相続トラブル回避|親の土地に家を建てる前に知るべき3つの対策

# 【実話】親の土地に家を建てたらトラブル発生!解決策を公開

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「親の土地に家を建てたい」「もう建ててしまった」という方は、沖縄でも本当に多くいらっしゃいます。親が「いいよ、使っていいよ」と言ってくれているのだから問題ない——そう思いますよね。

ところが、その認識が後々、家族間の深刻なトラブルを招くことがあります。実際に私がこれまで扱ってきた案件の中にも、「まさか自分の家が壊される羽目になるとは…」という事例が複数あります。他人事ではありません。

本日は、親の土地にただで家を建てることの法律的なリスク、そしてそのリスクを回避するための具体的な対策を3つご紹介します。「知らなかった」では済まされない話ですので、ぜひ最後までお読みください。

親が元気なうちに、家族で話し合える環境があるうちに対策を立てることが、何より大切です。本日の内容が、その第一歩になれば幸いです。



目次

なぜ「ただで借りている」だけでは危険なのか

親の土地を無償で借りて家を建てること、法律的には問題ありません。親がいいと言っているのですから。しかし、その「ただで借りている」という状態が、法律上は非常に弱い立場に置かれることを意味します。

問題は以下の2点です。

  1. 「ただで借りる権利」は法律上もっとも弱い権利だから
  2. 親が亡くなって相続が発生した瞬間、状況が一変するから

順番に見ていきましょう。

1. 「ただで借りる権利」は法律上もっとも弱い権利だから

土地を借りる権利には、大きく分けて2種類あります。

土地を借りる権利の比較
  • 賃貸借(ちんたいしゃく):お金(賃料)を払って借りる契約。アパートや駐車場がこれにあたる。借地法という法律で強く保護されている
  • 使用貸借(しようたいしゃく):無償(ただ)で借りる契約。法律上の保護が非常に弱く、土地の所有者の権利が強くなる

親の土地にただで家を建てている場合、法律上は「使用貸借」という弱い権利しか持っていません。お金を払っているかどうかで、権利の強さがまったく異なるのです。

2. 親が亡くなって相続が発生した瞬間、状況が一変するから

具体的な事例でご説明します。

次男が親からただで土地を借りて家を建てていたとします。親が亡くなり、その土地をお兄さんが相続しました。この瞬間、土地の所有者はお兄さん、建物の所有者は弟という状態が生まれます。

日本では土地と建物は別々の財産として扱われます。そして、ただで借りている弱い権利しか持たない弟に対して、土地の所有者であるお兄さんは「建物を壊して出ていけ」と要求する権利が生じるのです。

もし弟がこれを無視し続ければ、お兄さんは裁判所に訴えることができます。裁判官が「建物を取り壊して土地を返せ」という判決を出した場合、執行官(しっこうかん)(裁判所から派遣される職員)が自宅のドアをノックし、強制退去・建物の取り壊しが執行されることになります。

「住み続ける権利はないのか」「家を建てた費用はどうなるんだ」と主張したくなりますよね。しかし、使用貸借という弱い権利の立場では、その主張は法律上、非常に通りにくい状況です。


「うちの兄弟は仲がいいから大丈夫」は危険な思い込み

「でも、うちの兄弟は仲がいいから、そんなことにはならない」と思われる方も多いでしょう。確かに、兄弟関係が良好であれば問題が表面化しないこともあります。

しかし、人間の状況は変わります

たとえば、お兄さんが病気で働けなくなったとき。事業に失敗してお金が必要になったとき。そういった状況になって初めて、「あの土地、実は自分の権利があるよな」と気づくことがあります。当初は「いいよいいよ」と思っていたのに、切羽詰まった状況になると人は変わることがあるのです。

さらに、相続登記を放置しているケースでは、状況はさらに複雑になります。

親が亡くなったあとも、土地の名義を親のままにしている家庭は少なくありません。その状態のまま時間が経つと、共有持分(きょうゆうもちぶん)を持つ兄弟の経済状況が悪化した際に、以下のようなリスクが生じます。

  • 兄弟の持分が買取業者に売却される
  • 兄弟が保証人になっていた場合、その持分が差し押さえられる
  • 共有の財産として銀行や債権者から差し押さえの対象になる

「考えたらキリがない」と思われるかもしれません。しかし、これらはすべて現実に起こり得るリスクです。知っているかどうかで、対策できるかどうかが変わります。


リスクを回避するための3つの対策

では、具体的にどのような対策があるのでしょうか。大きく3つあります。

  1. 生前贈与(せいぜんぞうよ):親が元気なうちに土地を自分の名義にする
  2. 遺言書(ゆいごんしょ):親に遺言書を書いてもらう
  3. 死因贈与(しいんぞうよ):親が亡くなることを条件に贈与する契約を結ぶ

それぞれ解説します。

1. 生前贈与:親が元気なうちに名義を移す

親が存命のうちに、土地を子どもに贈与して名義変更を行う方法です。もっとも根本的な解決策ですが、贈与税(ぞうよぜい)がかかるという点に注意が必要です。

贈与税は、おおよそ贈与された財産の3割程度かかるケースもあります。たとえば3,000万円の土地を贈与した場合、約1,000万円の贈与税が発生する可能性があります。しかもこれは現金で納める必要があるため、税金を払えないというケースも出てきます。

ただし、親子間の贈与には相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)という特例があります。これを活用すると、2,500万円以下であれば贈与税の負担なしに名義変更ができる可能性があります。

この制度のポイントは、今の評価額で計算されるという点です。

たとえば今の評価額が2,500万円の土地が、10年後に3,500万円、20年後に4,500万円に上がっていくと予想される場合、今この制度を使えば2,500万円として計算されます。将来値上がりが見込まれる土地ほど、早めに活用するメリットが大きくなります。

相続時精算課税制度の活用ポイント
  • 2,500万円以下の贈与であれば贈与税が非課税になる可能性がある
  • 土地の評価は贈与時点の価格で計算される
  • 値上がりが見込まれる土地ほど、早めの活用が有利
  • 値下がりが見込まれる土地は、相続時に手続きするほうが有利なケースもある

逆に、将来値下がりが見込まれる土地については、親が亡くなってから相続税として支払うほうが安くなるケースもあります。一概には言えないため、専門家への相談をお勧めします。

2. 遺言書:親に書いてもらう

親に遺言書を書いてもらい、「この土地は子どもに相続させる」と明記してもらう方法です。ただし、この方法には絶対的な確実性はありません

遺言書は後から書き直すことができます。実際に私が扱った案件でも、最初は弟に相続させると書かれていた遺言書が、後から「お兄さんに」と書き直されていたケースがありました。複数の遺言書が存在する場合、もっとも日付が新しいものが法律上有効となります。

つまり、遺言書を書いてもらっても、後からひそかに書き直されるリスクがあります。定期的な確認や信頼できる形での保管が重要です。

3. 死因贈与:亡くなることを条件に贈与契約を結ぶ

親が亡くなることを条件として、「亡くなったら子どもに贈与する」という契約(死因贈与契約)を結ぶ方法です。

この方法のメリットは、仮登記(かりとうき)ができるという点です。仮登記とは、本登記の前に権利を不動産の登記事項証明書(登記簿)に記録しておく手続きです。「親が亡くなったら自分の名義になる」ということを事前に登記しておくことで、権利として非常に強い効力を持ちます。

デメリットは、仮登記の手続きにかかる費用が発生する点です。ただし、将来的なリスクを考えれば、費用をかけてでも今のうちにしっかり権利を保全することを検討する価値は十分にあります。

3つの対策の比較
  • 生前贈与:もっとも確実だが、贈与税の負担に要注意(相続時精算課税制度の活用を検討)
  • 遺言書:比較的手軽だが、書き直しリスクがあり絶対的ではない
  • 死因贈与:仮登記で権利を保全できる。手続き費用はかかるが確実性が高い

税理士と司法書士の両方に相談すべき理由

これらの対策を進める際に、重要なポイントがあります。それは、司法書士と税理士の両方に相談するということです。

なぜ2つの専門家が必要なのかというと、親の土地の問題は「法律面」と「税金面」の両方が絡み合っているからです。

専門家の役割分担
  • 司法書士:名義変更・登記手続き、遺言書作成、死因贈与契約など法律面のサポート
  • 税理士:贈与税・相続税の試算、節税対策、相続時精算課税制度の活用判断など税金面のサポート

どの対策を選ぶべきかは、土地の評価額、将来の価格変動の見込み、ご家族の状況によって異なります。法律と税金の両面から総合的に判断するために、2つの専門家に連携して相談されることをお勧めします。

また、日本の不動産はあらゆる場面で税金が発生します。売却すれば譲渡所得税、贈与すれば贈与税、取得すれば不動産取得税、名義変更すれば登録免許税、相続すれば相続税——それぞれの場面で最適な方法を選ぶためにも、専門家のサポートは不可欠です。


まとめ

POINT
  • ただで親の土地を借りている「使用貸借」は、法律上もっとも弱い権利。親が亡くなり相続が発生すると、相続人から「出ていけ」と言われるリスクがある
  • 兄弟仲がよくても安心は禁物。経済的に困窮するなど、状況が変わることで問題が表面化することがある
  • 対策は3つ:①生前贈与(相続時精算課税制度の活用を含む)、②遺言書、③死因贈与(仮登記で権利を保全)
  • 値上がりが見込まれる土地は、早めに生前贈与の対策を。今の評価額で計算されるため、将来の節税効果が大きい
  • 司法書士と税理士の両方に相談し、法律面・税金面の両方から総合的に判断することが重要

「できる時にできることをきちんとやっておく」——これが、将来の家族トラブルを防ぐためのもっとも大切な姿勢です。

ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にレスター司法書士法人にご相談ください。

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本記事の内容は、YouTube動画『【実話】親の土地に家を建てたらトラブル発生!解決策を公開』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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