一切の金融資産は○○が取得する」

という一文を加えておくと、後日判明した財産の取り扱いが明確になり、トラブルを防ぐことができます。


「とりあえず共有」は危険!共有名義にするリスク

遺産分割協議書を作る際、「とりあえず公平にしよう」「ゆっくり考えよう」という理由で、不動産を相続人みんなの共有名義にするケースがあります。一見公平に見えますが、これは将来に大きなリスクを残す選択です。

共有名義のリスクは以下の3点に集約されます。

  1. 相続のたびに共有者が増えていく
  2. 管理・売却のたびに全員の同意が必要になる
  3. 共有を解消する際に贈与税が発生する可能性がある

相続のたびに共有者が増えるという問題が特に深刻です。長男と長女で共有した不動産は、次の相続ではそれぞれの子供(孫)に引き継がれます。そのまま放置すると、数十年後には全く面識のない遠縁の方々が共有者として並ぶことになります。20人・30人と増えていくケースも現実にあります。

共有名義になると困ること
  • 売却する際に共有者全員の同意が必要
  • 修繕・管理の費用負担で揉める
  • 固定資産税を誰が払うか問題になる
  • 共有者の誰かが亡くなると、さらに共有者が増える

また、一旦共有名義にした後で誰か一人の単独名義に戻す場合、贈与税が発生する可能性があります。「相続の問題」ではなく「贈与の問題」として扱われるため、税負担が大きく跳ね上がることがあります。

「とりあえず共有で」という選択が、将来どれほど大きな問題になり得るかをぜひ意識してください。

贈与税については、関連記事『親から子への不動産名義変更|800万円課税された実例と贈与税の3つの対策』で詳しく解説しています。ぜひあわせてご確認ください。


印鑑・製本に関するミスで手続きが止まることも

内容の記載が正確でも、最後の印鑑や製本の処理でつまずくケースがあります。注意すべきポイントは以下の3つです。

  1. 実印は「印影が鮮明」でなければならない
  2. 複数ページある場合は「契印(割印)」が必要
  3. 訂正箇所には「捨印」を押すと修正が可能になる

それぞれ解説します。

1. 実印は「印影が鮮明」でなければならない

実印の印影が滲んでいたり、欠けていたりすると、法務局や金融機関で印鑑証明書との同一性が認められないと判断されることがあります。

登録した当時はきれいだった印鑑も、保管中に欠けてしまうことがあります。押す前に必ず試し押しをして、印影が鮮明かどうかを確認してください。法務局は「欠けた印鑑と印鑑証明書が一致しない」という理由で、申請を却下することがあります。

2. 複数ページある場合は「契印(割印)」が必要

遺産分割協議書が複数ページになる場合は、契印(割印)を押す必要があります。ページをまたいで印鑑を押すことで、「これは1つの書類です」という意味になります。

契印がないと、複数ページが一体の協議書として認められないケースがあります。

3. 訂正箇所には「捨印」を押すと修正が可能になる

捨印(書類の余白に事前に押しておく印鑑)を押しておくと、後から誤りを修正する際に対応できます。書き間違えてしまった場合でも、捨印があれば訂正することが可能です。


まとめ

遺産分割協議書は自分でも作成できますが、わずかな記載ミスが手続きの大きな障害になります。本日の要点を整理します。

  • 不動産の特定は登記事項証明書を必ず取得し、地番・家屋番号などを一字一句正確に記載する(住所と地番は別物)
  • 預貯金・株式などの金融資産は漏れなく記載し、「その他一切の金融資産」という一文で後日判明した財産にも備える
  • 「とりあえず共有名義」は将来の共有者増加・売却トラブル・贈与税発生のリスクがあるため、慎重に判断する
  • 実印の印影は鮮明に。複数ページなら契印(割印)を忘れずに押す
  • 被相続人の情報(氏名・死亡年月日・最後の住所・本籍)は、住民票・戸籍謄本・登記事項証明書の記載どおりに書く

実際に、ご自身で作成した遺産分割協議書を法務局に申請したところ、「軽微なミス」を理由に取り下げを求められたケースがありました。その方が相続人全員から印鑑をもらうのに10年かかっていたため、やり直しには同じかそれ以上の年月がかかりかねない状況でした。法務局は「融通が利かない」と感じるほど厳格な審査を行います。だからこそ、最初から正確に作成することが何より大切です。

自分で作成することはもちろん可能ですが、少しでもご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にレスター司法書士法人にご相談ください。

YouTubeやってます!

本記事の内容は、YouTube動画『共有名義になると困ること』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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