相続前と相続後の実家売却|司法書士が教える最適な判断ポイント

実家売却は相続前と後どちらが得?

皆様、こんにちは。レスター司法書士法人の日高憲一です。

「親が高齢になってきて、将来的に実家をどうするか考えないといけない」
「相続前に売った方がいいのか、それとも相続後の方が税金面で有利なのか」

実家の売却は、タイミング次第で手続きのしやすさも税金も大きく変わってくる、非常に重要な問題です。

実は、「相続前がいい」「相続後がいい」と一概には言えないのが実情なんです。

それぞれのご家庭の状況によって、ベストなタイミングは異なります。判断を誤ると、売却自体が困難になったり、想定外の税負担が発生したりする可能性もあるのです。

本日は、実家の売却を「相続前」にすべきか「相続後」にすべきかを判断するための3つのポイントについて解説いたします。

  • 不動産の売却可能性
  • 法律的な問題
  • 税金の問題

この3つの視点から、皆様の状況に合った選択ができるよう、詳しくご説明してまいります。

YouTubeやってます!

本記事の内容は、YouTube動画『実家を売るなら相続前?相続後?知らないと損する理由』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

目次

実家売却を判断する3つのポイント

実家の売却時期を決める際には、以下の3つのポイントを総合的に検討する必要があります。

  1. 実家が実際に売れるのかどうか(市場性の問題)
  2. 法律的な制約はないか(親の判断能力や相続人間の合意)
  3. 税金はどのくらいかかるのか(売却益課税と特例の適用)

それぞれ詳しく解説します。

1. 実家が実際に売れるのかどうか(市場性の問題)

まず最初に考えるべきは、そもそも「その実家は売れるのか」という現実的な問題です。

相続前、つまり親御さんがご存命のうちに売却しようとする場合、親御さんがまだそこに住んでいるというケースが多いですよね。生活感のある状態で内覧を受けることになりますので、正直なところ売りにくい面があります。買い手の立場からすれば、実際に人が住んでいる家を見て購入を決めるのは、心理的にハードルが高いものです。

逆に、誰も住んでいない空き家の状態であれば売りやすいかというと、そうとも言えません。長期間空き家になっていると建物が傷んでしまい、資産価値が下がってしまうというデメリットもあるのです。

不動産は実際に見てみないと分からない部分が多いため、売却を検討し始めたら、早めに不動産業者などに相談してみることをお勧めいたします。

2. 法律的な制約はないか(親の判断能力と相続人間の合意)

次に重要なのが、法律的な観点からの問題です。ここでは2つの側面があります。

相続前の最大の問題:親御さんの判断能力

相続前に売却する場合、最も大きな問題は親御さんの判断能力です。

もし親御さんが認知症になってしまうと、不動産の売却は非常に困難になります。現在の法律では、判断能力が不十分な方は基本的に不動産の売却などの法律行為ができません。売却するためには、成年後見人(判断能力が不十分な方に代わって財産管理や契約を行う制度)を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

なぜこのような制度があるかと言いますと、認知症の親御さんが「勝手に家を売られた」という状況になってしまうと、親御さんが帰る場所がなくなってしまうからです。家庭裁判所は本人の利益を守るため、簡単には売却を認めません。

したがって、認知症になる前、判断能力がしっかりしている段階で売却手続きをスタートすることが非常に重要です。

相続後の問題:相続人間の合意形成

一方、相続後に売却する場合は、まず親御さんの名義から相続人への相続登記(名義変更)を行わなければなりません。

ここで頻繁に起こるトラブルが、家族間での意見の対立です。「自分が相続したい」「平等に分けるべきだ」など、様々な意見が出てきます。親御さんがご存命のうちは、親御さんがある程度コントロールできていた関係性も、亡くなってしまうとそれぞれの意見が衝突しやすくなるのです。

もし家族間で揉める可能性が予想されるのであれば、親御さんが生きている間に売却した方がスムーズに進むケースが多いですね。逆に、家族みんなが話し合いができて協力的であれば、相続後でも問題なく売却できるでしょう。

3. 税金はどのくらいかかるのか(売却益課税と特例)

3つ目のポイントは、税金の問題です。これは非常に専門的な内容になりますので、必ず税理士さんにご相談いただくことをお勧めします。

不動産売却にかかる税金の基本

不動産を売却すると、譲渡所得税という税金がかかります。この税率は、所有期間によって大きく変わるんですね。

不動産売却の税率
  • 5年以内の短期譲渡:約40%
  • 5年超の長期譲渡:約20%

短期間での売却は税負担が非常に重いことがお分かりいただけるかと思います。

居住用不動産の特別控除

ただし、実際に住んでいた不動産を売却する場合には、3,000万円の特別控除という制度があります。これは、売却益が3,000万円以内であれば税金がかからないという非常に有利な制度です。

相続後の税金問題

相続後に売却する場合、まず相続税がかかる可能性があります(相続財産の総額によります)。ただし、相続から3年以内に売却する場合には特例もありますので、こちらも税理士さんに確認が必要です。

さらに厄介なのは、相続税を払った後、売却時にも譲渡所得税がかかってくる点です。相続前から相続後3年以内に売れるかどうかは、慎重に検討しておいた方がよいでしょう。

取得価格の資料は絶対に保管を!

税金に関して、もう一つ非常に重要なことをお伝えします。

それは、実家を購入した時の価格が分かる資料を今すぐ探しておくことです。

なぜかと言いますと、この「取得価格」が分からないと、売却金額の95%に対して税金がかかってしまうからです。本来であれば、「売却価格-取得価格=利益」に対して課税されるのですが、取得価格が不明だと、ほぼ全額が課税対象になってしまうんですね。

取得価格の証明となる資料(売買契約書など)は、紛失してしまうと再発行ができません。実際に資料をなくして、多額の税金を支払うことになったケースも少なくありません。今からでも遅くありませんので、ぜひ探しておいてください。

相続前と相続後、どちらが有利か?

ここまでの内容を踏まえて、相続前と相続後のどちらが有利かを整理してみましょう。

相続前の売却が向いているケース

相続前売却のメリット
  • 親御さんの意思で売却できる(家族間の調整がしやすい)
  • 相続人間でのトラブルを避けられる
  • 親御さんに判断能力があるうちに手続きできる
  • 居住用不動産の3,000万円特別控除が使える可能性がある

特に、家族間で意見が対立しそうな場合や、親御さんの認知症が心配される場合は、相続前の売却を強くお勧めいたします。

相続後の売却が向いているケース

相続後売却のメリット
  • 家族全員が協力的であれば問題なく進められる
  • 相続から3年以内の売却であれば税制上の特例が使える場合がある
  • 親御さんが住み続けることができる

家族間の関係が良好で、しっかりと話し合いができるご家庭であれば、相続後でも十分に対応可能です。

結局どちらがいいのか?

正直に申し上げますと、「絶対に相続前がいい」「絶対に相続後がいい」とは言えません。それぞれのご家庭の状況によって、ベストな選択は異なります。

重要なのは、以下の3点を早めに確認しておくことです。

  1. 実家が売れる状態にあるか(市場性の確認)
  2. 親御さんの判断能力と家族間の関係性(法律的な問題)
  3. 税金がどのくらいかかるか(税理士への相談)

そして、取得価格の資料だけは必ず探しておいてください。これがあるかないかで、税負担が大きく変わってきます。

相続した実家を売却する流れ|名義変更から引き渡しまで

ここからは、すでに相続が発生した後に実家を売却する場合の具体的な流れを解説します。相続した実家の売却は、大きく「相続登記(名義変更)→査定・媒介契約→売買契約・引き渡し」という順番で進みます。

STEP1:相続登記(名義変更)を行う

亡くなった親御様の名義のままでは、実家を売却することはできません。まず遺言書の有無を確認し、遺言書がなければ相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が実家を相続するかを決めたうえで、法務局に相続登記を申請します。

なお、相続登記は令和6年(2024年)4月1日から義務化されており、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。売却のご予定がある方は、早めに済ませておきましょう。

相続登記には、登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)のほか、戸籍収集などの実費や司法書士報酬がかかります。費用の内訳は下記の記事で詳しく解説しています。

STEP2:査定を依頼し、不動産会社と媒介契約を結ぶ

名義変更が済んだら、不動産会社に査定を依頼します。査定額は会社によって差が出ることが多いため、複数社に依頼して比較するのがお勧めです。査定額と販売方針に納得できたら、媒介契約を結んで売却活動を開始します。

なお、早く現金化したい場合には不動産会社による「買取」という選択肢もありますが、一般的に仲介での売却より価格が低くなる傾向があります。それぞれの違いを理解したうえで選びましょう。

STEP3:売買契約・引き渡し・確定申告

買主が見つかったら売買契約を締結し、代金の決済と同時に所有権移転登記を行って引き渡します。売却によって利益(譲渡所得)が出た場合は、売却した翌年に確定申告が必要です。後ほどご紹介する特例を使う場合も、確定申告をしなければ適用されませんのでご注意ください。

相続した実家の売却でかかる税金と特例の要点

相続した実家を売却した場合も、利益が出れば譲渡所得税がかかります。ここでは、相続後の売却で特に重要な特例の要点を整理します。税額の計算や特例の適用可否は個別の事情によって変わりますので、最終的な判断は必ず税理士にご相談ください。

取得費や所有期間は親から引き継がれる

相続した不動産を売却する場合、取得費(購入価格)と所有期間は、亡くなった親御様のものをそのまま引き継ぎます。親御様が30年前に購入した実家であれば、相続直後に売却しても「長期譲渡(約20%)」の税率が適用されるということです。だからこそ、先ほどお伝えした「親御様が購入した時の売買契約書」は、相続後の売却でも非常に重要になります。

取得費加算の特例(相続税を納めた方向け)

相続税を納めた方が、相続税の申告期限の翌日から3年以内(目安として相続開始から約3年10ヶ月以内)に相続した実家を売却した場合、納めた相続税のうち一定額を取得費に加算して、譲渡所得を減らせる特例です。相続税がかかったご家庭では、この期限内に売却できるかどうかが税負担の分かれ目になりやすいと言えます。

相続空き家の3,000万円特別控除の主な要件

相続によって空き家になった実家を売却した場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円(取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる特例があります。主な要件は次のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(マンション等の区分所有建物は対象外)
  • 相続開始の直前まで、亡くなった方が一人で住んでいたこと(老人ホーム入所の場合は一定の要件あり)
  • 相続から売却まで、貸したり住んだりしていないこと
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年(2027年)12月31日までに売却すること
  • 家屋を耐震基準に適合させるか、取り壊して売却すること(令和6年以降の売却では、売却の翌年2月15日までに買主側が行う場合も対象)

なお、この特例と取得費加算の特例は併用できず、どちらか一方の選択になります。要件が細かいため、該当しそうな方は売却前に税理士へご相談ください。

実家を売却する前のチェックリスト

実家の売却をスムーズに進めるために、事前に確認しておきたいポイントをまとめます。

  • 遺言書の有無と、相続人の範囲を確認したか
  • 相続登記(名義変更)は完了しているか
  • 実家を購入した時の売買契約書など、取得費が分かる資料を探したか
  • 住宅ローンの残債や、抵当権の登記が残っていないか
  • 隣地との境界は確定しているか(測量図の有無)
  • 荷物の片付けや、仏壇・トートーメー(位牌)の取り扱いを家族で話し合ったか

荷物の片付け・処分(実家じまい)は計画的に

実家の売却で意外と時間がかかるのが、家財の片付けや思い出の品の整理です。特に沖縄では、仏壇やトートーメーを誰が引き継ぎ、どこへ移すのかという問題も絡むため、売却スケジュールから逆算して早めに着手することをお勧めします。実家じまいの進め方は、下記の記事で5つのステップに分けて解説しています。

実家の売却と相続に関するよくある質問

Q. 亡くなった親名義のまま実家を売却できますか?

A. できません。売却の前提として、必ず相続登記(相続人への名義変更)が必要です。売却を急ぐ場合でも、決済・引き渡しまでには登記を完了させる必要がありますので、売却を決めたらまず相続登記に着手しましょう。

Q. 相続した実家は、いつまでに売却するのが有利ですか?

A. 税制上は「相続開始から約3年10ヶ月以内」(取得費加算の特例の期限)が一つの目安です。相続空き家の3,000万円特別控除を使う場合は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限があります。また、空き家の期間が長引くほど建物が傷み、売却価格にも影響しますので、売る・売らないの方針だけでも早めに決めておくことが大切です。

Q. 兄弟で相続した実家を売るには、全員の同意が必要ですか?

A. 共有名義で相続登記をした場合、売却には共有者全員の同意が必要です。売却代金を分けることを前提に、代表者の名義にして売却後に代金を分配する「換価分割」という方法もありますが、遺産分割協議書の書き方に注意点がありますので、事前に専門家へご相談ください。

Q. 実家が古くて売れそうにない場合はどうすればいいですか?

A. 仲介で買い手がつかない場合、不動産会社による買取や、隣地の方への売却の打診といった選択肢があります。どうしても引き取り手のない土地については、要件を満たせば相続土地国庫帰属制度(令和5年開始)により国に引き渡せる場合もあります。空き家のまま放置すると、管理責任を問われるリスクもありますので、お早めにご相談ください。

まとめ

本日は、実家の売却を相続前にすべきか相続後にすべきかについて解説いたしました。重要なポイントをまとめます。

  • 相続前・相続後のどちらがいいかは一概には言えず、個別の状況による
  • 売却可能性は早めに確認:不動産業者などに相談して市場性を把握する
  • 法律的問題が最重要:親の認知症リスクや家族間トラブルの可能性を考慮する
  • 税金は専門家に相談:税理士に相談し、特別控除などの制度を活用する
  • 取得価格の資料は今すぐ探す:紛失すると多額の税金がかかる可能性がある
  • 家族間で揉めそうなら相続前の売却を検討:親が生きているうちの方が調整しやすい

実家の売却は、タイミングを間違えると大きな損失につながる可能性があります。ご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にレスター司法書士法人にご相談ください。相続登記や不動産売却に関するご相談を承っております。

YouTubeやってます!

本記事の内容は、YouTube動画『相続後売却のメリット』でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Contact

まずは、話してみてください。

初回相談は無料です。どんな小さなことでもお気軽にお声がけください。

Quick Call

098-987-1628

Office Hours

平日 8:30 – 17:30

監修者 司法書士 日高憲一

この記事の監修者

日高 憲一(レスター司法書士法人 代表社員司法書士)

沖縄県名護市出身。那覇市壺川で開業以来、相続登記・家族信託・渉外登記・事業承継など沖縄の登記・法務案件を幅広く手がける。実務経験20年・相続案件実績2,000件。

代表挨拶・事務所案内を見る

沖縄で相続登記・相続放棄をご検討の方は 相続登記・相続手続きの費用と流れ をご覧ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次