皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。
「もし自分が認知症になったら、誰が銀行の手続きをしてくれるのだろう」「知らない人が後見人に選ばれるのは避けたい」。ご相談の中で、こうしたご不安をお聞きすることがとても増えました。
実際、判断能力が低下してから利用する法定後見では、誰が支援者になるかを本人や家族が決めることはできません。家庭裁判所が選任するからです。それでは困る、という方のために用意されているのが任意後見制度です。
ただ、「元気なうちに契約する」という性質上、仕組みが少し分かりにくく、名前だけ聞いて止まってしまう方が多い制度でもあります。
本日は、任意後見制度の全体像について、法定後見との根本的な違い、契約から発効・終了までの流れ、任意後見人になれる人、費用、そして2026年6月に成立した改正法による見直しまで、順番に解説いたします。
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任意後見制度とは?「誰に任せるか」を自分で決められる制度です
結論から申し上げます。任意後見制度とは、判断能力が十分にあるうちに「将来、判断能力が低下したときに誰にどこまで支援してもらうか」を自分で決めて契約しておく制度です。
法務省も、任意後見制度を「本人が十分な判断能力があるうちに、あらかじめ、代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約を公証人の作成する公正証書で結んでおくというもの」と説明しています(法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」Q16)。
ポイントは次の3つに集約されます。
- 支援者を自分で選べる(家庭裁判所が決めるのではありません)
- 任せる内容も自分で決められる(代理権目録という形で契約書に定めます)
- 契約は公正証書で作り、法務局に登記される(口約束や私文書では成立しません)
契約した時点では効力が発生しません
ここが最も誤解されやすい点です。任意後見契約を結んでも、その日から誰かが財産を管理し始めるわけではありません。
契約の効力が発生するのは、本人の判断能力が低下し、家庭裁判所に申し立てて任意後見監督人が選任されたときです。それまでは、契約書という「備え」が眠っている状態になります。
言い換えれば、任意後見契約は保険に近い性質を持っています。使わずに済めばそれが一番よく、必要になったときに初めて起動する仕組みです。
任意後見人とは?任意後見受任者との違い
「任意後見人」と「任意後見受任者」という2つの言葉が出てきて混乱される方が多いのですが、指している人物は同じで、呼び名が発効の前後で変わるだけです。
- 任意後見受任者:契約は結んだが、まだ監督人が選任されていない段階の呼び方。この時点では代理権はありません
- 任意後見人:監督人が選任され、契約の効力が発生した後の呼び方。ここから実際の代理権を持って業務を行います
ですから「父の任意後見受任者になった」という段階では、まだ預金の払戻しなどはできません。ここを取り違えると、いざというときに動けず戸惑うことになりますので、ご家族全員で共有しておくことをお勧めいたします。
法定後見との根本的な違いは「自分で選べるかどうか」
成年後見制度は、大きく法定後見と任意後見の2つに分かれます。両者の違いは細かく挙げればきりがありませんが、本質的な違いは「支援者を誰が決めるか」と「いつ動き出すか」の2点です。
- 誰が支援者を決めるか:法定後見は家庭裁判所が選任します。任意後見は本人が契約で決めます
- いつ動き出すか:法定後見は判断能力が低下した「後」に申し立てます。任意後見は判断能力がある「うち」に契約しておきます
- 権限の範囲:法定後見は法律が定める範囲です。任意後見は契約で定めた代理権の範囲に限られます
- 取消権の有無:法定後見にはありますが、任意後見人には取消権がありません
4つ目の取消権は、任意後見を検討するうえで必ず押さえていただきたい点です。詳しくは後ほどデメリットの項で改めて触れます。
なお、法定後見の3類型(後見・保佐・補助)を含めた成年後見制度全体の枠組みについては、成年後見制度とは?わかりやすく全体像と3つの類型・家族がなれるかを司法書士が解説で整理しておりますので、あわせてご覧ください。
任意後見契約には3つの型があります
任意後見契約は一律ではなく、ご本人の状況に応じて実務上3つの型が使い分けられています。ご自身がどれに当てはまるかを考えながらお読みください。
将来型|判断能力が低下したときに備えるだけの型
任意後見契約だけを結んでおき、判断能力が低下した段階で発効させる、最もシンプルな型です。今は心身ともにお元気で、あくまで将来の保険として備えたい方に向いています。
ただし、契約から発効までの期間が長くなりがちで、本人の判断能力の低下に誰も気づかないまま契約が眠り続けるリスクがあります。後述する見守り契約とセットにする方が安心です。
移行型|財産管理委任契約とセットにする型
判断能力はしっかりしているものの、足腰が弱って銀行や役所へ行くのが難しくなった、という段階から支援が必要な方に用いられる型です。
先に任意代理(財産管理委任)契約で日常的なサポートを始めておき、判断能力が低下した時点で任意後見へ移行します。実務上、この移行型が選ばれるケースは多く、切れ目のない支援ができる点が長所です。
即効型|契約後すぐに発効させる型
すでに判断能力の低下が始まっているものの、契約を理解する能力は残っている段階で契約し、直後に監督人選任を申し立てる型です。
日本公証人連合会も、認知症があるからといって直ちに判断能力が欠けていると評価されるわけではなく、公証人が個別に判断すると説明しています(日本公証人連合会「4 任意後見契約」)。もっとも、後日「契約時に本当に理解していたのか」が争われやすい型でもあります。慎重な検討と、医師の診断書等による裏づけが望ましいところです。
契約から発効・終了までの流れ
実際の手続きは、大きく4つのステップで進みます。
STEP1|受任者を決め、任せる内容を固める
まず「誰に」「何を」任せるかを決めます。任せる事務は代理権目録という一覧の形で契約書に添付され、ここに書かれていないことは任意後見人にはできません。
一般的には、預貯金の管理・払戻し、年金等の受領、不動産の管理・処分、介護施設の入所契約、医療契約の締結、行政手続などが盛り込まれます。何を入れるかは、ご本人の資産構成と生活設計によって変わりますので、ここは丁寧に詰めるべき工程です。
STEP2|公証役場で公正証書を作成し、登記される
任意後見契約は、必ず公正証書で作成しなければならないと法律で定められています。ご本人と受任者が公証役場へ出向き、公証人の面前で契約を結びます。
入院中などで出向けない場合は、公証人が病院や施設へ出張して作成することも可能です(出張の場合は手数料が加算されます)。
公正証書が完成すると、公証人の嘱託により法務局に任意後見契約の登記がされます。この登記があることで、後に「確かに契約が存在する」ことを登記事項証明書で証明できる仕組みになっています。
STEP3|判断能力が低下したら、監督人選任を申し立てる
ご本人の判断能力が不十分になったら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。ここで初めて契約が発効します。
裁判所の案内によれば、申立てができるのは本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者で、申立先は本人の住所地を管轄する家庭裁判所です(裁判所「任意後見監督人選任」)。なお、本人以外が申し立てる場合、本人が意思を表示できるときは原則として本人の同意が必要とされています。
STEP4|任意後見人の業務が始まり、そして終わるとき
監督人が選任されると、任意後見人は代理権目録に沿って業務を開始し、定期的に監督人へ報告します。
契約が終了するのは、主に次の場合です。
- 本人が亡くなったとき
- 任意後見人が亡くなった、または解任されたとき
- 契約が解除されたとき
解除については、監督人が選任される前か後かで手続きが変わる点にご注意ください。選任前であれば公証人の認証を受けた書面によりいつでも解除できますが、選任後は正当な事由があり、かつ家庭裁判所の許可を得なければ解除できないのが原則です。「気が変わったからやめる」が後からは効かない、ということになります。
任意後見監督人の役割|必ず付く第三者の目
任意後見制度を理解するうえで欠かせないのが、任意後見監督人の存在です。
法務省は、任意後見監督人の役割を「任意後見人の事務を監督し、その事務に関して家庭裁判所に定期的に報告する」ことなどと説明しています(法務省Q&A Q18)。選ばれるのは、弁護士・司法書士などの専門職や法律・福祉に関わる法人であることが多く、本人の親族が選ばれることは通常ありません。
ここは、ご相談時に必ずお伝えしている大切な点です。「家族に任せたいから任意後見にした」という方でも、発効後は第三者である監督人が入り、その報酬も継続的に発生します。監督が煩わしいと感じる方もいらっしゃいますが、逆に言えば、この仕組みがあるからこそ本人の財産が守られ、任意後見人となったご家族も「使い込みを疑われない」という安心を得られます。
任意後見人になれる人・なれない人
「息子に頼みたいが、資格が要るのでは」というご質問をよくいただきます。結論として、特別な資格は不要です。
日本公証人連合会も、成人であれば本人が信頼できる人を任意後見人にすることができ、子・兄弟姉妹・甥姪等の親族や知人でもかまわないとしています。法人を任意後見人とすることも可能です。
なれない人(欠格事由)
ただし、法律上、次のような方は任意後見人になることができません。
- 未成年者
- 家庭裁判所で法定代理人・保佐人・補助人を解任されたことがある人
- 破産者で復権していない人
- 本人に対して訴訟をした人、その配偶者や直系血族
- 行方不明である人
- 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある人
家族に頼むか、専門家に頼むか
どちらが正解ということはなく、ご家庭の事情によります。判断材料として、それぞれの傾向を整理しておきます。
- ご家族に頼む場合:本人の価値観や生活習慣を分かっている点が最大の強みです。一方で、財産管理の事務負担が重く、他のご兄弟との関係で不信感が生じることもあります
- 専門家に頼む場合:事務が確実で、親族間の公平性を保ちやすい反面、報酬が継続的に発生し、生活面の細かな希望が伝わりにくい面があります
実務では、ご家族を任意後見人にしつつ、契約書の設計と発効後の相談相手を専門家が担うという組み合わせが、バランスの取れた形になることが多いように感じています。
任意後見にかかる費用
費用は「契約時」「発効時」「発効後の継続費用」の3段階に分けて考えると整理しやすくなります。まず、金額が公的に定まっている法定費用から見ていきます。
- 公正証書作成の手数料:1契約につき1万3000円(証書の枚数が一定を超えると1枚ごとに加算)
- 収入印紙代:2,600円
- 法務局への登記嘱託手数料:1,600円
- 書留郵便料:実費
- 監督人選任の申立手数料:収入印紙800円分
- 登記手数料:収入印紙1,400円分
- 郵便切手:申立先の家庭裁判所ごとに異なります
出典は日本公証人連合会および裁判所の公表資料です。手数料の額は改定されることがありますので、実際に契約される際は公証役場・家庭裁判所で最新の額をご確認ください。また、本人の判断能力について鑑定が行われる場合は、別途その費用が必要になることがあります。
発効後に継続してかかる報酬
見落とされがちなのが、発効後の継続費用です。
- 任意後見人の報酬:契約で自由に定められます。ご家族が務める場合は「無報酬」とする契約も少なくありません
- 任意後見監督人の報酬:家庭裁判所が本人の財産状況等を考慮して決定します。契約で決めることはできません
つまり、任意後見人を無報酬のご家族にしても、監督人の報酬は本人が亡くなるまで発生し続けるということです。トータルの負担を考えるときは、ここを必ず織り込んでください。
なお、契約書の設計や手続きを専門家に依頼する場合の報酬は、事務所によって異なります。金額だけでなく、発効までの見守りや発効後の相談まで含まれているかという中身の違いが大きいため、複数の事務所で内訳を比べてご検討いただくのがよいと思います。
任意後見のメリットと、正直なデメリット
メリット
- 支援者を自分で選べる:見ず知らずの第三者が財産を管理する事態を避けられます
- 任せる範囲を自分で決められる:「自宅は売らないでほしい」といった希望を契約に反映できます
- 監督人が付くので不正が起きにくい:任された家族にとっても身を守る仕組みになります
デメリット
良い面だけをお伝えするわけにはまいりません。契約前に必ず知っておいていただきたい注意点です。
- 判断能力が低下してからでは契約できません。任意後見は「間に合う人」しか使えない制度です
- 任意後見人に取消権がありません。本人が訪問販売で不要な契約をしてしまっても、任意後見人がそれを取り消すことはできません。この点は法定後見に劣ります
- 監督人の報酬が継続的に発生します。前項のとおりです
- 死後の事務は任せられません。任意後見は本人の死亡で終了するため、葬儀や納骨、遺品整理を任せたい場合は、別途「死後事務委任契約」を結んでおく必要があります
- 契約しただけでは誰も気づいてくれません。判断能力の低下を把握する人がいなければ発効の申立てがされず、契約が使われないまま終わることがあります。見守り契約との併用が有効です
2つ目の取消権については、消費者被害への備えを重視される方にとって重要な分かれ目になります。すでに被害が繰り返されているようなご状況であれば、任意後見よりも法定後見が適していることもありますので、個別にご相談ください。
【2026年改正】任意後見制度はこう変わります
2026年(令和8年)6月17日、成年後見制度と遺言制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、同月24日に公布されました(法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」)。
この改正では、法定後見の見直し(後見・保佐を廃止して補助へ一元化)が大きく報じられましたが、任意後見制度についても「柔軟な利用を可能にすること」を目的とした見直しが含まれています。法務省が公表した概要資料によれば、主な内容は次の4点です。
- 監督人が必須ではなくなる場合があります。家庭裁判所が明らかに任意後見監督人による監督の必要がないと認めるときは、監督人を選任せず、家庭裁判所が直接監督することが可能になります(任意後見契約法7条)
- 法定後見が始まっても任意後見契約が存続します。現行法では法定後見の開始により任意後見契約は終了しますが、改正後は補助の制度の利用を開始しても契約の存続が認められます(任意後見契約法5条等)
- 後継の受任者を決めておけるようになります。本人と任意後見受任者との間で、契約の効力を発生させる順序を定める合意ができるようになります(任意後見契約法4条、5条)。受任者が先に亡くなった場合などへの備えです
- 発効の申立てができる人が広がります。現行法では親族または任意後見受任者に限られていますが、改正後は本人が公正証書で指定した人も申立てができるようになります(任意後見契約法5条、6条)
1つ目は監督人報酬という継続負担への、4つ目は「気づいてくれる人がいない」という前項のデメリットへの、それぞれ手当てにあたります。制度が使いやすくなる方向の改正といってよいと思います。
施行日はまだ決まっていません
ただし、成年後見制度の見直しに係る改正の施行日は、公布の日(2026年6月24日)から起算して2年6か月を超えない範囲内において政令で定める日とされており、本記事の執筆時点では確定していません。つまり、現在契約される方は現行のルールで進むことになります。
「改正を待ってから契約すべき?」への考え方
ここが最もご相談の多い点ですが、お待ちいただく必要は基本的にないと考えております。理由は2つあります。
1つは、法務省の概要資料において、施行日前に締結された任意後見契約についても改正後の任意後見契約法が適用される旨の経過措置が示されていることです(旧法の下で生じた効力は維持されます)。今結んだ契約が改正で無駄になる、という関係にはありません。
もう1つは、より切実な理由です。任意後見契約は判断能力があるうちにしか結べません。施行を待っている数年の間に判断能力が低下してしまえば、そもそも任意後見という選択肢自体が失われ、法定後見しか残らないことになります。制度改正を待つことのリスクの方が、通常は大きいと言わざるを得ません。
改正の全体像や、すでに後見・保佐を利用されている方への影響については、【2026年成立】成年後見制度の改正で何が変わる?いつから施行かと今の判断を司法書士が解説で詳しく解説しております。
沖縄で任意後見契約を結ぶときに知っておきたいこと
ここからは、沖縄で実務を行う立場から、県内特有の事情をお伝えします。
県内の公証役場は2か所しかありません
任意後見契約は公正証書でしか作れませんので、公証役場へ出向くことが前提になります。ところが、日本公証人連合会の公証役場一覧のとおり、沖縄県内の公証役場は那覇公証センター(那覇市安里)と沖縄公証役場(沖縄市美里)の2か所のみです。
本島北部や離島にお住まいの方にとっては、それだけで一日仕事になります。ご高齢の方が何度も足を運ぶのは現実的ではありませんので、事前に契約内容を固めきったうえで、公証役場へ行くのは原則1回で済むように段取りすることが、沖縄では特に大切になります。
入院中・施設入所中で外出が難しい場合は、公証人に出張していただく方法もあります。手数料は加算されますが、離島や遠方の方にとっては現実的な選択肢です。
県外に住むお子さんが受任者になるケース
沖縄では、お子さんが本土で就職され、ご両親だけが県内にお住まいというご家庭が非常に多くいらっしゃいます。「長男に任せたいが、東京にいる」というご相談は日常的です。
結論としては、県外・海外にお住まいのお子さんでも任意後見受任者になれます。住所地の要件はありません。ただし、実務上は次の点を織り込んで設計する必要があります。
- 契約時に必ず一度は沖縄へ来ていただく必要があります。ご本人と受任者が公証人の面前に揃うためです。帰省のタイミングに合わせて日程を組むのが現実的です
- 発効後の日常的な支援が難しくなります。遠方からでは通帳の記帳や施設との細かなやり取りが滞りがちです
- 判断能力の低下に気づきにくくなります。年に一、二度の帰省では変化を捉えきれません
そのため、県外にお住まいのお子さんを受任者とする場合は、県内の専門家による見守り契約を併用する形をご提案することが多くあります。日常の見守りは地元で、重要な判断は受任者であるお子さんが、という役割分担です。
不動産をお持ちの方は代理権目録の設計に注意を
沖縄では、軍用地や共有名義の土地、代々受け継がれてきた不動産をお持ちの方が多くいらっしゃいます。こうした資産は、売却の可否や賃料の管理について、契約時に方針を決めておかないと発効後に判断できなくなるおそれがあります。
「施設入所の費用が必要になったら自宅を売却してよい」「軍用地の賃料は生活費に充てる」といった意向を、代理権目録やライフプランに落とし込んでおくことをお勧めいたします。なお、売却に伴う税金の取扱いについては税理士または所轄の税務署にご確認ください。
家族信託・法定後見との使い分け
認知症への備えとしては、任意後見のほかに家族信託という手法もあります。優劣ではなく、目的による使い分けとお考えください。
- 任意後見:財産管理に加えて、施設入所契約などの身上保護まで任せられます。監督人による監督が入る点が特徴です
- 家族信託:財産の管理・承継の設計に強く、機動的に動けます。一方で身上保護は担えません
- 法定後見:判断能力が低下した「後」の唯一の選択肢です。取消権があります
実務では、財産の管理・承継は家族信託で、身上保護は任意後見でという併用も有効です。どちらも判断能力があるうちにしか設計できない点は共通しています。家族信託を検討される場合の判断基準については、家族信託は認知症になってからでは遅い?契約できる判断基準と任意後見との違いを司法書士が解説をご覧ください。
よくある質問
任意後見とは、簡単に言うとどんな制度ですか?
元気なうちに「将来、判断能力が低下したら、この人にこれを任せます」と契約しておく制度です。契約は公正証書で作成し、法務局に登記されます。
実際に効力が生じるのは、判断能力が低下して家庭裁判所に申し立て、任意後見監督人が選任されたときです。契約しただけでは何も始まらない、という点が法定後見との大きな違いになります。
認知症と診断された後でも契約できますか?
診断名だけで一律に判断されるわけではありません。日本公証人連合会も、認知症があるからといって直ちに判断能力が欠けていると評価されるわけではなく、公証人が本人の説明や医師の診断等を参考に個別に判断すると説明しています。
ただし、進行の程度によっては契約できないと判断されることもありますし、後日その有効性が争われるリスクも高まります。診断を受けられた段階でしたら、できるだけ早くご相談いただくことが何よりの対策です。
任意後見人になれる人に資格は必要ですか?
特別な資格は不要です。成人であれば、お子さん、兄弟姉妹、甥姪、ご友人などご本人が信頼できる方を選べますし、法人を選ぶこともできます。
ただし、未成年者、破産して復権していない方、過去に法定代理人等を解任された方、本人と訴訟をした方などは、法律上なることができません。
任意後見監督人を家族にすることはできますか?
できないとお考えください。監督人は家庭裁判所が選任し、任意後見人を監督する立場ですので、通常は弁護士・司法書士などの専門職や法人が選ばれます。監督人を誰にするかを契約で指定することもできません。
なお、2026年成立の改正法では、家庭裁判所が明らかに監督人による監督の必要がないと認めるときは監督人を選任せず家庭裁判所が直接監督できる仕組みが設けられましたが、施行日は未定です。
任意後見人に、葬儀や相続の手続きも頼めますか?
頼めません。任意後見契約はご本人の死亡によって終了しますので、葬儀・納骨・遺品整理・各種契約の解約といった死後の事務は対象外です。
これらを託しておきたい場合は「死後事務委任契約」を、財産の承継先を決めておきたい場合は「遺言書」を、任意後見契約と併せて準備しておく必要があります。同じ機会にまとめて整えておくと、費用も手間も抑えられます。
まとめ
任意後見制度について解説してまいりました。要点を整理いたします。
- 任意後見制度は、判断能力があるうちに支援者と支援内容を自分で決めておく制度。家庭裁判所が支援者を決める法定後見との根本的な違いはここにあります
- 契約は公正証書で作成し、法務局に登記される。契約しただけでは効力は生じず、判断能力の低下後に任意後見監督人が選任されて初めて発効します
- 任意後見人に特別な資格は不要。ご家族でも構いませんが、未成年者や破産者など法律上なれない方が定められています
- 正直なデメリットもあります。取消権がないこと、監督人の報酬が継続的に発生すること、死後の事務は任せられないことは、契約前に必ずご確認ください
- 2026年6月成立の改正法で、任意後見はより柔軟に使えるようになります。ただし施行日は未定で、施行を待つ間に判断能力が低下すれば任意後見という選択肢自体が失われます
- 沖縄では公証役場が2か所のみ。県外にお住まいのお子さんが受任者になる場合は、見守りの体制まで含めて設計することが大切です
任意後見は、「まだ早い」と思っているうちが、実は一番ちょうどよい時期の制度です。判断能力が低下してからでは契約できないという一点において、他の相続対策とは性質が異なります。
とはいえ、任意後見がよいのか、家族信託がよいのか、あるいは遺言だけで足りるのかは、ご家族の状況と財産の内容によって変わります。ご自身のケースで何を準備すべきか、まずは交通整理から始めていただければと思います。
レスター司法書士法人では、窓口を一つにしてワンストップで対応しております。初回のご相談は無料で承っておりますので、ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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