不動産の個人売買は可能?流れ・契約書・司法書士費用までわかりやすく解説

不動産の個人売買

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「親から実家を買い取りたい」「知人に土地を譲りたいが、不動産業者に頼むほどの取引ではない」——そのようなご相談を、当事務所でも数多くいただきます。

売買のお相手がすでに決まっているのであれば、不動産業者に仲介を依頼せず、当事者同士で直接取引する「不動産の個人売買(個人間売買)」という選択肢があります。仲介手数料がかからない一方で、契約書の不備や税金面の思わぬ落とし穴など、注意すべきリスクがあるのも事実です。

本日は、不動産の個人売買の流れ、契約書や登記の実務、司法書士に依頼できる範囲と費用感、そして事前に知っておくべきリスクについて解説いたします。

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目次

不動産の個人売買は可能?仲介業者なしでも取引できます

結論から申し上げますと、不動産の個人売買は法律上可能です。

宅地建物取引業法が規制しているのは、不特定多数を相手に反復継続して「業として」売買や仲介を行う場合です。ご自身が所有する不動産を、親族や知人など特定の相手に一度売却するだけであれば、免許は不要で、当事者同士で自由に取引できるのが原則です。

個人売買が向いているのは「相手が決まっている」ケース

個人売買が現実的な選択肢になるのは、次のようなケースです。

  • 親族間の売買:親から子へ実家を売る、兄弟間で相続した土地を買い取るなど
  • 知人間の売買:隣地の所有者や長年の知人など、信頼関係のある相手との取引
  • 隣接地の売買:庭の一部や通路部分など、買い手が事実上その隣人に限られる土地

逆に、買主をこれから探さなければならない場合は、物件の広告・案内・条件交渉といった仲介業者の役割が大きいため、不動産業者への依頼を検討した方がよいでしょう。

最大のメリットは仲介手数料がかからないこと

不動産業者に仲介を依頼した場合の仲介手数料は、売買価格400万円超の取引では「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限額の目安です。例えば売買価格1,000万円なら約39万6,000円(税込)となり、売主・買主の双方が支払えば合計約80万円にもなります。

個人売買であれば、この仲介手数料が売主・買主ともに一切かかりません。すでにお相手が決まっている取引では、これが最大のメリットです。

不動産の個人売買の流れ|4つのステップ

個人売買は、大きく次の4つのステップで進みます。

  1. 売買価格の合意(相場の調査)
  2. 売買契約書の作成・締結
  3. 決済(代金の支払い)
  4. 所有権移転登記

ステップ1:売買価格の合意

まず、いくらで売買するかを当事者間で決めます。このとき重要なのは、時価(適正な相場)からかけ離れた価格にしないことです。後述するとおり、時価より著しく低い価格での売買は、税務上「贈与」とみなされるリスクがあるためです。

相場の目安としては、固定資産税評価額や相続税路線価、近隣の取引事例などが参考になります。親族間売買など価格の妥当性が特に問われる取引では、不動産鑑定士の鑑定や複数の査定を取ることも検討に値します。

ステップ2:売買契約書の作成・締結

価格が決まったら、売買契約書を作成します。個人売買でも契約書の作成は事実上必須と考えてください。口約束のままでは、代金の支払時期、引渡しの条件、契約後に欠陥が見つかった場合の責任(契約不適合責任)などをめぐってトラブルになりかねません。

契約書には、物件の表示(登記記録どおりの正確な記載)、売買代金と支払方法、引渡しと登記の時期、固定資産税の精算、契約不適合責任の取り決めなどを盛り込むのが一般的です。また、不動産の売買契約書は印紙税の課税文書ですので、記載金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。

ステップ3:決済(代金の支払い)

契約内容に従って、買主から売主へ売買代金を支払います。このとき大切なのは、代金の支払いと登記に必要な書類の授受を同時に行うことです。

「代金を払ったのに名義を変えてもらえない」「名義を変えたのに代金が支払われない」という事態を防ぐため、通常の不動産取引では、司法書士が決済の場に立ち会って書類の不備がないことを確認したうえで代金を授受し、その日のうちに登記申請を行います。個人売買でも、この決済立会いの仕組みを利用することで、取引の安全性を大きく高めることができます。

ステップ4:所有権移転登記

決済が済んだら、法務局へ所有権移転登記を申請し、不動産の名義を売主から買主へ変更します。登記手続きの概要は法務局「不動産登記申請手続」で案内されていますが、売買による移転登記は売主・買主の共同申請が原則で、必要書類も多岐にわたります。

主な必要書類は、売主側が登記識別情報(権利証)・印鑑証明書・固定資産評価証明書など、買主側が住民票などです。書類に一つでも不備があると登記が完了せず、代金を払ったのに名義が変わらない状態が続いてしまうため、この登記部分こそ司法書士の専門領域といえます。

個人売買の4つのリスク|正直にお伝えします

仲介手数料がかからない一方で、個人売買には次のようなリスクがあります。メリットだけを見て進める前に、必ず確認しておいてください。

リスク1:住宅ローンが通りにくい

買主が住宅ローンを利用したい場合、個人売買は大きなハードルになります。金融機関の多くは、融資審査にあたって宅地建物取引士が作成する重要事項説明書の提出を求めますが、仲介業者を入れない個人売買ではこの書類が存在しないためです。

特に親族間の売買は、贈与や借金の返済目的といった不自然な取引でないかを厳しく見られるため、住宅ローンの審査はさらに通りにくい傾向があります。買主が融資を前提とする場合は、事前に金融機関へ相談し、必要に応じて仲介業者を入れる方法も含めて検討することをお勧めします。

リスク2:契約書の不備がトラブルに直結する

インターネット上のひな形をそのまま使った契約書には、その物件・その取引に必要な条項が抜けていることが少なくありません。例えば、契約不適合責任(引渡し後に雨漏りやシロアリ被害が見つかった場合の責任)の取り決めがないと、親しい間柄であっても深刻な争いに発展することがあります。

個人売買では「知り合い同士だから大丈夫」と契約書を簡略化しがちですが、むしろ仲介業者のチェックが入らない分、契約書だけが取引の拠り所になります。専門家の関与のもと、実情に合った契約書を作成することが重要です。

リスク3:安すぎる価格は「みなし贈与」の対象になり得る

親族間売買で特に注意が必要なのが、税務上の「みなし贈与」です。時価より著しく低い価額で財産を譲り受けた場合、時価と支払った対価との差額は贈与とみなされ、買主に贈与税が課される場合があります(国税庁タックスアンサーNo.4423「著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」)。

「身内だから安くしてあげたい」という気持ちが、かえって買主に思わぬ税負担を生むことがあるのです。どの程度の価格なら問題ないかは物件や取引の個別事情により異なりますので、価格設定にあたっては税理士や税務署への確認をお勧めします。

リスク4:境界・権利関係の確認漏れ

プロの仲介業者が入らない個人売買では、取引の前提となる調査が漏れがちです。

  • 境界が確定していない:隣地との境界標がなく、後日境界争いになる
  • 抵当権が残っている:売主の住宅ローンの抵当権が抹消されないまま引き渡されてしまう
  • 農地である:農地の売買には農業委員会の許可等が必要で、無許可の売買は効力が生じないのが原則
  • 私道・持分の見落とし:前面道路の持分が売買対象から漏れる

これらは登記記録や公図、現地の確認である程度把握できます。当事務所でも、ご依頼いただいた際は登記記録の権利関係を確認したうえで手続きを進めています。

個人売買で司法書士に依頼できる範囲と費用の目安

「仲介業者を入れないなら、誰に何を頼めばいいのか」——個人売買で司法書士がお手伝いできるのは、主に次の3つです。

  1. 売買契約書の作成:取引の実情に合わせた契約書の作成
  2. 決済の立会い:代金支払いと書類授受の同時履行の確認
  3. 所有権移転登記:法務局への登記申請(司法書士の専門業務)

つまり、「買主を探す」以外の、取引の安全に関わる部分を一括してサポートできるということです。なお、売買の条件をめぐって当事者間にすでに争いがある場合の交渉や解決は弁護士の領域となりますので、その際は弁護士をご紹介するなど適切な窓口へおつなぎします。

必ずかかる実費(法定費用)

誰に依頼するかにかかわらず、個人売買では次の実費がかかります。

  • 登録免許税:売買による所有権移転登記では、固定資産税評価額の1,000分の20(2%)が原則です。土地の売買については時限的な軽減税率が設けられてきた経緯があり、適用期限が定められているため、最新の税率は国税庁タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」でご確認ください
  • 印紙税:売買契約書に貼付する収入印紙。記載金額により異なり、例えば1,000万円超5,000万円以下の契約書は本則2万円です(不動産譲渡契約書には期限付きの軽減措置があります。金額は国税庁タックスアンサーNo.7140「印紙税額の一覧表」参照)
  • 証明書等の取得費用:印鑑証明書・住民票・固定資産評価証明書・登記事項証明書などの発行手数料

司法書士の報酬はどのくらい?

司法書士の報酬は自由化されており、事務所により異なります。あくまで一般的な相場観としては、所有権移転登記のみの依頼で数万円台から、契約書の作成や決済立会いまで含めた個人売買のトータルサポートでは10万円前後からが一つの目安とされていますが、物件の数や権利関係の複雑さによって変わります。

それでも、売主・買主双方で数十万円規模になる仲介手数料と比べれば、費用を大きく抑えられるケースが多いといえます。当事務所では初回のご相談は無料で承っておりますので、お見積りを含めてお気軽にお問い合わせください。

個人売買の税金|売主の譲渡所得にも注意

買主側の「みなし贈与」のリスクは先ほど触れましたが、売主側にも税金の問題があります。

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、売主には所得税・住民税がかかります。譲渡所得は「収入金額-(取得費+譲渡費用)」で計算されるのが原則です(国税庁タックスアンサーNo.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」)。

ここで注意したいのが、マイホームを売ったときの3,000万円特別控除です。この特例は、配偶者や親子など「特別の関係がある人」への売却には適用されないのが原則です。「親子間だから税金も安く済むだろう」と考えていると、想定外の税負担が生じることがあります。

税額の具体的な計算や特例の適用可否の判断は税理士の専門領域です。当事務所では提携する税理士と連携して対応しておりますので、税金面のご不安がある方もまとめてご相談いただけます。

沖縄で多い個人売買|親族間の実家・軍用地

沖縄県内で当事務所がご相談を受ける個人売買には、地域ならではの傾向があります。

親族間での実家・相続不動産の売買

沖縄では、先祖代々の土地や実家を「他人に売りたくない」というお気持ちから、親族間で買い取る形を選ばれる方が少なくありません。例えば、実家を相続した長男が県外に住んでおり、地元に残る弟妹が実家を買い取るといったケースです。こうした親族間売買では、前述のみなし贈与のリスクや住宅ローンの通りにくさが特に問題になりやすいため、価格設定の段階からご相談いただくのが安心です。

なお、相続した実家については、そもそも「売るなら相続の前か後か」というタイミングの問題もあります。詳しくは、相続前と相続後の実家売却の判断ポイントを解説した記事をあわせてご覧ください。

軍用地の個人売買

沖縄特有の取引として、軍用地(米軍基地等に提供されている土地)の売買があります。軍用地は年間の軍用地料に一定の倍率を掛けて取引価格の目安とする独特の慣行があり、投資対象として親族間・知人間で直接売買されることもあります。

軍用地であっても、所有権移転登記が必要であることは通常の土地と変わりません。加えて、地主会への届出や軍用地料の振込先変更といった固有の手続きが伴い、返還予定の有無など確認すべき事情もあります。県内の登記実務に慣れた専門家への相談をお勧めします。

当事務所の解決事例|仲介業者を入れない個人間売買を一括サポートしたケース

すでに売買のお相手が決まっている方から、「仲介業者を入れずに不動産を売買したい」というご相談をいただいたケースです。当事務所で売買契約書の作成から決済の立会い、所有権移転登記の申請までを一括してサポートし、無事にお引渡しまで完了しました。

仲介手数料をかけずに、契約・決済・登記という取引の安全に関わる部分だけを専門家が確認する——個人間売買では、このような進め方が可能です。売主様・買主様の双方に手続きの流れと必要書類をご案内しながら進めますので、「何から手をつければよいかわからない」という段階からでもご相談いただけます。

よくある質問

不動産の個人売買は違法ではありませんか?

違法ではありません。宅地建物取引業法の免許が必要になるのは、不特定多数を相手に反復継続して「業として」売買等を行う場合です。ご自身の不動産を特定の相手に売却する通常の個人売買は、免許がなくても行えるのが原則です。

ただし、複数の物件を繰り返し売買するような場合には「業として」に該当しないかの検討が必要になることもあります。ご不安な場合は事前にご相談ください。

契約書は自分たちで作成してもよいですか?

法律上は、当事者同士で作成した契約書でも契約は有効に成立します。しかし、ひな形の流用では契約不適合責任や引渡し条件など、その取引に必要な条項が漏れやすく、トラブルの原因になりがちです。

個人売買では仲介業者のチェックが入らない分、契約書が取引の唯一の拠り所になります。金額の大きな取引ですので、専門家の関与のもとで作成されることをお勧めします。

司法書士費用は売主と買主のどちらが負担しますか?

法律で決まっているわけではなく、当事者間の合意で自由に決められます。実務上は、所有権移転登記の費用(登録免許税・司法書士報酬)は登記によって利益を受ける買主が負担し、売主の住所変更登記や抵当権抹消登記の費用は売主が負担する、という分け方が一般的です。

契約書作成や決済立会いの費用を折半とするケースもあります。後日の行き違いを防ぐため、費用負担も契約書に明記しておくと安心です。

親族間売買の価格はどのように決めればよいですか?

時価とかけ離れない価格にすることが大原則です。固定資産税評価額や相続税路線価、近隣の取引事例などを参考に、第三者に説明できる根拠を持って決めることをお勧めします。

時価より著しく低い価格にすると、差額に贈与税が課されるリスクがあります。どの程度なら問題ないかは個別事情により異なるため、価格の妥当性については税理士や税務署への確認をあわせてご検討ください。

まとめ

不動産の個人売買について解説してまいりました。要点を整理いたします。

  • 不動産の個人売買は法律上可能。親族間・知人間など相手が決まっている取引では、仲介手数料を抑えられる有効な選択肢
  • 流れは「価格合意→売買契約書→決済→所有権移転登記」の4ステップ
  • リスクは住宅ローンの通りにくさ・契約書の不備・みなし贈与・境界や権利関係の確認漏れの4つ
  • 司法書士には契約書作成・決済立会い・登記申請を一括で依頼できる。報酬は事務所により異なるが、仲介手数料より費用を抑えられるケースが多い
  • 税金(みなし贈与・譲渡所得・特例の適用可否)は個別事情により異なるため、税理士・税務署への確認
  • 沖縄では親族間の実家売買や軍用地の売買など、地域特有の個人売買も多い

個人売買は「仲介手数料を節約できる」という入口で語られがちですが、本当に大切なのは、数百万円・数千万円という大きな財産のやり取りを安全に完了させることです。まずはご自身のケースで個人売買が適しているのかどうか、その見極めからお手伝いいたします。

レスター司法書士法人では、窓口を一つにしてワンストップで対応しております。初回のご相談は無料で承っておりますので、ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

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